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第8話 尋問
しおりを挟む黒崎加恋視点
クラスメイト達が何事かと見てくる中、空き教室へと連行される。
扉が閉まる音が死刑宣告に聞こえた。
「服を脱ぎなさい雌豚」
「そういうのってクラスメイトからは絶対に聞かない台詞だと思ってた」
HRまではまだ時間がある。
どうやら薫はその短い時間の間に私から色々聞き出すつもりらしい。
あ、ちなみに服を脱げ云々は冗談だったらしく、今私は普通に制服姿だ。
いや……対応間違えたら本当に脱がしに来そうな気迫は感じるけど。
目の前に机と椅子をそれぞれ持ってきて私の前で座った。
何か面接受けるときみたいな。
けど鈴ヶ咲高校の面接なんて比じゃないくらいの圧を感じる。
面接官……いや、もう尋問官とでも言うべきだろうか。
尋問官は3人。
カナデさん信者の西条薫。
カナデさん美少年説信奉者の早乙女晶。
偶然その場に居合わせたクラスメイトの椚木優良。
「まずこの尋問は非公式なものであり黒崎加恋の身の安全は保障されないものとします」
「捕虜の虐待は禁止されてると思うんですけど……」
私がせめてもの抵抗にと小声で反論した瞬間、がん! と、机を叩く音が部屋に響いた。
「許可のない発言は慎むように」
逃げたい……帰って【DOF】でカナデさんに癒してほしい。
でもたぶん無理そう……晶がいるし。
晶はその見た目通り活発で運動が得意なのだ。
短距離走でも私が中間地点でよたよたしてる間にいつの間にかゴールしてる感じ。
逃亡を図ってもすぐに捕えられるだろう。
その高身長なモデル体型が羨ましいと思わないでもないけど……なんて、それどころじゃない現実を思い出す。
「カナデ様は男性だったと、これで宜しいですね雌豚さん?」
「…………」
早口気味に問い詰めてくる薫。
私が黙秘権を行使していると薫がぱちん、と指を鳴らした。
「晶、乳首引き千切り器を持ってきてください」
だから乳首引き千切り器ってなに!?
それどこの拷問器具!?
ぽんっ
すると後ろから肩を叩かれる。
体が恐怖で強張り動かない……そのまま背後から耳元に囁かれた。
「アタシの指先で加恋の乳首を千切るんだよ」
「え、嘘でしょ?」
「できないと思うか?」
「やらないと信じたい」
確かに晶は足の速さだけじゃなく力も強い。
私の乳首なんて簡単にねじ切ることができるだろう。
そんな晶が私の恐怖心を煽るように指先をじりじりと胸の方へと寄せてくる。
なにこれ怖い。嫌な汗が滲んでくる。
唯一味方に思える優良に目線で助けを求める。
「~♪」
スマホを弄っていた。
【DOF】の攻略情報でも見ているのかこちらのことは気にもしていない。
優良はちょっぴり天然さんが入ってる感じの子だ。
基本常識人なんだけどたまに掴みどころがないことをする。
味方がいないことを悟った私は薫を何とか説得することに。
「か、薫? 私たち友達だよね?」
「そうですね。カナデ様を譲ってくれると約束していたはずの友達でしたね」
うぐ……っ。
それを言われると私は弱かった。
確かにカナデさんが男性だった場合のことは何度も薫から言い聞かされていたし、それに対して肯定もしていた。
約束を破ったのは間違いなく私からだった。
少し抵抗はあったけど、良心の呵責から正直に言うことにした。
「うぅ……分かったわよ……男の人の声だった、と思う。私には男の人の声に聞こえた」
すると勢いよく薫が立ち上がった。
その衝撃で椅子が後ろへと倒れる。
「あああ! カナデ様! やはり貴方は私の王子様だった! 私は間違っていなかった! こうなったら全力でカナデ様のネトゲライフをお手伝いしなくては! そうして少しずつ親密になった私たちはオフ会で出会い惹かれあってリアルでも親密な関係に……――」
感激したようにくねくねと自分の腕で自分を抱きしめる薫。
晶もやっぱりかって顔で頷いている。
二人のその目には雄を狙う捕食者のような獰猛な光が宿っていた。
ぐるん! と薫の顔だけが再びこちらを向く……ホラー映画みたいで怖かった。
「分かってるとは思いますけどこのことは誰にも言わないように。グループの皆だろうとそれ以外だろうと」
「さすがにそれくらい分かってるわよ……」
カナデさんが男だと知れたらどうなるか想像もつかない。
特にカナデさんとほとんど関わりのある【ゲーマー美少年捜索隊】の皆には言えない。
ライバルが増えるのは目に見えていた。
優良をここに連れてきたのも口止めをするためだと思う。
しかし、そこで優良が「え?」って、顔を上げた。
「どうした優良?」
晶が言うと優良が「ご、ごめん」と返した。
嫌な予感を感じた私たちの視線に対して申し訳なさそうに優良が口を開いた。
「もうLEINで皆に教えちゃったんだけど」
「「「え」」」
私たちは慌ててそれぞれ制服のポケットからスマホを取り出して【ゲーマー美少年捜索隊】の通知を見た。
確かに一つだけ未読メッセージがあった。
『カナデ本当に男の人だったらしいよ~!』
するとメッセージの送信取り消しをさせようとする間もなく、すぐに既読が付いたようだ。
返事が返ってくる。
『は? え? マジ?』
『妄想乙ww』
『ヾノ ゚ω゚ )ナイナイ』
『ないと思う……ちなみに情報源は?』
あれ、意外とみんな否定的……?
興味はありつつも信じてないって感じ。
……それはそうかもしれない。
いきなり何の根拠もなしにそんなこと言われても信じれないのは分かる。
これならまだ誤魔化しが……なんて。
そんなわけはない。
ネトゲで仲の良かったフレンドさんが男だった?
しかも、優しくて紳士的。
そんなアニメの世界のヒーローみたいな人が実は身近にいた。
『とりあえず』
『『『詳しく!!!!』』』
LEINから一斉にやってくるメンバーたちの反応を見て思う。
う、うん……なんとなく分かってた。
やっぱり興味がない女の子なんていないよね――
「くっ、雌豚共め!」
薫のいつもの口癖が聞こえてくる。
やめた方がいいと思ってたけど。
今ばかりはちょっとだけ同じことを言いたかった。
◇
大鳥奏視点
仮眠を取っていたらもう昼過ぎだった。
「あー……良く寝た」
ふあっ、と欠伸を一つ。
鏡を見て身だしなみを整える。
外に行くわけでもないのであくまでも軽くだ。
「我ながら中々のイケメン」
誰も言ってくれないから自分で言うけど、この顔はモデルをしててもおかしくは……やめよう。
本当に虚しくなってきた。
どうせニートなんだしね。
「あれ? 【DOF】のメッセージ? って、うおっ」
ちょっと驚いた。
【DOF】フレンドさんからのメッセージの通知が10件以上も入っていたから。
『カナデさん神貝の採取にいきませんか?』
『カナデ様、良ければ夕方から遊びたいのですがどうでしょう?』
『カナデ~一緒に遊ぼっ!(*´∀`*)』
『おはよう、カナデはどこか行きたいところあるか? 今日の夜遊びに行かないか?』
そこから下にもズラーっと並ぶ遊びの誘い。
……何があったんだろう?
「一体何が……?」
よく分からないけど、とりあえず僕は一通ずつメッセージを返していくのだった。
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