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第一章 ハジマリの地下迷宮
第40話 カトレアの闘いその3
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「“闇梟”はまたこっちを狙ってくる。
その時マヒを喰らわせてくれ」
カトレアは従魔師コノハに視線を合わせる。
コノハは震えていた。
自分の従魔にいきなり6人の生命が懸かったのだ。
震えないヤツはいない。
カトレアだって同じ立場なら震える。
カトレアはコノハの横に寄り添ってる“妖狐”に目をやる。
“妖狐”タマモに近づく。
従魔の目を見て語り掛ける。
「いいか、タマモ。
マヒなんてのはだいたい集中が乱れてるヤツが喰らうんだ。
ウチが弓でデカブツの集中を乱す。
必ずやる。
絶対だ。
デカブツがこっちを狙って舞い降りてくる。
その時はヤツは集中してる。
狙うのはそこじゃない。
ウチの矢を喰らって慌ててる時だ」
“妖狐”はフンと鼻を鳴らして見せた。
聞いていた。
伝わっただろう。
言葉が分からなかったらコノハちゃんフォローしてくれ。
他のメンバーも聞いていた。
ベテラン剣戦士と目が合う。
こいつは満身創痍だ。
ヒビの入った大剣を捨てる。
替わりの剣を鞘から出してる。
予備を持ち歩いてやがるのだ。
斧戦士がニヤリと笑ってる。
「リーダーの言う事じゃ。
従うのが冒険者じゃな」
言いやがる。
戦いになれば勝手に動く癖に。
魔術師がため息をつく。
「チッ、オレが何を言ってもきかねーだろ」
「アンタの魔法が攻撃の要だ。
頼んだよ」
新入り剣士はしゃがんだまま震えてる。
そのまましゃがんでてくれればいい。
その方がジャマにならない。
コノハは従魔の背中をさすってる。
「タマモ、やるよ」
目が死んでない。
小さい体でタフだ。
思ってたより冒険者向きなのかもしれない。
タマモはコノハを見ている。
そういやコイツは怯えていない。
普通、動物は自分より図体の大きいヤツを怖がるだろう。
タマモは逃げずにコノハにずっと寄り添ってた。
従魔ってこういうモノなのか。
タマモがカトレアの方を向く。
カトレアに向かってうなずいてくる。
「よし、やるぞ」
パンッとカトレアは自分の両頬を打つ。
………………
“闇梟”は獲物の上空を旋回している。
その体は闇色。
暗がりの岩肌に紛れ、獲物に姿を見せない。
獲物が動き出したのが見える。
1体だけ離れて行く。
あれは自分の身体に矢を当ててきた獲物だ。
矢は刺さると簡単には抜けない。
治るのに時間がかかるだろう。
“闇梟”は不愉快だ。
逃げる気か。
他に比べて元気のいい獲物だ。
走って逃げる気か。
仲間を呼ぶ気か。
自分が滑空する速度を知らないのか。
獲物より何倍も速い。
逃がさない。
自分の体に傷を付けたお返しをしてやる。
“闇梟”は獲物に向かって急降下する。
巨体が音も立てずに滑空する。
嘴が獲物を捕らえる事を“闇梟”は疑っていない。
滑空する“闇梟”を視界に捉えたカトレアは振り返る。
強弓を構える。
落ち着け。
使うのは複数攻撃『弓の雨』でも無く、特殊攻撃『毒の矢』でも無い。
最もシンプルなスキル
『一点必中』
狙い定めた一点を必ず貫く。
それだけだ。
影が近付く。
黒い翼が大きくなる。
1秒前まで点だったモノが、巨大な影となる。
巨大な影の中にカトレアは梟の丸い目を見た。
それは闇のような黒い目だった。
黒い瞳。
その虹彩にカトレアが映る。
『一点必中』
滑空する巨大な梟。
その質量が、翼の端がカトレアにブチ当たる。
自分の体重より遥かに重い物体の衝撃にカトレアが跳ね飛ばされる。
ショウマ一行は冒険者組合を後にする。
ショウマと従魔少女のケロ子、みみっくちゃんの3人だ。
大通りを歩くショウマ。
よく考えたら、美少女二人を両脇に連れているのである。
迷宮では気にならなかったけど、街を歩くとちょっとドキドキしてくる。
これって両手に花、ってヤツなのでは。
顔がニヤケてくるショウマだ。
しかもである。
ショウマの懐には金貨が2枚と銀貨がたっくさん。
考えが正しければアバウト300万円なのだ。
「キタ! キタキタ! 300万円キター!」
「どうしよう。
こんな時にゲームもマンガも買い込めない。
探したらマンガくらい売ってない?」
しかも話によれば毎週金貨一枚くれるらしい。
金貨一枚=10000G:だいたい100万円だ。
「街に来たら魔道具探そうと思ってたんだっけ。
何があるかな?
魔法の目覚まし?
履いてたら勝手に移動してくれる魔法のクツとか無いかな」
「イヤ先にケロ子の武器かな。
魔法の武器とか持たせたい。
喋る魔剣?
もう流行りじゃないね。
炎の剣とかそーゆーの?」
声に出しては言えないけれど。
下着も買おうと思ってたんだった。
ケロ子だけじゃない。
みみっくちゃんの分もね。
ショウマは持ち慣れない大金が懐に有って舞い上がってる。
その時マヒを喰らわせてくれ」
カトレアは従魔師コノハに視線を合わせる。
コノハは震えていた。
自分の従魔にいきなり6人の生命が懸かったのだ。
震えないヤツはいない。
カトレアだって同じ立場なら震える。
カトレアはコノハの横に寄り添ってる“妖狐”に目をやる。
“妖狐”タマモに近づく。
従魔の目を見て語り掛ける。
「いいか、タマモ。
マヒなんてのはだいたい集中が乱れてるヤツが喰らうんだ。
ウチが弓でデカブツの集中を乱す。
必ずやる。
絶対だ。
デカブツがこっちを狙って舞い降りてくる。
その時はヤツは集中してる。
狙うのはそこじゃない。
ウチの矢を喰らって慌ててる時だ」
“妖狐”はフンと鼻を鳴らして見せた。
聞いていた。
伝わっただろう。
言葉が分からなかったらコノハちゃんフォローしてくれ。
他のメンバーも聞いていた。
ベテラン剣戦士と目が合う。
こいつは満身創痍だ。
ヒビの入った大剣を捨てる。
替わりの剣を鞘から出してる。
予備を持ち歩いてやがるのだ。
斧戦士がニヤリと笑ってる。
「リーダーの言う事じゃ。
従うのが冒険者じゃな」
言いやがる。
戦いになれば勝手に動く癖に。
魔術師がため息をつく。
「チッ、オレが何を言ってもきかねーだろ」
「アンタの魔法が攻撃の要だ。
頼んだよ」
新入り剣士はしゃがんだまま震えてる。
そのまましゃがんでてくれればいい。
その方がジャマにならない。
コノハは従魔の背中をさすってる。
「タマモ、やるよ」
目が死んでない。
小さい体でタフだ。
思ってたより冒険者向きなのかもしれない。
タマモはコノハを見ている。
そういやコイツは怯えていない。
普通、動物は自分より図体の大きいヤツを怖がるだろう。
タマモは逃げずにコノハにずっと寄り添ってた。
従魔ってこういうモノなのか。
タマモがカトレアの方を向く。
カトレアに向かってうなずいてくる。
「よし、やるぞ」
パンッとカトレアは自分の両頬を打つ。
………………
“闇梟”は獲物の上空を旋回している。
その体は闇色。
暗がりの岩肌に紛れ、獲物に姿を見せない。
獲物が動き出したのが見える。
1体だけ離れて行く。
あれは自分の身体に矢を当ててきた獲物だ。
矢は刺さると簡単には抜けない。
治るのに時間がかかるだろう。
“闇梟”は不愉快だ。
逃げる気か。
他に比べて元気のいい獲物だ。
走って逃げる気か。
仲間を呼ぶ気か。
自分が滑空する速度を知らないのか。
獲物より何倍も速い。
逃がさない。
自分の体に傷を付けたお返しをしてやる。
“闇梟”は獲物に向かって急降下する。
巨体が音も立てずに滑空する。
嘴が獲物を捕らえる事を“闇梟”は疑っていない。
滑空する“闇梟”を視界に捉えたカトレアは振り返る。
強弓を構える。
落ち着け。
使うのは複数攻撃『弓の雨』でも無く、特殊攻撃『毒の矢』でも無い。
最もシンプルなスキル
『一点必中』
狙い定めた一点を必ず貫く。
それだけだ。
影が近付く。
黒い翼が大きくなる。
1秒前まで点だったモノが、巨大な影となる。
巨大な影の中にカトレアは梟の丸い目を見た。
それは闇のような黒い目だった。
黒い瞳。
その虹彩にカトレアが映る。
『一点必中』
滑空する巨大な梟。
その質量が、翼の端がカトレアにブチ当たる。
自分の体重より遥かに重い物体の衝撃にカトレアが跳ね飛ばされる。
ショウマ一行は冒険者組合を後にする。
ショウマと従魔少女のケロ子、みみっくちゃんの3人だ。
大通りを歩くショウマ。
よく考えたら、美少女二人を両脇に連れているのである。
迷宮では気にならなかったけど、街を歩くとちょっとドキドキしてくる。
これって両手に花、ってヤツなのでは。
顔がニヤケてくるショウマだ。
しかもである。
ショウマの懐には金貨が2枚と銀貨がたっくさん。
考えが正しければアバウト300万円なのだ。
「キタ! キタキタ! 300万円キター!」
「どうしよう。
こんな時にゲームもマンガも買い込めない。
探したらマンガくらい売ってない?」
しかも話によれば毎週金貨一枚くれるらしい。
金貨一枚=10000G:だいたい100万円だ。
「街に来たら魔道具探そうと思ってたんだっけ。
何があるかな?
魔法の目覚まし?
履いてたら勝手に移動してくれる魔法のクツとか無いかな」
「イヤ先にケロ子の武器かな。
魔法の武器とか持たせたい。
喋る魔剣?
もう流行りじゃないね。
炎の剣とかそーゆーの?」
声に出しては言えないけれど。
下着も買おうと思ってたんだった。
ケロ子だけじゃない。
みみっくちゃんの分もね。
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