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第三章 亜人の村はサワガシイ
第124話 襲撃のイノシシその4
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従魔師コノハは村を進んでく。
自分の生まれ育った村。
場所は良く知っている。
“妖狐”タマモからは一度身を下ろす。
ショウマさんやケロ子さんと一緒に歩く。
自分の家があるけど、通り過ぎる。
コノハの家はいま誰もいない。
帰るのは後でいい。
「……お隣の家に行きます。
小さい子とその母親がいる筈なので様子を見たいんです」
ショウマさんに説明して、お隣にある家に入って行く。
「イチゴちゃん!」
「……誰?
あれ、この声コノハねえさん!」
「そうよ、大丈夫なの?」
「うん。
……なにかあったの?」
「“暴れ猪”よ。
それもたくさん」
「だからか~。
なんかうるさいなと思った」
「ナデシコさんは?」
「……母さんは……寝てるよ」
ショウマも一緒に付いていくと、小さい女の子とコノハさんが話してた。
女の子は縫物をしてたみたい。
動物の皮を縫い合わせてる。
なんだか人形みたいな子。
チラっと家の奥も覗く。
誰か寝ている。
あれがお母さん?
大丈夫? なんだか生気が少ない気がする。
病気?
あまり人の家に立ち入っちゃマズイかな。
後ろを向くショウマ。
家の入口に向かう。
タマモが外で待ってる。
“暴れ猪”を警戒してる。
何かあったら知らせてくれるハズ。
僕も表で待ってよう。
すると男の子がやってくる。
さっきの少年?
「……ユキト?!」
「良かった。
二人とも無事だったか」
足を折ったにしては少年の到着は早い。
「イチゴ!母さん!
ここを動くなよ。
オレはこの人たちと一緒に“暴れ猪”を倒してくる」
「……村を案内します。
“暴れ猪”を倒せるんですよね」
少年はショウマとケロ子を見て言う。
真正面から見つめられて、つい目線を逸らしそうになるショウマだ。
ショウマ一行は村を廻ってる。
二手に分かれようか。
そんな意見もあったけど、ショウマもケロ子も初めて来た村だ。
イマイチ勝手が分からない。
それにケロ子がショウマと離れるのを嫌がった。
「ショウマさまを守るのがワタシの役目ですっ」
村を案内するのはコノハでもユキトでも出来る。
でも“暴れ猪”を倒すのはショウマかケロ子。
どちらかが必要だ。
“暴れ猪”は村のアチコチに突撃していた。
家が壊れてる。
畑が荒らされてる。
果樹園の木が折れている。
“暴れ猪”は目立った。
隠れようとしてない。
暴れてるのだ。
さらに村人たちも押し寄せてる。
よせばいいのに、棒で立ち向かってぶっ飛ばされてくお年寄り。
タマモが臭いで捜索する。
そんなつもりだったけど……その必要も無い。
村を移動していけば騒動に当たるのだ。
「ブモッ! ブモォオオオー」
イノシシの叫びを切り裂く気合。
「ハァッ」
ケロ子の蹴りだ。
……あれれ?
一撃で倒してない?!
“暴れ猪”は頭を蹴られてフラフラしてる。
ケロ子の追撃の拳が決まる。
腹にストレート。
どうも『身体強化』の効力がきれたっぽい。
効果時間は30分~1時間?
ショウマも働いておこう。
『凍てつく氷』
「ス、スゲェ……
“暴れ猪”を一撃で!」
「何者なんじゃ?」
「あっ、お気になさらずに。
コノハさんの知り合いです」
村人の興味をサラっと躱して次のイノシシを探す。
タマモが臭いで追いついた一頭がまた凍り付く。
“暴れ猪”が一瞬で全身凍り付いたかと思うと消えてゆく。
ユキトは攻撃魔法を見た経験が少ない。
亜人の村に魔術師はほとんどいない。
「魔術師ってこんなに凄かったんだな!
コノハ姉」
……いや……明らかにショウマさんがおかしい。
口には出さないがそう思うコノハ。
「ああ、もう。
いっぺんに全部来てくれないかな」
“暴れ猪”を探しては倒してる。
ショウマはメンドクさくなったらしい。
『旋風(つむじかぜ)』
また一頭“暴れ猪”が吹き飛び、消えていく。
『荒れる颱風』
今度は三頭まとめて。
コノハはもう訳がワカラナイ。
あれ、魔術師さんに聞いた話では……
『炎の玉』は一日に5~6回が限界。
それよりスゴイ魔法『炎の乱舞』。
イザという時しか使えないハズ。
なんだか教わった常識と違う気がする。
今ショウマさんが使ってる魔法は?
だって、魔術師さんの『炎の玉』は何度も見た。
これはそれよりどう考えても強い魔法。
「倒したー……
これで終わりかな?」
「いや、今倒したので8頭だよ。
もう2、3頭いるハズ」
「えーっ、
もうメンドクサイなぁ。
向こうから来てくれないの。
キミ、
イノシシホイホイとか持ってない?」
「なんだよ、それ?
聞いた事無いぞ」
コノハはユキトに向かってワケの分からない事を言ってる魔術師を眺める。
……うーん……
スゴイ人なんだよね。
きっと……
【次回予告】
ケロ子は夜寝る前にショウマさまの事を考える。どんな事を話したか、どんな顔をしてたか、誰とどうしてたか。ショウマさまで頭の中がいっぱいになる。多分そんなコトを言ってる。
「アクション映画の俳優みたい。それも悪役側?」
次回 『亜人の村の夜』
ショウマは口に出してしまう。
(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)
自分の生まれ育った村。
場所は良く知っている。
“妖狐”タマモからは一度身を下ろす。
ショウマさんやケロ子さんと一緒に歩く。
自分の家があるけど、通り過ぎる。
コノハの家はいま誰もいない。
帰るのは後でいい。
「……お隣の家に行きます。
小さい子とその母親がいる筈なので様子を見たいんです」
ショウマさんに説明して、お隣にある家に入って行く。
「イチゴちゃん!」
「……誰?
あれ、この声コノハねえさん!」
「そうよ、大丈夫なの?」
「うん。
……なにかあったの?」
「“暴れ猪”よ。
それもたくさん」
「だからか~。
なんかうるさいなと思った」
「ナデシコさんは?」
「……母さんは……寝てるよ」
ショウマも一緒に付いていくと、小さい女の子とコノハさんが話してた。
女の子は縫物をしてたみたい。
動物の皮を縫い合わせてる。
なんだか人形みたいな子。
チラっと家の奥も覗く。
誰か寝ている。
あれがお母さん?
大丈夫? なんだか生気が少ない気がする。
病気?
あまり人の家に立ち入っちゃマズイかな。
後ろを向くショウマ。
家の入口に向かう。
タマモが外で待ってる。
“暴れ猪”を警戒してる。
何かあったら知らせてくれるハズ。
僕も表で待ってよう。
すると男の子がやってくる。
さっきの少年?
「……ユキト?!」
「良かった。
二人とも無事だったか」
足を折ったにしては少年の到着は早い。
「イチゴ!母さん!
ここを動くなよ。
オレはこの人たちと一緒に“暴れ猪”を倒してくる」
「……村を案内します。
“暴れ猪”を倒せるんですよね」
少年はショウマとケロ子を見て言う。
真正面から見つめられて、つい目線を逸らしそうになるショウマだ。
ショウマ一行は村を廻ってる。
二手に分かれようか。
そんな意見もあったけど、ショウマもケロ子も初めて来た村だ。
イマイチ勝手が分からない。
それにケロ子がショウマと離れるのを嫌がった。
「ショウマさまを守るのがワタシの役目ですっ」
村を案内するのはコノハでもユキトでも出来る。
でも“暴れ猪”を倒すのはショウマかケロ子。
どちらかが必要だ。
“暴れ猪”は村のアチコチに突撃していた。
家が壊れてる。
畑が荒らされてる。
果樹園の木が折れている。
“暴れ猪”は目立った。
隠れようとしてない。
暴れてるのだ。
さらに村人たちも押し寄せてる。
よせばいいのに、棒で立ち向かってぶっ飛ばされてくお年寄り。
タマモが臭いで捜索する。
そんなつもりだったけど……その必要も無い。
村を移動していけば騒動に当たるのだ。
「ブモッ! ブモォオオオー」
イノシシの叫びを切り裂く気合。
「ハァッ」
ケロ子の蹴りだ。
……あれれ?
一撃で倒してない?!
“暴れ猪”は頭を蹴られてフラフラしてる。
ケロ子の追撃の拳が決まる。
腹にストレート。
どうも『身体強化』の効力がきれたっぽい。
効果時間は30分~1時間?
ショウマも働いておこう。
『凍てつく氷』
「ス、スゲェ……
“暴れ猪”を一撃で!」
「何者なんじゃ?」
「あっ、お気になさらずに。
コノハさんの知り合いです」
村人の興味をサラっと躱して次のイノシシを探す。
タマモが臭いで追いついた一頭がまた凍り付く。
“暴れ猪”が一瞬で全身凍り付いたかと思うと消えてゆく。
ユキトは攻撃魔法を見た経験が少ない。
亜人の村に魔術師はほとんどいない。
「魔術師ってこんなに凄かったんだな!
コノハ姉」
……いや……明らかにショウマさんがおかしい。
口には出さないがそう思うコノハ。
「ああ、もう。
いっぺんに全部来てくれないかな」
“暴れ猪”を探しては倒してる。
ショウマはメンドクさくなったらしい。
『旋風(つむじかぜ)』
また一頭“暴れ猪”が吹き飛び、消えていく。
『荒れる颱風』
今度は三頭まとめて。
コノハはもう訳がワカラナイ。
あれ、魔術師さんに聞いた話では……
『炎の玉』は一日に5~6回が限界。
それよりスゴイ魔法『炎の乱舞』。
イザという時しか使えないハズ。
なんだか教わった常識と違う気がする。
今ショウマさんが使ってる魔法は?
だって、魔術師さんの『炎の玉』は何度も見た。
これはそれよりどう考えても強い魔法。
「倒したー……
これで終わりかな?」
「いや、今倒したので8頭だよ。
もう2、3頭いるハズ」
「えーっ、
もうメンドクサイなぁ。
向こうから来てくれないの。
キミ、
イノシシホイホイとか持ってない?」
「なんだよ、それ?
聞いた事無いぞ」
コノハはユキトに向かってワケの分からない事を言ってる魔術師を眺める。
……うーん……
スゴイ人なんだよね。
きっと……
【次回予告】
ケロ子は夜寝る前にショウマさまの事を考える。どんな事を話したか、どんな顔をしてたか、誰とどうしてたか。ショウマさまで頭の中がいっぱいになる。多分そんなコトを言ってる。
「アクション映画の俳優みたい。それも悪役側?」
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ショウマは口に出してしまう。
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