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第一章 ハジマリの地下迷宮

第33話 フシギな従魔少女その4

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ショウマ一行は迷宮の湖から街に向かっている。
一行とはショウマ、ケロ子、みみっくちゃんだ。
みみっくちゃんは木の鎧と盾を身に着け、木箱を背負ってる。
最初から木の鎧を持っていたらしい。

「軽くて便利ですよ。今では鎧と言えば鉄製か革製がほとんどですけど、製鉄技術が発達するまでは木の鎧が中心でした。原始的なものだと大きな木からくり貫いて創っていたみたいですけど、みみっくちゃんのは木片を紐でつなぎ合わせてますから比較的近代的と言えるんじゃないですか。でも色が塗ってないから味気ないです。本来、漆とかを塗って耐久力上げる物だから未完成品といった風情です。みみっくちゃんが少女だからでしょうか?
 あと木と木の間にすき間が意外と有りますですね。下に布の服を着てるからいいですけど、これ素肌だったらえっちです。この服装って実はご主人様の願望が反映されてるんじゃないでしょうか。みみっくちゃん“宝箱モドキ”から美少女になったワケで、美少女と言っても好みがいろいろあるじゃないですか。ご主人様の好みに合わなかったらそれは美少女じゃないワケで、つまり何が言いたいかというとですね。外見の価値なんて主観的なものだから、美しさは千差万別なんです。だからご主人様の好みがみみっくちゃんの外見に多少なりとも反映されてる可能性が有りますよね。反映されてないとご主人様にとっての美少女じゃない訳です。
 そして外見と言うのは顔立ちだけじゃなくて、体形、スタイル、歯並び、髪型まで含まれて外見な訳で服装だって例外じゃないですよね。そうするとつまり服装もご主人様の好みが多少なりとも影響していると考えるのはあり得ない可能性じゃないです。
 つまるところご主人様は鎧を少し下が透けて見える物にしてチラチラ見えるみみっくちゃんの身体を覗き見したいなと思っていた筈です……

「要するにご主人様はえっちです」
「結論だけ目立つように言わない」

「ショウマさまっ。
 ケロ子、この手甲をキレイにしたいですっ」

ケロ子が昨日迷宮で拾った防具だ。

「気に入ったの?
 防具屋で直してくれるかな。
 鍛冶屋を探すべき?」

「洗ってちょっとは汚れ落ちたんですっ。
 でもキズに入ってる汚れは消えないんですっ」

確かに金属製の手甲はところどころに傷や凹みが有る。

「まだ、武器屋に入った事無いね。
 鍛冶屋も有ると思うけど大通りでは見なかったな」



「キィ キュイ キィ」

コウモリの声が聞こえる。
ショウマが見上げると頭上にコウモリが群れている。
まだだいぶ上空だ。

「あれは“吸血蝙蝠”ですね。強敵ではありませんが、空を飛んでるので近接戦闘武器しか持ってないと厄介な魔獣です」
「うーん、真上に向かって『炎の玉』撃つのはイヤだな。
 天井が崩れて来そう。
 迷宮崩壊事故?」

「そうか。
 コオモリを仲間にする?
 コオモリ少女、
 バットガール?」

「ヒーローでバットガールっているんだっけ?
 バットマンは有名だけど」

ショウマは知らないが、バットガールは居る。
バットマンに比べれば知名度は遥かに落ちるが、日本でもコミックは出版されている。


「ハァッ」

「え?」
「ケロ子お姉さま?!」

ショウマが考えてる間にケロ子は跳んでいた。

ショウマの身長を遥かに超える高さを一気に上昇する。
少女はそのまま“吸血蝙蝠”を殴りつけ、天井の岩に手で着地。
衝撃を受け止め下へ飛ぶ少女。
落下しながらもコウモリにカカトから蹴りを入れる。
従魔少女は唖然としているショウマとみみっくちゃんの横に着地した。


「ケロ子やりましたっ」

「お姉さま、凄いです」
「大ジャンプ、パンチ、
 からのカカト落とし?
 それってなんて格ゲー?」

『蝙蝠の牙』と小銭がショウマのポケットに現れる。
トドメを刺しきったらしい。

「キタ! キタキタ! ケロ子の覚醒キィタァー」

「スゴイじゃん!
 ケロ子。
 闇の波動に目覚めたケロ子?」


朝ステータスをチェックしたらケロ子はLV7になっていた。

名前:ケロ子
種族:亜人/従魔

冒険者LV7

攻撃力:95
魔法攻撃力:21
防御力:104
魔法防御力:69
行動速度:69

体力:206
魔力:116


数値が跳ね上がっていた。
昨日の戦闘経験も影響しているだろう。
まさに覚醒したケロ子だ。


「ケロ子。
 さっきの攻撃、チアコスでやってたら本当に恰好良かったと思うんだ」
「ダメですっ。
 あの服はお洗濯して乾かしてるとこなんです。
 それに……街に着て行くには露出多いですっ」

「やっぱりご主人様はえっちです」

まぁ確かに街ではミニスカートの女性は見かけない。
ショウマは分かっていないが、酒場に行けば露出の高い女性は結構いる。
男性冒険者に対する客寄せサービスというモノである。


「もう秋だからね。
 ミニスカートの季節じゃないのか。
 まぁとにかくカワイイ服は他にも買おうよ。
 みみっくちゃんもね」

「それは……欲しいですっ。
 けど、荷物になっちゃいますっ。
 先に冒険者組合に行った方が良くないですかっ」
「そうだね。
 階級アップがどうなったかも知りたいし。
 あれもしかして、
 階級クラス:ドッグになれたら割引率上がる?」

「荷物?
 みみっくちゃん持ちましょうか?」

うん?

ケロ子は担ぎ袋を背負っている。
中身は今まで手に入れた『カエルの死体』やら『蝙蝠の牙』、水筒、非常用食料などいっぱい。

んがっとみみっくちゃんは口の中に担ぎ袋を入れて見せた。
もちろん袋は少女の口より大きい。
というか少女の顔よりも大きい。
が、どういう仕組みか、みみっくちゃんの口の中に入っていった。

「大丈夫?
 消化したりしない?」
「大丈夫だとは思いますよ。ただみみっくちゃんもこの体になったばかりなので、慣れてないですし。保証はしかねると言いますか、よくわからないですね」

「ちょっと口開けて見せて」

ショウマはみみっくちゃんの口の中を見るが、口の中に今飲み込んだ荷物は見え無い。
お口の中は普通の人間の口だ。
歯が並んでいて舌が有る。
奥は咽喉へとつながっている。

「多分みみっくちゃんの感覚なんですけど、お腹の中に入ってると言うより、この背中の木箱に行ってる気がします」

みみっくちゃんはお腹を触って見せる。
それから背中の木箱を指す。
少女が何故か担いでる木箱だ。
近くで見ると担いでるんじゃなかった。
背中から生えてるのだ。
木の箱が。

「さっきの荷物ちゃんと取り出せるよね」
「はい。見ますか」

んがっと口を開けるみみっくちゃん。
口の中から先ほど飲み込んだ担ぎ袋が出てくる。

うん。
便利だ。
良いとしよう。

とりあえず納得するショウマである。




【次回予告】
毒物とは生命活動に芳しくない影響を与える物質の総称である。そういう性質は毒性とよばれ、またそういう性質があるものは有毒と表現される。
【クエスト発生:『毒消し』を手に入れろ】
「毎週100万円、なにそれ。
 ボロ儲け? 夢の年収一千万?」
次回、『キキョウ主任』
ショウマは黄金の夢をみる。

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください)
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