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『夏はビールとアイスクリーム?』の章
第16話
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「和泉さん、六郎さんと和泉さんて何故二人で暮らしてるんですか?」
餅子ちゃんは恋人同士だからだと思ってた。
でも六郎さんも和泉さんもこの反応なのだ。
和泉さんが打ち明ける。
「最初は二人じゃ無かったんだ」
そう。
大学生だった和泉さん。
貧乏だった彼女は古い日本家屋で家事手伝いすれば家賃無料に飛びついた。
しかし幾ら貧乏でも男性一人で住んでる家に女子大生が住みこむ訳はない。
もう一人女性が居たのだ。
六郎さんのお母さん。
玉江さん。
「あー、なるほど。
六郎さんの母上なら、その頃でも結構なお年ですね」
「うん、六郎さんもお母さんを一人にしておきたくなかったみたい」
「なんだ、老人の面倒見せようってか。
介護の押し付け。
家賃無料どころか、介護費用寄越せよって話じゃんか」
「そんなんじゃないよ。
玉江さん、凄いしっかりしてた」
それに介護どころか、家事だって和泉さんはほとんどしてない。
庭の木を斬ったり、雑草の草むしりくらい。
掃除や洗濯は玉江さんがやっちゃう。
仕上がりは和泉さんの100倍キレイ。
料理は六郎さんの担当、味も見た目もプロ並み。
だから介護でも家事でもない。
長尾家は古い日本家屋。
縁側は空いてる。
裏戸も有る。
玉江さんはだいたい開けっ放し。
和泉さんが大学から帰ってくると変な訪問販売の人が座敷迄上がり込んでる、そんな事はしょっちゅう。
その人たちを追い出すのが和泉さんの専らの仕事。
思い返して見るとあれで怒鳴るクセ着いたのかも。
怪しいオッサンを怒鳴って追い出す。
和泉さんは玉江さんに頼まれてしまったのだ。
亡くなる前だった。
この家と六郎をよろしくね。
ニッコリ笑った玉江さん。
だから和泉さんはこの家を出ていく気は無い。
少しも無い、これっぽっちも無い、一切無い、さらさら無い、まったく無いのだ。
和泉さんはアイスを取りに行く。
後でどうぞと言われたけど。
今食べたいよね。
綱乃ちゃんはまたビールを飲み干す。
既に何本開けてるのか。
餅子ちゃんは数える気にもならない。
「あの二人おかしくないか。
結婚もしない、恋人でも無い、じゃなんで一緒に住んでるんだ」
餅子ちゃんは綱乃ちゃんの言う事はもっともだと思う。
思うけど。
「うーん、多分ですけど。
お互い、男女だってことを考えないように意識して排除してるんです」
「どういうことだ」
「つまり、男と女と考えちゃうと、二人で暮らし続ける訳に行かないじゃないですか。だから家族みたいなモノとしてそれ以上考えない。考えなければ暮らしていける」
「六郎さんも大分年上ですし、和泉さんの幸せを考えたら他の男性と一緒になった方が良いなんて思ってる。和泉さんはそれに何となく気付いてるから自分から好きとは言えない。ハッキリしなければお互い一緒に暮らしていける」
「なんか難しーな。
でもあんまそういうハッキリしないのは好きじゃ無いな」
「綱乃さんの言う事も分かりますけど、
幸せなんて人それぞれですし、
結婚してる夫婦だってお互い誤魔化してたり、妥協してたりもしますよね。
恋愛なんて嘘と誤魔化しの上に成り立ってるんです」
なんだか達観したセリフの餅子ちゃん。
可愛い顔して今まで何が有ったのか。
おや、餅子ちゃんは話してるけど、綱乃ちゃんから返ってこない。
見ると綱乃ちゃんは机に突っ伏して寝てる。
そう言えば綱乃先輩。
幾ら飲んでも変わらない酒豪の様に見えて。
どこかで一定量越えると寝ちゃう人だったー。
餅子ちゃんは恋人同士だからだと思ってた。
でも六郎さんも和泉さんもこの反応なのだ。
和泉さんが打ち明ける。
「最初は二人じゃ無かったんだ」
そう。
大学生だった和泉さん。
貧乏だった彼女は古い日本家屋で家事手伝いすれば家賃無料に飛びついた。
しかし幾ら貧乏でも男性一人で住んでる家に女子大生が住みこむ訳はない。
もう一人女性が居たのだ。
六郎さんのお母さん。
玉江さん。
「あー、なるほど。
六郎さんの母上なら、その頃でも結構なお年ですね」
「うん、六郎さんもお母さんを一人にしておきたくなかったみたい」
「なんだ、老人の面倒見せようってか。
介護の押し付け。
家賃無料どころか、介護費用寄越せよって話じゃんか」
「そんなんじゃないよ。
玉江さん、凄いしっかりしてた」
それに介護どころか、家事だって和泉さんはほとんどしてない。
庭の木を斬ったり、雑草の草むしりくらい。
掃除や洗濯は玉江さんがやっちゃう。
仕上がりは和泉さんの100倍キレイ。
料理は六郎さんの担当、味も見た目もプロ並み。
だから介護でも家事でもない。
長尾家は古い日本家屋。
縁側は空いてる。
裏戸も有る。
玉江さんはだいたい開けっ放し。
和泉さんが大学から帰ってくると変な訪問販売の人が座敷迄上がり込んでる、そんな事はしょっちゅう。
その人たちを追い出すのが和泉さんの専らの仕事。
思い返して見るとあれで怒鳴るクセ着いたのかも。
怪しいオッサンを怒鳴って追い出す。
和泉さんは玉江さんに頼まれてしまったのだ。
亡くなる前だった。
この家と六郎をよろしくね。
ニッコリ笑った玉江さん。
だから和泉さんはこの家を出ていく気は無い。
少しも無い、これっぽっちも無い、一切無い、さらさら無い、まったく無いのだ。
和泉さんはアイスを取りに行く。
後でどうぞと言われたけど。
今食べたいよね。
綱乃ちゃんはまたビールを飲み干す。
既に何本開けてるのか。
餅子ちゃんは数える気にもならない。
「あの二人おかしくないか。
結婚もしない、恋人でも無い、じゃなんで一緒に住んでるんだ」
餅子ちゃんは綱乃ちゃんの言う事はもっともだと思う。
思うけど。
「うーん、多分ですけど。
お互い、男女だってことを考えないように意識して排除してるんです」
「どういうことだ」
「つまり、男と女と考えちゃうと、二人で暮らし続ける訳に行かないじゃないですか。だから家族みたいなモノとしてそれ以上考えない。考えなければ暮らしていける」
「六郎さんも大分年上ですし、和泉さんの幸せを考えたら他の男性と一緒になった方が良いなんて思ってる。和泉さんはそれに何となく気付いてるから自分から好きとは言えない。ハッキリしなければお互い一緒に暮らしていける」
「なんか難しーな。
でもあんまそういうハッキリしないのは好きじゃ無いな」
「綱乃さんの言う事も分かりますけど、
幸せなんて人それぞれですし、
結婚してる夫婦だってお互い誤魔化してたり、妥協してたりもしますよね。
恋愛なんて嘘と誤魔化しの上に成り立ってるんです」
なんだか達観したセリフの餅子ちゃん。
可愛い顔して今まで何が有ったのか。
おや、餅子ちゃんは話してるけど、綱乃ちゃんから返ってこない。
見ると綱乃ちゃんは机に突っ伏して寝てる。
そう言えば綱乃先輩。
幾ら飲んでも変わらない酒豪の様に見えて。
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