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2.私が部活を決めた理由
しおりを挟む教室に向かうと、すでに新しいクラスメイトたちが集まり始めていた。
ドアを開けて中に入ると、目の前に翔太くんの姿があった。
彼はいつもと同じ、、、爽やかな笑顔で友達と話していた。
『中学の時の友達じゃない人と話してる。もう新しい友達を作ったんだ…。凄いな…』
ボーっと翔太の事を眺めていた。
彼と同じクラスで過ごせるなんて信じられないほど嬉しかった。
これから毎日彼の姿を見られると思うだけで胸がいっぱいになった。
「茉莉、今日なんだか嬉しそうだね。」
と結衣がニヤリと笑って言った。
「えっ、そうかな…?」
と私は照れ笑いを浮かべながら答えた。
「絶対、翔太くんのこと考えてたでしょ?」
と結衣が冗談半分に言ってくる。
「ち、違うよ…!」
と私は慌てて否定したものの顔がますます赤くなっていくのを感じた。
でも心の中では否定しきれなかった。
だって翔太くんと同じクラスになれたことが私にとって本当に幸せでこれからの日々が楽しみで仕方なかったから。
新しいクラスでの生活が翔太くんとの距離を縮めるチャンスになるかもしれないと、心から期待していた。
私はなんとか気持ちを落ち着けようと深呼吸をした。
けれども心臓の鼓動はまだ速く、彼の笑顔が頭から離れない。
どうしても視線が翔太くんの方に向かってしまう。
彼は友達と笑いながら楽しそうに話している。
その姿を見るとまるで彼がキラキラと輝いているように感じられた。
自然と彼の周りに人が集まっていてその中心にいる彼がとても遠い存在に思えた。
『私も…あんなふうに彼と自然に話せたらいいのに…』
と、心の中で呟きながら私は自分の席へと向かった。
だけど翔太くんを横目に見るたびに胸がまたドキドキと高鳴る。
『あの笑顔…本当に素敵だな』
と、私は思わずまた彼の方を見てしまった。
けれども視線が合ってしまうのが怖くてすぐに目を逸らした。
『気づかれちゃったかな…?』
心配になりながらも彼の姿を目の端で捉えたまま私は自分の席に座った。
席に着くと私は机に肘をついて顔を隠すようにして俯いた。
頬が熱くなっているのが自分でも分かる。
周りのクラスメイトが楽しそうに話している中私だけが一人心の中で彼のことを考えていた。
『やっぱり、彼と同じクラスになれてよかった…』
私は心の中でそう思いながらほんの少しだけ勇気を出して再び翔太くんの方を見た。
彼は私が思った通りの場所に立っていて変わらず周りの友達と笑い合っている。
そんな彼の姿を見てまた胸が高鳴るのを感じた。
たったそれだけのことで、はこんなにも幸せな気持ちになるのだと、自分でも驚いた。
『これからは、もっと彼と話せる機会が増えるのかな…?』
そんな期待が私の胸の中でふくらんでいった。
だけど同時に不安も感じた。
彼が人気者であることは私だけでなく誰もが知っていることだった。
そんな彼に近づくのは私のような普通の女の子には難しいのかもしれない…。
そう聞かせながらふぅっと息を吐いた。
彼の声を聞いたり姿を見たりすることができるだけで学校生活が一段と輝いて見える。
『これからが楽しみだな…』
そう思いながら、私は机に置いた手に力を込めた。
_________________________________________________
新学期が始まってか、あっという間に一か月が過ぎた。
最初は慣れない環境に少し戸惑っていたけれど今ではクラスにもだいぶ馴染んできた気がする。
朝教室に入ると自然と挨拶を交わす友達も増え少しずつ学校生活が楽しくなってきた。
「おはよう、茉莉!」
結衣が笑顔で私に手を振る。
「おはよう、結衣!」
私も同じように笑顔で返事をした。
結衣は明るくて社交的で周りの友達ともすぐに打ち解けている。
そんな結衣と一緒にいると有難いことに私も自然とクラスメイトたちとの距離が縮まったように感じる。
教室に着いた私は席についてからカバンを開け今日の授業の準備を始めた。
ふと窓の外を見るとグラウンドでサッカー部の朝練が行われているのが見えた。
遠目でも分かる。
あのキラキラと輝く存在感。
やっぱり翔太くんだった。
『今日も頑張ってるんだな…』
私は彼の姿を見つめながら小さく呟いた。
サッカー部のエースとして活躍する翔太くんは入学してからますます人気者になった。
彼のプレーを見るたびにその努力と情熱に心を奪われてしまう。
けれど私はまだ翔太くんと全く話せていない。
彼と同じクラスでありながらなかなか接点がないのがもどかしい。
でもこれからの学校生活で少しずつ距離を縮められたらいいなと、密かに願っている。
そんなことを考えていると先生が教室に入ってきて授業が始まった。学活だ。
今日のテーマは「部活動」。
新入生として、そろそろ本格的に部活動を決める時期がやってきた。
「皆さん、部活は決まりましたか?もうどこかの部に入部してる者もいる。まだの人達は自分のやってみたい事、興味ある分野を自分なりに模索して見つけてもらいたい」
先生の声が教室に響く。
クラスメイトたちの間からもざわざわとした声が聞こえてくる。
すでに決めた人もいれば、まだ迷っている人もいるようだ。
私もそのうちの一人でいくつかの部活を見学したけれどどれにするか決めかねていた。
活の話が進む中で、私は自分の興味をじっくりと考え始めた。確かに文化系の部活も楽しそうだし、翔太くんのようにスポーツに打ち込むのも魅力的だ。でも、自分が本当に好きなことって何だろう?
その時ふと頭に浮かんだのはお菓子作りや料理をしている自分の姿だった。
小さい頃から台所に立つのが好きで母と一緒にケーキを焼いたり夕食のお手伝いをしたりする時間がとても楽しかった。
誰かに食べてもらって『おいしい!』って言ってもらえる瞬間が私にとって何よりも嬉しかった。
『そうだ…やっぱり調理部がいいかも…』
と私は心の中で呟いた。
放課後、調理部の見学に行ってみた。
部室にはいろんな食材や調理道具が並んでいて見ただけでワクワクするような雰囲気だった。
部員たちが楽しそうに料理を作り、笑顔でおしゃべりしている姿を見てここなら自分も自然体で楽しめそうだと感じた。
帰り道、私は結衣にそのことを話してみた。
「結衣、私、調理部に入ることにしたんだ。」
と少し恥ずかしそうに言った。
「えっ、そうなんだ!調理部って楽しそうだね。茉莉、お菓子作りとか好きだもんね!」
と結衣が笑顔で返してくれた。
「うん。やっぱり、何か自分が好きなことに打ち込みたいなって思って…。」
と私は少し照れくさそうに答えた。
「それ、すごくいいと思うよ!調理部なら茉莉にぴったりだね。」
結衣のその言葉に私は安心した。
部活を決めることはこれからの学校生活の大きな部分を占める。
だからこそ自分が本当にやりたいことを選んでよかったと思う。
お菓子作りや料理を通じて新しい友達もできるかもしれないし、自分のスキルももっと磨けるかもしれない。
『よし、調理部に決めた!』
私は心の中でそう決意し、翌日には正式に調理部に入部届を提出した。
これから始まる調理部での活動が私の学校生活をさらに彩ってくれるに違いない。
ちょっとした不安もあるけれど、それ以上に楽しみな気持ちが大きい。
そして、何より自分が好きなことに打ち込めることが嬉しかった。
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