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第一章 ハジマリの地下迷宮

第6話 地下迷宮に入るその1

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冒険者組合の登録は呆気なかった。
ショウマが読み書き出来ると申告すると用紙を渡された。
書くのは名前と年齢、出身地、特技程度だ。
それで冒険者証を渡されてしまった。

胸に止める名札みたいなシロモノだ。

『冒険者証
   階級:ラビット
   名前:ショウマ
   発行:冒険者組合』

これしか書いてない。
ステータスが記されてるとか期待してたのがバカみたいである。

「魔力を調べます……
 こっこれはー!?」
みたいなのも無い。
仮に有って注目されるのもお断りなのだが。

そのまま迷宮に向かうショウマ。
場所の検討はついている。
馬車で来る途中に見えていた。
街のはずれに大きな遺跡が有って、入口に人が集まっていたのだ。



「アヤメ、先刻の新人の子どうしたかしら?」
「キキョウ主任。それがいないんです。
 加入したら最初に主任から初心者説明が有るって伝えようとしたら、もういなくなっていて」

「初めてこの街にくる子でしょう?」
「はい。16歳、今日成人したばかりみたいです」

未成人のうちにチームの見習いとしてダンジョンに入る者もいる。
もちろん1人前の冒険者が認めて、彼らが見習いをフォローする場合のみだ。

「どこかのチームの見習いかしら?」
「そんなカンジじゃなかったですけど」

「確かに冒険者になろうというにはずいぶん体格が貧相だったわ。
 ホントに成人だったの?」
「『真実の水晶』には何の反応も有りませんでした」

普通見習いなら荷物持ちからスタートなのだ。
体力がなければやっていけない。

「まさか一人でダンジョンに入ったんじゃ?」
「そんな度胸ありそうに見えませんでしたよ。ずっとうつむいてて」

アヤメもキキョウも少し気になった。
が、すぐ忘れてしまった。
冒険者組合の受付は忙しいのである。
新人一人にかまけてはいられない。



ショウマは地下迷宮にすでに入っていた。
入り口には見張りらしい人間がいたが、ショウマが冒険者証を着けているのを見ると黙って行かせてくれた。

「うーん。受付で年齢や身元の確認も無かった。
 こんなことなら、成人する前から入れたんじゃない」

自己申告を成人年齢にするだけだ。
ショウマは損した気分になっていた。

ショウマは気づいていないが、冒険者登録する者は『真実の水晶』でチェックされている。
申告にウソが有れば水晶が反応する。
ウソの有る者は犯罪歴の有無、現在までの職歴まで慎重に調査されることになる。

ダンジョンに入ると、付近は無骨なレンガ造りの壁が続いていた。
最初は広間があり、すぐ3方に分かれる道が続いている。
広間にはこれからダンジョンに潜るのであろう、装備を確認しているチームや打ち合わせをしているチームがいる。

「チッ 毒消しがもう無いぜ」
「商店で相場の10倍まで跳ね上がってる。とても買えないよ」
「クソッ 3倍値段のうちに買っとくべきだった」
「今日も地下2階はいけないんじゃないか。どうする?」
「右に行って、コツコツ稼ぐしかないか」



ショウマは一切迷わなかった。
だって書いてある。

「ショウマくんへ こっちだよ→」
蛍光ピンクでデカデカと地面に書いてあるのだ。
ご丁寧に矢印まで書いてある。

周囲の冒険者たちを窺がうが、誰も字を気にした様子が無い。

ミカエルはなんて言ってたっけ。
「ダンジョンに到着したら隠し部屋には辿り着けるようにしとくよ」 
うん。
確かに辿り着ける。

ショウマは真ん中の道を進んでいった。


ショウマは『明かり』を使う。
広場から道に入るとそこは暗い迷宮だった。
そういえば、広場はカンテラやロウソクで照らしてあった。
暗がりに光の玉が浮かんで、ショウマの上を着いていく。

「暗いな」
ショウマはもう一つ『明かり』を使う。
光の玉が二つになった。
地面は先ほどまでレンガ作りだったのがただの岩肌になっている。

「滑りそうだよ」
ショウマは恐ろしい事にサンダルしか履いていない。

「おい、今のヤツ。真ん中の道を一人で進んでいかなかったか?」
「真ん中? あそこは地下2階への近道だが強敵の多い場所だ」
「一人で行くのはよほどの腕じゃないとムリだぜ」
「イヤ、そんな強そうなヤツじゃなかった」
「チームの後衛じゃねーの」
「それに 今は……」
「あの……バケモノが……」

うーん
冒険者は考える。
さっきのヤツ
布の服にサンダルで、剣すら持ってなかった気がする……
イヤ、さすがにあり得ない
冒険者は自分の記憶を打ち消す。
見間違いだろう。
目立たない武装をしていたのだ。
だって地下迷宮に武装せずに行くやつがいるハズが無い。
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