医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘～い愛の物語

102話 大学・7（新・莉子を守る会の会議・夏輝サイド）２

裕司君、そろそろ時間だから行こうよと詩音ちゃんに誘われた。
「いったいどういうことになるのかねえ～。私は不安だよ」と詩音ちゃんが言うと、裕司君も「本当だよ。送迎メンバーが出来たのはうれしいんだけど、いつも莉子兄が来られるわけじゃないから、不安だよねえ」

部室に行くと、もう皆も集まっていた。
浅田君が「二人ともよく来てくれたね」と言った。えへへへ。
「特に詩音ちゃんはずっと莉子と仲良しみたいだけど、莉子の病気のことも全部聞いていたの？」

詩音「う～ん、大体は聞いていたよ。でも莉子が倒れると、私も心配でパニックになっちゃうんだよね。特にこの前の救急車騒ぎの時は、莉子が死んじゃうんじゃないかと思って、私もわーわー泣いちゃったしさ......。莉子があまりにも苦しそうだから、いつもどうしていいかわからなくて本当につらいよ。」

うん、そうだよね。そのためにもお兄さんが教えてくれたことを一緒に共有しようと思うんだ。
詩音ちゃんも裕司君もよく聞いてね。「はーい！」

これ以降は浅田 夏輝君がリードを取ってみんなに説明してくれた。

じゃあ、始めます。みんな集まってくれて本当にありがとう。

<莉子を守る会>送迎メンバー
１・浅田 夏輝　２・友井　涼介　３・坂間　翔　　４・羽田　陽人　5・三輪　暖
特別参加（送迎は除外）１・沢田 詩音　２・木下 裕司

まず送迎メンバーは僕を入れて、５人。
送迎なしの特別参加が詩音ちゃんと裕司君です。この二人は今までに２回莉子が倒れた時、サポートしてくれています。
まず、莉子は持病が二つあります。
１つは喘息です。これは普段は吸入薬などで良い状態をコントロールしているそうですが、体調が悪くなったり、悪条件が重なると発作を起こして、呼吸困難になるそうです。この前の救急車を呼んだ時ですね。莉子は一刻を争う危険な状態でした。

ちなみに今回の救急車を呼んだ経緯をお話しします。
１・詩音ちゃんが一番にお兄さんに連絡。あとはお兄さんから直接、救急車の要請と救命救急への連絡。
　　（お兄さん自身も救命スタッフと一緒に治療に加わったそうです）

２．次に、お兄さんからの指示で、すぐ医務室に連絡、酸素ボンベを至急持ってきてもらって、莉子に吸入させました。呼吸困難になっていたので危険な状態でした。

３・事務局へもすぐ連絡して、莉子が倒れたこと、呼吸困難になっていること、酸素を持ってきてもらったこと、今から救急車が来ることなどを伝えてました。
それから授業中だったので、その時の先生に事情を話し、救急車の誘導や莉子の世話をするのに数名が授業を離れることを許可してもらいました。自分たちの出席が欠席になっても困りますからね。

４・今回、すごく良かったなと思うことは、みんなが正門から現場まで手分けして、救急車を誘導させてくれたことです。俺はこの時の皆さんを本当に誇りに思いました。皆最高です！　ふふふ、みんな照れ笑い。みんな本当にありがとう！！お兄さんも莉子もすごく感謝しているそうです。ここで思わずみんなで拍手しました。

５・救急車が来て、酸素をぎりぎりまで吸わせたら、あとは救急車に酸素の用意があるので、隊員の指示に従って下さい。あと救急車には医務室の人に一緒に乗って行ってもらいました。この時は莉子の荷物も一緒に手渡してください。で、ボンベは医務室に返してください。　この前の状況は以上です。

２つ目の持病は子宮内膜症です。
今までは多分、全員、生理痛が酷いんだと思っていたと思うのですが、莉子の場合はただの生理痛ではなく、子宮内膜症という病気の激痛で苦しんでいるのだそうです。
この病気については、ネットで調べておいて欲しいのですが......、実は僕も調べました。

本来は子宮の中で内膜が増えて、定期的にはがれ落ちて流れて出るのが生理の出血になります。
莉子の場合は、この内膜が子宮だけではなく、子宮以外の腹膜や子宮の外回りや大腸や、わき腹、胃のあたりなどに内膜が飛んでしまい、出口のない場所で生理の度にどんどん増え続けて癒着を作っていっている状態だそうです。

しかもこれらが生理になると、同時に全部が痛むのだそうです。普通の生理痛だと、下腹だけとか腰痛などに限定されることが多いのですが、莉子の場合だと、全部が一度に痛むということで、それだけでも苦しんでしまいます。
しかも年数が重なるほどひどくなっていくんだけど、痛み止めの飲み薬はあまり効かないそうです。

お兄さんによると、すぐ鎮痛剤を注射しないと駄目だということでした。また、激しい痛みのために食事が出来ず、トイレにも行けなくなるということでした。それで、すぐ点滴を開始するそうで痛み止めはこの点滴の中に足して入れるそうです。

３つ目は、これも子宮内膜症が原因なのかもしれないのですが、冬休みに左の卵巣が腫れていて、摘出手術したそうです。ところが体力が弱って全然戻らないのに学校が始まってしまい、少しだけでもと思ったのが、あの救急車の日でした。だから、あの日は手術後で体力が全くない。あまり食べられていない。そこへ生理の激痛が来て、喘息の発作を誘発。で、呼吸困難になったそうです。

ネットの情報によると、これらを解決する方法は、
１・妊娠期間だけは生理が止まるから楽になる。２・子宮と卵巣をすべて摘出する。　この二つです。

ただし、みんなも想像できると思うけど、２番目は、子供は不可能。18歳で更年期がすぐ来るということです。
そうでなくても子宮内膜症の妊娠可能性は50％ほどです。しかも今は卵巣が1個しかない状態です。
これが今の莉子の現状です。

ここまで一気に話すと、みんな沈黙して下を向いている。手をもじもじさせたり、何人かが、はぁーとため息をついた。あっちこっち視線が泳ぎ、どうしたものか？と悩んでいるのがよくわかる。やっぱりショックを受けるよねえ。