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91話 二人の時間

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莉子を抱いてから一緒に眠ってしまった。目が覚めるともう夕方の6時を過ぎていた。
莉子はぐっすり眠っているようだ。ごめんね。疲れちゃったよね。退院した日にいっぱい抱いてしまい、ちょっと無理させたかなあ......。
でも莉子はこれからご飯もいっぱい食べるから!なんて言っていたな。ふっ、本当かな?
つい昨日まで、どうしてこんなに身体がダメージを受けているんだろうねえ?なんて川瀬とも話していたのに、原因が赤ちゃんだとは思わなかった。
気持ちが落ち込んでしまい、食欲がない上に気力も出なくて…ということが、身体にも悪い影響を与えていたのかもしれない。

卵巣摘出は問題なく終わっているのに、莉子が気持ちを引きずっていたんだね。やっぱりショックなんだよ。まだ18歳だ。無理もないと思う。

それにしてもこの前、莉子を抱いている時に子供が出来てもいい?と聞いたら、「欲しい」と言っていたんだよね。大学を続けることより、いま赤ちゃんを授かることの方が大事だと思ったんだろうなあ。

卵巣が1つになった危機感というのかなあ?もし作れるものなら今すぐ作りたいということだね。まあ、そういう目標を掲げて元気になってくれるなら、それだけでも俺はうれしいんだけど、いつまでたっても出来ないということの方が怖いよね。期待しすぎは怖いものがある。ここは念押しだな。

そんなことを考えながら、昼間に下ごしらえをしておいた夕食の準備が出来た。今日は莉子の好きなゴマ豆乳鍋だ。これは俺も好きなんだよね。いろんな野菜と鶏もも肉を入れた。元気を付けて欲しいよ。

莉子を起こしてこよう。肩をトントンと軽く叩いた。起きられるか?
ん? 片目だけ目を開けて俺を見た。おっ、これに弱い。可愛くてたまらないんだ。

莉子さん、そろそろ起きてください。
夕飯にしよう。食べられる? 少しだけでもいいから食べて欲しいんだけど。元気を出さないとね!
赤ちゃんを作るんでしょう? 「うん」とりあえず、そこは決定だったんだね。さあ、起きるよ。

「なんだかもっと寝たいよ~」うんうん、とりあえずトイレに行こう。起きてみて。
身体を起こしてベッドから降りて立たせてみた。ショーツ1枚だけなのでバスローブを着せた。
どう?トイレに行ける? 「うん、行ける」じゃあ、行っておいで。
そろそろとゆっくりだけど、トイレに行けたようだ。その間に莉子のパジャマを出しておく。

トイレから、「ひぇっ」という声が聞こえた。ん?なんだ? どうしたの?莉子
「ううん、なんでもないです」 はーい! パジャマを莉子のベッドの上に置いたから着てね。

そういえば、入院用に買ったかわいいピンクのネグリジェ......、あれはうちで着ても良いな。
すっごくかわいいんだもん。他の人に見せるのは勿体ない。

そのうちに莉子がパジャマを着てやってきた。莉子が俺の背中に回って腰に手を回し抱きついてきた。
どうした? 「何でもないんだけど、ナプキンありがとう。恥ずかしいから、こっちを見ないで」ふふふ、分かった。見ないけど抱きしめるのはいいの? う~ん、顔を見ないで抱きしめてね。OK!目をつぶってね。
ついでにちゅんちゅんとおでこにキスをした。 さあ、とにかくご飯を食べよう。

ゴマ豆乳鍋なんだよ。莉子、好きだろう?
鶏もも肉が入っているから、最低でも2切れは食べて欲しいよ。明日の力になるから。
それから、にんにくのサプリが買ってあるから、これを毎食飲んでね。あと病院からも薬がでているよ。

婦人科の薬もあるし、ちょっと多いかな? 頑張って飲もうね。
「はーい!」 なんだか返事がいいねえ。 じゃあ、座ってね。

莉子、子作りって長期戦だよ。何年もかかることが多いんだよ。分かっているよね?それに確率は50%だよ。
この前川瀬から言われたから覚えているだろう?

「うん、覚えている。それでもいいから。私も身体作りを頑張るよ。できるだけ大学にも行くよ。でも詩音ちゃんや裕司君にもまた迷惑を掛けちゃったから、申し訳なくてどうしようって思っているんだ。どうすればいいかなあ?」

今度元気になったら、またうちに呼んでパーティーでもすれば?あと、倒れた時の授業担当の教授や、学生さん達にもお礼のお菓子でも持って行く?なんだかみんなが協力して、救急車を誘導してくれていたって事務局からも聞いたよ。
「そうなんだねえ......悪くて行きにくいよ」

大丈夫だよ。みんなすぐに忘れるさ。お礼を言って、元気になって行けばいいんだよ。
誰にでも起きるかもしれないことだからね。その時は莉子だって協力するだろう?
いつまでもくよくよしないで笑っていてよ。その方がみんなもきっと喜ぶよ。

「うん、そうだね。そうするよ」 うん、じゃあ、いっぱい食べてね。
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