上 下
155 / 289
第三章 亜人の村はサワガシイ

第155話 ベオグレイドへその3

しおりを挟む
「分かった。
 考えるから少し待って」

ショウマは亜人の村の少年ユキトに頼まれたのだ。

彼の妹イチゴちゃんと母親ナデシコさんは石化の呪いを受けてる。
神聖魔法を使ってくれないか、と。

どうしたものかな。
何も考えず、バンバン回復させちゃうのが良くない?
治せるのかどうか良く分からないけど。
そのテストにもなる。
ランク5使ってみるとか。


「そうですね、ご主人様。みみっくちゃんも気にしてはいたんです」 

ユキトの家に行って、みみっくちゃんを呼び出す。
海魔法を使わない方が良いと主張してるのはみみっくちゃんなのだ。

みみっくちゃんによるとユキトの母親は大分マズイらしい。
身体の半分以上石になってる。
もう寝た切りでほとんど動かない。
まともに話す事も出来ない。
目線や手振りでイチゴと意思疎通しているのだ。

「イチゴちゃんの方は足が動かないくらいですね。他は背中の一部が石化してますよ」
「ええっ、そんなコトに。
  ……ほっておくのはさすがにどうなんだろう。
 美少女は国の宝だよ、みたいな」

イチゴちゃんには魔法効果のある防具の作成頼んでいる。

聖者サマのお役に立てるなら。
顔を赤らめてそう言っていた童女。


「ご主人様。やっぱり小っちゃい女の子も守備範囲だったですね。ならみみっくちゃんもストライクゾーンのハズです。 みみっくちゃんへの雑な扱いが納得いかないですよ。
それとも実は寝てるお母さん狙いですか。人妻、子持ちの奥さま趣味ですか。さすがご主人様。目の付け所が違うです。病気で寝込んでる人妻をいいからワシにまかしとけばいいんじゃーとか言いながら襲うですか」

いや、そういうオフザケしてる場面じゃないと思うんだ。

「まさか、ご主人様に空気読めてない注意をされるとは。みみっくちゃんショックです。これはかつてないショックですね。人として間違ってる人にお前の方がより間違ってると言われたのですよ」

「とまあ、ジョークを交えて場を和ませるのはこれ位にしましょう」

「ご主人様が既に『治癒の滝』を使ってしまったのは初耳ですが、使ってしまった物は仕方ありません。
 でも分かってると思いますが、回復魔法バンバン使うのはダメですよ。今だって村の中ではご主人様を聖者サマ扱いで大騒ぎです。さらに話が大きくなります。
 亜人の村でのコトだからあまり広まらないと思うのは甘いです。時々商人が村に来てると言いますから、その商人づてでウワサは広まります。それにエリカ達もいます。彼女たちの前で使えばキューピーさんにも伝わりますですよ」


確かに話は分かる。
ショウマだって話が大きくなるのは好きじゃないのだ。
ショウマ教の教祖にはなりたくないのだ。

しかし。
イチゴやその母親を見殺しにするのか。
そう言われると。
うん、見殺しにする。
と平気な顔で応えられる根性は無いのである。


「ご主人様、ご主人様はいずれ村を出ます。コノハの依頼を終えたら、村を出て魔道具手に入れに行くんですよね。
 ならその最後の時にしましょう。私達がいなくなれば、だんだん話は小さくなります。商人が聞いても、本人がいなければ造り話で終わります。ユキトに口止めしておけば、後は徐々に忘れられていくでしょう」

「うーん。
 後は野となれ、山となれ みたいな。
 まぁ、僕に注目が集まらなきゃいーか」




さて翌日。
今日はベオグレイドに行くコトになっている。
帝国の街。

ハチ子とハチ美の装備強化。
薬も買わなきゃダメかな。
嗜好品も欲しいのだ。
お茶やらお菓子やら。
食料には困らないと言いつつ、村には嗜好品までは無い。

というコトはハチ子、ハチ美は連れていく。
帝国では亜人は扱いが悪いらしい。
みみっくちゃんは行かない方がいい。
背中に木の箱が生えてる。
一見でモロバレだ。
そうするとお金は僕が持たなきゃダメかな。

ケロ子も厳しいかも。
ハチ子、ハチ美は羽根さえ出さなきゃ分からない。
でもケロ子は手に水カキのような薄い膜が有る。
良く見たら誰にでも分かる。

ベオグレイドに詳しい人も一人は欲しい。
エリカ、ミチザネ、コザルの誰か。


「エリカは行くわよ」

エリカは鉄の胸当てを“双頭熊”に壊されてる。
別の鎧が自宅に有る。
それを取りに行く。
壊れた胸当ても修理に出したい。


「ミチザネも行くとしましょう」

ミチザネは商会の身分証明、貴族の案内状を持ってる。
ベオグレイドの門番も証書を見せればうるさくは言わない。

「キューピー会長のツテで大物貴族の証書を預かっています。
 普通なら細かくチェックされるところですが、
 我らは担ぎ袋くらいならフリーで入れますぞ」

あまりにも大荷物を持ってたら咎められる。
台車に箱乗せて通ろうとかしたら止められる。
しかし手提げ袋に入れて持ち歩く程度なら検査もされない。
税金も取られない。
そうミチザネは言う。

「それって僕らも一緒に通れない?」
「無理ですな。
 身分証明には似顔絵まで載ってます。
 エリカ様、ミチザネ、コザルの3人です」
  
「冒険者証は役に立たない?」
「冒険者証があれば、武器を持ち込む事が許されます。
 しかし入都市税は取られます」

迷宮都市は入都市税無料になるのに。

あそこは冒険者のため造られた街だった。
ベオグレイドは帝国の街なのだ。
帝国の領民以外は税金が取られる。

しょうがない。
素直に税金払えばいいんでしょ。
  
「世の中どうなってるの。
 税金が高くなると、経済に悪影響が有るって言うのにさ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。 しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった─── そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。 前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける! 完結まで毎日投稿!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~

月見酒
ファンタジー
 俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。  そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。  しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。 「ここはどこだよ!」  夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。  あげくにステータスを見ると魔力は皆無。  仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。 「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」  それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?  それから五年後。  どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。  魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!  見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる! 「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」 ================================  月見酒です。  正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。

付与術師の異世界ライフ

畑の神様
ファンタジー
 特殊な家に生まれ、”付与術”という特殊な能力を持つ鬼道(きどう)彰(あきら)は ある日罰として行っていた蔵の掃除の最中に変なお札を見つける。  それは手に取ると突然輝きだし、光に包まれる彰。  そして光が収まり、気がつくと彼は見知らぬ森の中に立っていた―――――― これは突然異世界に飛ばされた特殊な能力”付与術”を持つ少年が 異世界で何を思い、何をなすことができるのか?という物語である。 ※小説家になろう様の方でも投稿させていただいております。

プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜

ガトー
ファンタジー
まさに社畜! 内海達也(うつみたつや)26歳は 年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに 正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。 夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。 ほんの思いつきで 〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟 を計画するも〝旧友全員〟に断られる。 意地になり、1人寂しく山を登る達也。 しかし、彼は知らなかった。 〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。  >>> 小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。 〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。 修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...