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第一章 ハジマリの地下迷宮
第29話 屍食鬼の罠その6
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「これまずくない?
孤独な少年、アパートで不審死?
火元は『炎の玉』みたいな?」
ショウマは現在閉じ込められているのだ。
“屍食鬼”の隠れ家、周囲は火が燃え盛っている。
『氷撃』
ダメか。
氷魔法を使ってみるが辺りの火の強さに敵わない。
それでもショウマの近くだけ少し火が弱くなる。
『切り裂く風』
「うわー!
火が強くなるー。
酸素を送り込んでるからだね。
って、小学生の理科の実験じゃないんだよ」
もしかしてマズイ。
もしかしなくてもマズイ。
『氷撃』
ショウマは自分の周辺を少しでも冷やそうとする。
『賢者の杖』があれば水属性の魔法がいくらでも使えた。
今心に浮かぶのは『氷撃』だけだ。
不安が押し寄せる。
ケロ子は何処にいるんだろう。
自分もマズイけど彼女は大丈夫なのか。
彼女は何処に居るんだろう?
自分は何処に立っているんだろう。
その時ショウマの耳に声が飛び込んでくる。
聞き慣れた声だ。
「ショウマさまっショウマさまっショウマさまっ」
「ケロ子! ケロ子! ケロ子!
何処にいるの?」
「ここですっ、ショウマさま!
ケロ子はここですっ」
声は近い。
が姿は見えない。
声は壁のほうから聞こえている。
どうやら壁を隔てた先にケロ子がいるのだ。
『氷撃』
壁に魔法をぶつけてみる。
壁が少し崩れるが、まだ先は見えない。
『氷撃』
さらに壁に魔法を撃つ。
壁の薄くなったところに少し穴が開いている!
「ショウマさまっ」
そこからケロ子の声が聞こえる。
「今、行きますっ!
待っててくださいっ」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子は走っている。
暗い迷宮を全力疾走。
アンデッドも襲ってくる。
暗い通路からイキナリ骸骨が姿を現すのだ。
フツーの少女なら悲鳴を上げて逃げ出すトコロ。
しかし従魔の少女は恐れない。
身体ごとブツかって一瞬でアンデッドを葬り去る。
彼女が恐れるのはアンデッドでは無い。
このまま探し求める主に出会えない事なのである。
音が聞こえたのはこの近くだと思う。
だけど何も無い。
石壁と通路だけが続いている。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
その時かすかに聞こえた。
『氷撃』
ショウマさまの声だ!
間違いない!
「ショウマさまっショウマさまっショウマさまっ」
「ケロ子! ケロ子! ケロ子!
何処にいるの?」
「ここですっ、ショウマさま!
ケロ子はここですっ」
ついに聞こえた。
ショウマさまの声っ。
今すぐそのお姿を見たいのに見えないっ。
『氷撃』
かすかに聞こえる声。
ケロ子の少し先、通路の壁が揺れる。
ショウマさまどこ?
『氷撃』
又壁が揺れる。
壁に小さな穴が開いている。
穴から懐かしい音が聞こえる。
炎の燃える音。
そして知っているニオイ。
ふところに宝物のように大事にしまっている杖。
その杖についているニオイと同じニオイ。
「ショウマさまっ」
「今、行きますっ!
待っててくださいっ」
ケロ子は少し後ろに下がる。
壁を睨みつける
今まで何度も練習して来ている。
ガイコツを一撃で倒してきている。
こんな壁が破れないハズが無い。
ケロ子は金属製の手甲を付けた腕を前に押し出す。
頭部を庇う前傾姿勢。
全身の筋肉に力を込める。
『体当たり』
壁が。
迷宮の石壁が破壊される。
通路と室内が繋がる。
室内では火が燃えている。
だけど従魔の少女は気にしない。
飛び込む。
飛び込んで主の胸に抱き着くのだ。
「ショウマさまっショウマさまっ!」
周辺は炎が燃え盛っている。
氷魔法の影響で火の弱い場所がある。
火の弱い場所を選んで従魔師の少年と従魔の少女は抱き合う。
「ケロ子! ケロ子!
駄目だよ。
火傷するよ。
衣装が燃えちゃうよ」
ショウマは注意するけど声は怒っていない。
むしろ優しい、包み込むような、甘やかすような声。
探し求めていた主の声がケロ子を包むのだ。
その頃冒険者組合では……
「アヤメー、大変だったんだよー」
「はいはい、ご苦労様です」
「もっとちゃんと聞いてくれよ。
ウチ新人の面倒みるなんて向いてないのに」
「もう聞きましたって」
「キョウゲツとガンテツがウチに押し付けるんだー」
「もう3回目です」
アヤメがカトレアのグチに付き合わされていたのだった。
こうして冒険者たちの夜は更けていく。
拙作を読んでくださった方
ありがとうございます。
ここで一区切りです。
次回から新展開。
新たな従魔少女も加わって、さらに面白く
なる……のか‥‥…?
ご意見ご感想など下されば、作者が嬉しさに震え上がります。
文句やリクエストも受け付けます。
☆評価も是非。
お待ちしてます。
では次回予告です。
【次回予告】
「ご主人様ですね。よろしくお願いします。昨日は挨拶もしないでゴメンナサイでした。あの時は実は混乱していまして、脳に負荷がかかったと言いますか、あまりの衝撃を受けたと言いますか、で身動き取れなくなっちゃったんです。誰でもビックリしますよね?四角かった自分の体が丸や長方形、楕円色んな形を集合させた複雑な形状の物体になってるんです。驚きです。レゾンテートル崩壊です……」
次回、『フシギな従魔少女』
新たな従魔の少女がまたひとり……
(ボイスイメージ:屋良有作(最後の部分のみ)でお読みください)
孤独な少年、アパートで不審死?
火元は『炎の玉』みたいな?」
ショウマは現在閉じ込められているのだ。
“屍食鬼”の隠れ家、周囲は火が燃え盛っている。
『氷撃』
ダメか。
氷魔法を使ってみるが辺りの火の強さに敵わない。
それでもショウマの近くだけ少し火が弱くなる。
『切り裂く風』
「うわー!
火が強くなるー。
酸素を送り込んでるからだね。
って、小学生の理科の実験じゃないんだよ」
もしかしてマズイ。
もしかしなくてもマズイ。
『氷撃』
ショウマは自分の周辺を少しでも冷やそうとする。
『賢者の杖』があれば水属性の魔法がいくらでも使えた。
今心に浮かぶのは『氷撃』だけだ。
不安が押し寄せる。
ケロ子は何処にいるんだろう。
自分もマズイけど彼女は大丈夫なのか。
彼女は何処に居るんだろう?
自分は何処に立っているんだろう。
その時ショウマの耳に声が飛び込んでくる。
聞き慣れた声だ。
「ショウマさまっショウマさまっショウマさまっ」
「ケロ子! ケロ子! ケロ子!
何処にいるの?」
「ここですっ、ショウマさま!
ケロ子はここですっ」
声は近い。
が姿は見えない。
声は壁のほうから聞こえている。
どうやら壁を隔てた先にケロ子がいるのだ。
『氷撃』
壁に魔法をぶつけてみる。
壁が少し崩れるが、まだ先は見えない。
『氷撃』
さらに壁に魔法を撃つ。
壁の薄くなったところに少し穴が開いている!
「ショウマさまっ」
そこからケロ子の声が聞こえる。
「今、行きますっ!
待っててくださいっ」
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
ケロ子は走っている。
暗い迷宮を全力疾走。
アンデッドも襲ってくる。
暗い通路からイキナリ骸骨が姿を現すのだ。
フツーの少女なら悲鳴を上げて逃げ出すトコロ。
しかし従魔の少女は恐れない。
身体ごとブツかって一瞬でアンデッドを葬り去る。
彼女が恐れるのはアンデッドでは無い。
このまま探し求める主に出会えない事なのである。
音が聞こえたのはこの近くだと思う。
だけど何も無い。
石壁と通路だけが続いている。
「ショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさまショウマさま」
その時かすかに聞こえた。
『氷撃』
ショウマさまの声だ!
間違いない!
「ショウマさまっショウマさまっショウマさまっ」
「ケロ子! ケロ子! ケロ子!
何処にいるの?」
「ここですっ、ショウマさま!
ケロ子はここですっ」
ついに聞こえた。
ショウマさまの声っ。
今すぐそのお姿を見たいのに見えないっ。
『氷撃』
かすかに聞こえる声。
ケロ子の少し先、通路の壁が揺れる。
ショウマさまどこ?
『氷撃』
又壁が揺れる。
壁に小さな穴が開いている。
穴から懐かしい音が聞こえる。
炎の燃える音。
そして知っているニオイ。
ふところに宝物のように大事にしまっている杖。
その杖についているニオイと同じニオイ。
「ショウマさまっ」
「今、行きますっ!
待っててくださいっ」
ケロ子は少し後ろに下がる。
壁を睨みつける
今まで何度も練習して来ている。
ガイコツを一撃で倒してきている。
こんな壁が破れないハズが無い。
ケロ子は金属製の手甲を付けた腕を前に押し出す。
頭部を庇う前傾姿勢。
全身の筋肉に力を込める。
『体当たり』
壁が。
迷宮の石壁が破壊される。
通路と室内が繋がる。
室内では火が燃えている。
だけど従魔の少女は気にしない。
飛び込む。
飛び込んで主の胸に抱き着くのだ。
「ショウマさまっショウマさまっ!」
周辺は炎が燃え盛っている。
氷魔法の影響で火の弱い場所がある。
火の弱い場所を選んで従魔師の少年と従魔の少女は抱き合う。
「ケロ子! ケロ子!
駄目だよ。
火傷するよ。
衣装が燃えちゃうよ」
ショウマは注意するけど声は怒っていない。
むしろ優しい、包み込むような、甘やかすような声。
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その頃冒険者組合では……
「アヤメー、大変だったんだよー」
「はいはい、ご苦労様です」
「もっとちゃんと聞いてくれよ。
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「もう聞きましたって」
「キョウゲツとガンテツがウチに押し付けるんだー」
「もう3回目です」
アヤメがカトレアのグチに付き合わされていたのだった。
こうして冒険者たちの夜は更けていく。
拙作を読んでくださった方
ありがとうございます。
ここで一区切りです。
次回から新展開。
新たな従魔少女も加わって、さらに面白く
なる……のか‥‥…?
ご意見ご感想など下されば、作者が嬉しさに震え上がります。
文句やリクエストも受け付けます。
☆評価も是非。
お待ちしてます。
では次回予告です。
【次回予告】
「ご主人様ですね。よろしくお願いします。昨日は挨拶もしないでゴメンナサイでした。あの時は実は混乱していまして、脳に負荷がかかったと言いますか、あまりの衝撃を受けたと言いますか、で身動き取れなくなっちゃったんです。誰でもビックリしますよね?四角かった自分の体が丸や長方形、楕円色んな形を集合させた複雑な形状の物体になってるんです。驚きです。レゾンテートル崩壊です……」
次回、『フシギな従魔少女』
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