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エピローグ
しおりを挟む――結婚式から七日後
マール村。
スリザリア伯爵領の領都である、タンドラの街の東側に位置する田舎の村である。
このスリザリア領は、国の一番北方にあり、その更に北は天を衝くようにそびえるメストタクア山脈が連なり 、さらにその北は魔族が支配する魔大陸へと繋がっている。
ただ、山脈を越える事は、翼竜すら難しく、この地が魔族に襲われた事は、国の歴史を紐解いても、一度として無かった。
また、領の東部は、大森林と呼ばれる人の手の届かない深い森となっており、魔物や動物たちの楽園となっていた。
それゆえに、風光明媚なこの地に、都会の喧騒を逃れて避暑や旅に来る者も多く、農作物の収入の他に、重要な領地の収入源となっている。
「あれ、またどこかの貴族さまかえ? 」
農作業をしていた村の男が、街道をこちらへと向かって来る、黒い馬車に気がついた。
その二頭立ての黒塗りの馬車には、御者台に並んで座る二つの人影と荷台にも一人。そして、周りには馬に乗った冒険者が四名護衛に付いているのが見える。
「おーい。村長さんに、お客さんが着たって知らせに行ってくれ。」
男は、少しだけ馬車に近いところで作業をしていた自分の子に声を掛ける。
「わかったよー父ちゃん! 」
農作業に飽き飽きしていた息子は、父親に手を振ると、喜んで村に駆け出す。
―――胸に金色の冒険者章を下げ、黒塗りの馬車に乗った冒険者が、姫様を連れて来た。
まるで、自分が聞いた昔話のような光景を、この目で見たと自慢する為に。
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