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第7章 変化
4 吉沢 涼子
しおりを挟む蒼空は、いつものように、箒で玄関前をはく。
8月の朝7時といっても、少し動いただけでも、額をかく。美桜が小さなゴミを拾って、集められた木屑の山に投げ入れる。
「美桜は、えらいなぁ……ありがとう」
ニカッといつものように笑う。
遠くから車のエンジン音と、ジャリジャリと地面の砂利を踏みしめるタイヤの音が聞こえる。
黒の車は、蒼空の前に止まると運転席から、女性が降りてくる。
「おはよう」
「おっ、おはようございます」
「掃除!? 感心ね!!」
「……あのう……どちら様ですか?」
「今日から、お世話になります『吉沢』です!!」
「あぁ……桜さんの幼なじみの……!?」
「あなたが、蒼空ね!!」
「はい」
ストレートのロングヘアに控えめの赤い口紅。蒼空は、彼女を見かけた事があった。
こも前のような派手さはないが、優雅で知的な雰囲気は、かわりない。
雨が降るなか、桜が出掛けた日。入れ違いで、やって来た女性だった。
「涼子!!」
「桜!! きたよ!!」
「おやっ!? 早いね!!」
「おばさん、御無沙汰してます!! これからよろしくお願いします!!」
「こちらこそ、心強いよ!!」
施設長の涼子は、桜に案内されて施設長室に、向かう。
子供達が、何の騒ぎだろう……部屋から顔を出して覗く子供達を見て、ニコリと、微笑む。
バタン扉を閉めると、部屋から桜と涼子の笑い声が、聞こえる。
「蒼空兄ちゃんあの人、だぁれ?」
「あの人は、新しい施設長の先生だよ!」
「ふぅん……」
「蒼空っ、皆が出勤してきたら、食堂にあつめて!」
「わかりました」
8時になると、全員が出勤してくると、
子供達も食堂に集められた。
涼子と並んで、初めて見る女性が立っている。白衣を着ているから、看護師だろうけど……
「おはようございます」
「おはようございます」
「私が、施設長の吉沢 涼子ですよろしく!!」
「よろしくお願いします!!」
「こちらが、看護師の野沢さん!」
「野沢です! よろしくお願いします」
「野沢さんには、岩谷先生と診療所をお願いします」
「……」
「あのう……桜さんは?」
「桜には、施設の看護師として働いてもらいます!」
新しく体制を整えて、これから先へ進んでいく為の人事だと、涼子が皆へ伝えた。
診療所には、50代のベテラン看護師の野沢さんが、西野病院から異動してきた。
子供達に好かれている桜が、一緒にいてくれる。緊張していた、子供達の顔が 笑顔でほころぶ。
「ところで……何で、ラジオ体操してないの?」
「……??」
突然、涼子は、身をのりだし、皆を問い詰める。
「ちょっと、涼子ぉ……してないの……」
「してない!!??」
「え……してないの……」
「夏休みの朝は、ラジオ体操からよ!! 明日から始めるわよ!!」
「えぇ……」
「皆、頑張って!!」
「桜もよ!!」
「えぇ……」
肩を落とす桜の腰を美桜がポンポンと叩き、『がんばるよ!』と、小さな拳を作って、ニカリと笑う。
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