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第18話 デート中に絡まれる
しおりを挟む「で、でで、デート!? わ、私と、ユウトさんがですか……っ!?」
僕の膝から起き上がるニーナさん。それ以外の組み合わせはないと思うけど。
でもさっきまで蕩けてたところでいきなり起き上がったからなのかニーナさんはフラフラだった。
「でも、その、あの、私なんかと、一緒に歩いてたら、ユウトさんが変な目で見られたり……」
「大丈夫ですよ。恋人なんだから普通ですって」
「っ! こ、こいび……っ!? えへ、えへへ」
えへえへ言い出した。
幸せそうに緩んだ顔がはにかむ。
だけどニーナさんはハッと我に返ったようで尚も反対してくる。
「お、お気持ちは嬉しいんですが……私と一緒だと、ご、ご迷惑かかるんじゃ……」
手強いな……
というよりそうも卑下されると僕としても微妙な感じだ。
これはこれで可愛いんだけどね。せっかく誘ってるんだから……
僕はニーナさんに手招きをした。
頭にハテナを浮かべる彼女を膝に座らせて後ろから抱き締めた。
瞬間、めっちゃ強張るニーナさん。
「え? あの、え?」
困惑するニーナさんに向けて僕は耳元で囁いた。
「デート、行きたくないんですか?」
「ぅあ……っ!?」
ニーナさんの鈴を鳴らしたような可愛らしい声が素っ頓狂な喘ぎ声を発する。
これは僕の推測なんだけどさ。
たぶん彼女は今までほとんど人と接してこなかったんだと思う。
その環境故なのか他の人間との触れ合いに全く慣れていない。
免疫0だと言っていい。耐性がなくてどう抗ったらいいのかを全く分かっていない。
だからなんだと思う。
「デート行きましょ? ね? 怖いなら街中じゃなくてもいいですから」
この人、文字通り頭のてっぺんまで敏感過ぎる超敏感体質だ。
その証拠に耳に息が軽くかかるだけで僅かではあるけど仰け反りだしてる。
我慢してるみたいだけど腰もくねってる。分かり易く悶えるニーナさん。
「はうあぁっ!?」
耳元で囁くだけで僕の腕の中でビクンビクンと震えている。
無防備に反らした顎の下にも手を当てて膝枕の時と同じように軽く擦った。
「ふあぁぁ……しょこっ! き、気持ち良すぎへ……」
「デートしてくれます?」
「し、しま、しゅ……しましゅかりゃ、もっと……」
よし、堕ちた。
でもデートとはいえ街の中をぶらつくことがどれだけ彼女にとって酷なことなのかを理解してない訳じゃない。
魔物のほとんどでないイムの森で散歩でもしないかというお誘いだ。
というかニーナさん本当にチョロイな。同人誌とかに出てきそう。
悪いことを考える人にこの体質を利用されないか心配だ。主に僕だろうけど。
◇
仮面を装着したニーナさん。
銀色の髪の毛が風でふわりと揺れ動いた。これは石鹸の匂いか。
昨日は同じ石鹸使ったはずなのになんでニーナさんの匂いだとこんなにいい香りになるんだろう?
ううむ、不思議。
「さ、行きましょうか」
手を差し出した。
まだ外が怖いのか少し震えているニーナさん。
その手をやや強引に握りしめた。
「大丈夫ですよ。僕もいますから」
「は、はいっ」
しばらく街中を進んでいく。
軽くニーナさんに解説を挟んでもらいながらだ。この街は僕にとって目新しいものが多かった。
次第にニーナさんの緊張も解れてきている。
うんうん、いい傾向だ。
けど、ここからだな。人の多い大通りを通ることになる。
イムの森に出る門はここを通らないといけない。ニーナさんを少しでも安心させるためにその手を強く握った。
ただ人混みはニーナさんを見つけただけで勝手にモーゼの如く割れていく。
それを見てしゅん……とするニーナさんだった。うーん、あとでケアしてあげないとな。元々誘ったの僕なんだし。
と、その時だった。
「……っ!?」
ニーナさんが躓き倒れそうになる。
咄嗟に腕で支える。
「ひゃっ!」
びくりとニーナさんの体が強張った。
女の子の甘い匂いが漂ってくる。
ニーナさんは慌てて僕から離れて謝ってきた。
それを見て不機嫌そうにする男。
「待ってください」
舌打ちをしてそのまま立ち去ろうとする男を呼び留めた。
「今足引っ掛けましたよね?」
そう、今のは明らかに人為的なものだった。
避けていく人たちの多い中で一人だけ近くを通ろうとしているから気になった。
「ゆ、ユウトさん、大丈夫ですっ、私ならなんともないですから!」
ニーナさんは大丈夫だと言ってこの場を収めようとしている。
僕としてもニーナさんに迷惑がかかるのは望んでいない。
釈然とはしなかったけど、ニーナさんが言うならと大人しく引き下がった。
けど……
「おい、待てよ」
先ほどの男だった。
僕よりかなり大きい筋肉だるまみたいな大男。
背中には大剣を背負っている。
冒険者なのだろうか。
その男は明らかに見下すような目でこちらを見てくる。
「人のふりしてんじゃねーぞ化け物! 気持ちわりいから消えろって言ったよなあ? さっさと死ねや。おめえもだ、証拠もねーのに人を勝手に犯人扱いしてよお?」
「……そうですね。すみません」
不本意ではあったけど証拠がないのは確かだった。
そして、僕が頭を下げたのを見て男は品のない笑いを浮かべる。
唾を飛ばしながら言ってきた。
「ギャハハ! 分かればいいんだよ、分かればなあ!」
男は気分良さげに下品な笑い声をあげながら背を見せる。
「この街で平穏に過ごしたかったら逆らっちゃいけねえやつがいるってのを覚えとけよ! このCランク冒険者のゴーリア様をなあ! ギャハハハァブッ!!?」
男は盛大にスッ転んだ。
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僕のやったことに気付いた人はいない。
だから傍から見たらこの人は勝手に転んだように見える。
その姿に様子を遠巻きに見ていた何人かが吹き出した。
僕は笑いそうになるのを必死に堪えてワザとらしく返事をした。
「分かりました、気を付けますねゴーリアさん」
それを聞いてもう何人かが笑い声を漏らした。
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