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第五章 アルク野獣の森

第232話 金環形邪蟲その3

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「おまえらー。
 許さないからな。
 来い、“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”」

蛇お面女が言う。
と地面が盛り上がる。
ショウマ達の少し先、地面にヒビが入りそこから姿を現す。
何が。
細長い虫が。
金属のような鈍い銀と錆色。


「ミミズさんっ!?」

「ミミズは足元にいるヤツだろう。見上げるサイズのはミミズとは言わないと思うぞ」
「見上げるサイズです。ミミズではないです」

「ケロ子お姉さま。さん付けは要らないですよ。ミミズは益虫と言われてるです。それは畑の中で作物が育つ為の滋養分を増やしてくれるからなんですよ。あれはどう見ても、畑に良いとは思えません」

そう見上げなければいけないサイズのデカイ魔獣。

「ト〇マーズ?
 はたまたサン〇ワーム?」

ショウマはパニック映画を思い出す。
パニックものなのにコメディ色が強い謎のシリーズだ。
サン〇ワームの方は小説。
どのくらいのサイズだったっけ。
もっとバカデカイんだったかな。
宇宙船を呑み込んだりするのだ。
目の前にいるのはそこまでデカくない。
デ〇ーン砂の惑星。

「外見はサン〇ワーム風。
 サイズはト〇マーズくらいかな」

ショウマは分からないと思ってテキトーなコトを言う。

円形の胴体が長く続き、先端部には頭部らしきモノは無い。
黒く汚れた金属風のミミズ。

人間の背丈を大きく越えるサイズ。
少なく見積もっても10メートルはあるだろう。
それでも全身は現していないのだ。
地面に隠れた部分がどれだけ有るのか。
予想もつかない。

割と従魔少女達は冷静。
昔、“巨大猛毒蟇蛙ジャイアントポイズントード”と出くわした時には慌てふためいていたのに。

みんな成長したんだな。
ショウマは我が子の成長を見守る気分。
うん、うんとうなずく。


「おまえらー、ちょっとは慌てろ。
 『鋼鉄の魔窟』でも強い子、“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”なんだぞー」


『毒の矢』

えいっとハチ美がスキルを使う。
特殊攻撃の矢。

キシャァ!シャシャシャシャァァァァー。
金属が擦れ合うような音。
矢を喰らったデカイミミズはジタバタしてる。
毒状態になったのか。

長い身体を大地に打ちつける。
地面が揺れる。
近くに有った木が折れて破片がこちらに飛んで来る。

「うわっ、迷惑。
 『頭上注意』とか『立入禁止』の看板くらい出してよね」

ショウマの頭の上に飛んでくる木の破片。
「えいっ」
ケロ子が蹴り飛ばす。


「ショウマさまを狙ったな!」

ケロ子が背中から殺気を漂わせる。
普段のケロ子じゃない。

条件を満たさないと手に入らない特殊キャラ。
モリノナカイカリノチニクルフケロコだ。
あの命名センスはいまだにときめくモノがあるよね。

“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”の頭部が割れる。
胴体の先端部が四つに割れ、唾液のような液体をまき散らす。
内部は赤黒いすりこぎ状。
呑み込まれたら、あっという間に砕かれて消化されそう。


『身体強化』


『聖槍召喚』


従魔少女達がスキルを使う。


「みみっくちゃん、『ツタ縛り』効かないかな」

だってデッカイミミズの口から液体が飛んでくる。

ヨダレだ。
ヨダレが着いた地面はシュゥーと音を立てて溶けてる。
酸が含まれているのだ。
武装していても危険である。
それにヨダレだよ。
ばっちいじゃん。

「いくらなんでもデカすぎる相手な気がしますが、とりあえずやってみますですよ」


『ツタ縛り』

みみっくちゃんの木魔法は魔獣を縛り付けて動けなくさせる効果がある。

バカデカイ魔獣にツタが巻き着くけど。
キシャシャシャシャァァァ。
“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”が音を立てて暴れる。
ツタは消えていく。


「聖槍の一撃を喰らえっ!」

ハチ子が槍を投げつける。

“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”はノーダメージじゃない。
少し傷が着き、黒い体液を身体から流してる。
体液がこぼれた地面もシューシュー音を立ててる。
血も酸なのか。

キシャァ!シャシャシャシャァァァァー。
“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”が暴れる。

石の塊が幾つも飛んでくる。
人の頭くらいは有りそうなデカイヤツ。
“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”の攻撃。

ショウマは慌てて避ける。

「せいっ」
ケロ子はキックで蹴り飛ばす。

みみっくちゃんは『丸呑み』。
いつの間にか防御にも使えるんか。

ハチ子は槍で迎撃。
ハチ美は余裕で避けてる。


けっこう恐い攻撃だ。
直径50センチくらい有りそうな石の塊。
ショウマが喰らったなら……一撃でお陀仏しそう。


「ふはははははー。
 どうだ、まいったかー」

蛇お面女は高笑い。
いや、別にキミは何もしてないじゃん。

しょうがないなー。
ここは僕がやる場面なのか。

『賢者の杖』を握りしめるショウマ。

異能の魔術師は唱える。
現在の冒険者、魔術師と呼ばれる人々には使えない魔法。
手が届かない奥義。
水属性魔法の最高峰。

 
『絶対零度』


世界から音が無くなる。

“#金環形邪蟲_メタルワーム__#”の立てる耳障りな金属音。
辺りの枝が折れる音。
地面が酸で溶ける音。
大地が割れる音。
全ての音が消える。
世界は一面の氷。


「なにっ?
 “#金環形邪蟲_メタルワーム__#”ちゃんが!」
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