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第一章:王都編
015:食事
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とりあえず食事場所だ。冒険者ギルドから少し歩いて商業区画の中の高級エリアにある食事処が選ばれた。レダにはミアを呼びに、ひとっ走りしてもらう。
「いらっしゃいませぇ」
客層が野卑な感じの店じゃなく洒落た感じの店だ。三階まで上がる。一階から吹き抜けになっていて凄い眺めだ。この世界でこういう店に入るのは初めてだな。それにドレスコードがある店でもないようだ。いちおう一階には冒険者風の男たちも、わずかながらに見える。
男は店の店員と話をした後で、ずんずんと奥の方へ進んでいく。行きつけっぽく、もの慣れた風だ。そして店の奥の個室へと入った。そこは王都を一望できる席だった。元々が高台の場所にある店。その中でも三階と言う立地を活かしての風景だ。
だが、男には悪いが私は元が貴族だ。王都にある屋敷もそこそこの高台エリアにあって、こういう風景には慣れている。
でもまぁ綺麗なものは好きだ。そろそろ空がオレンジ色に変わろうかという時間帯。レダとミアは間に合うだろうか。二人には是非、暮れ始める夕焼けを楽しんで欲しいが。
私が風景に視線を移している間に、男が店員に何やら注文をしている。少し漏れ聞こえたところでは男は酒を、私には果物ジュースを頼んでいた。
ふむ。悪くない。
そんな感想を持った私は男の対面の席へと座る。
「嫌いな食べ物とかあるか?」
「ん? いや、特にこれというのはないね。大抵のものは食べれるよ」
「ふむ。魔物系もイケる口か?」
「レッドベアの肉とか?」
私が言ったのは魔物の肉の中でも、かなりの高級食材として扱われる類のもので珍味の一つだ。
「ほぉ。食べたことがあるのか?」
「えぇ。それなりに」
「ふむ。ならレッドカウはどうだ?」
「それも、それなりに」
すると男が苦笑い。
「元貴族か?」
「あら。女の過去なんて詮索するものじゃないのよ?」
「はは。これは手痛い。だが分かった。なら珍味の一つ。クラーケンなんてどうだ?」
「それは食べたことがないね」
「だろうな。高級だが。お貴族様はあまり食わんらしい。見た目が酷いからな」
「タコ? イカ?」
「両方を足して割ったような見た目をしている」
「戦ったことがあるの?」
「いちおうな」
「おぉ!」
私が反応したからだろう。男が苦笑い。
「お前さん。やっぱり戦闘狂だろう?」
「違うってば」
そんなやり取りをしているとレダとミアが店員に案内されてやってきた。二人共ビクビクしている。
そんな二人の様子を見て男が言った。
「もの慣れた姉に物慣れない兄妹? 実の家族ではないのか?」
私は頷く。
「お互いに利害の一致で一緒に住んでいるの」
「ほぉ」
「まぁ後で機会があったら説明するね」
「あぁ。そうだな」
こうして食事が始まったのだった。
「いらっしゃいませぇ」
客層が野卑な感じの店じゃなく洒落た感じの店だ。三階まで上がる。一階から吹き抜けになっていて凄い眺めだ。この世界でこういう店に入るのは初めてだな。それにドレスコードがある店でもないようだ。いちおう一階には冒険者風の男たちも、わずかながらに見える。
男は店の店員と話をした後で、ずんずんと奥の方へ進んでいく。行きつけっぽく、もの慣れた風だ。そして店の奥の個室へと入った。そこは王都を一望できる席だった。元々が高台の場所にある店。その中でも三階と言う立地を活かしての風景だ。
だが、男には悪いが私は元が貴族だ。王都にある屋敷もそこそこの高台エリアにあって、こういう風景には慣れている。
でもまぁ綺麗なものは好きだ。そろそろ空がオレンジ色に変わろうかという時間帯。レダとミアは間に合うだろうか。二人には是非、暮れ始める夕焼けを楽しんで欲しいが。
私が風景に視線を移している間に、男が店員に何やら注文をしている。少し漏れ聞こえたところでは男は酒を、私には果物ジュースを頼んでいた。
ふむ。悪くない。
そんな感想を持った私は男の対面の席へと座る。
「嫌いな食べ物とかあるか?」
「ん? いや、特にこれというのはないね。大抵のものは食べれるよ」
「ふむ。魔物系もイケる口か?」
「レッドベアの肉とか?」
私が言ったのは魔物の肉の中でも、かなりの高級食材として扱われる類のもので珍味の一つだ。
「ほぉ。食べたことがあるのか?」
「えぇ。それなりに」
「ふむ。ならレッドカウはどうだ?」
「それも、それなりに」
すると男が苦笑い。
「元貴族か?」
「あら。女の過去なんて詮索するものじゃないのよ?」
「はは。これは手痛い。だが分かった。なら珍味の一つ。クラーケンなんてどうだ?」
「それは食べたことがないね」
「だろうな。高級だが。お貴族様はあまり食わんらしい。見た目が酷いからな」
「タコ? イカ?」
「両方を足して割ったような見た目をしている」
「戦ったことがあるの?」
「いちおうな」
「おぉ!」
私が反応したからだろう。男が苦笑い。
「お前さん。やっぱり戦闘狂だろう?」
「違うってば」
そんなやり取りをしているとレダとミアが店員に案内されてやってきた。二人共ビクビクしている。
そんな二人の様子を見て男が言った。
「もの慣れた姉に物慣れない兄妹? 実の家族ではないのか?」
私は頷く。
「お互いに利害の一致で一緒に住んでいるの」
「ほぉ」
「まぁ後で機会があったら説明するね」
「あぁ。そうだな」
こうして食事が始まったのだった。
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