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第8章 夏祭りと桜のペンダント
1 夏祭りに行きたい
しおりを挟む「ねぇねぇ、桜 、見てよ!!」
「なんなの、涼子……」
コミュニティルームで、桜と子供達の宿題を見ていると、涼子が、手にチラシを持ってやって来る。
「ほら、夏祭りだって!!」
「そうだね……」
「行くよね??」
「行くって……海もダメだったでしょ」
「あれは、危ないからって、アイツが……」
「やめてよ!? 子供達の前よ!!」
「ごめん……」
夏休みの思い出作り、本院に、掛け合ったけど、許可をもらえなかった。
それを、院長のせいだと、言い切る。
「蒼空!! 何笑ってるの!!??」
「いえ、施設長ぉ……子供みたいですね……」
初めて会った時、あんなに格好つけてたのに、子供よりも1番子供っぽいと思うと、笑わずにはいられない。
「ねぇねぇ、皆も行きたいよね??」
「う……ん」
「でも、町の人が来るんでしょ?」
「そうよ」
「……じゃ、いい……」
曖昧な子供達の反応。紫苑が、皆の声を代弁する。
「えぇ、どうしてぇ……」
「……」
黙って、宿題を続ける子供達と残念そうそうな、施設長の涼子。
「ねぇ、紫苑。行きたくないの?」
「蒼空兄ちゃん……行きたいよ……だけど……」
「だけど、バカにされるんだ……でしょ?」
「桜さん……」
紫苑の瞳が、涙で濡れていく。
「私も、経験あるんだ……」
「……」
「親が、いない事をバカにするのよ……」
「でも、この子達の……」
「そうよ……この子達のせいでは、ないよ」
「だけど……」
「だけど……何?」
「気にするな……?」
「それは、今は、無理なのよ……」
「どうして?」
「蒼空も、経験ない? 授業参観とかで、親を探した事、ない?」
「あっ、ありますけど……」
蒼空にも、最近変化が、あった。なくした記憶。子供の頃の記憶がわずかだが、思い出していた。
いつも、学校のイベント事の時に 母親を探していたけど、姿はなかった。
「だけど、桜さんがいるじゃないですか?」
「いつも、授業参観に行ってるじゃないですか?」
「そうだけど……やっぱりお母さんに見てもらいたよね? 紫苑……」
「ウェェン……」
紫苑が大きな声で泣いた。他の子達も、泣いた。
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