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 晴れてサリナちゃんと付き合うことになった。まぁとはいえ、何も変化はない……わけが無い。

 周りがめっちゃ囃し立てた。

 照れる俺を誂《からか》うのがそんなに面白いか。

 そうか。

 面白いか。

 くっそぉ。

 さて。こうなってくると問題はエステラだ。未だ居候をしている彼女とはきっぱりと別れなくてはいけない。そう思っていたところに彼女から申し出があった。

「完全に私はお邪魔な人間になったわけだ。お父様にもジンが結婚を前提にした恋人が出来たことを報告するわ。さすがにこうなったら諦めるでしょ」

 俺は彼女にお礼を言う。

「ありがとうな」
「うん?」
「エステラだろ? サリナちゃんを焚き付けたの」
「……そうね」
「それに俺も」
「……うん」
「なんか、お礼がしたいんだが?」
「それじゃあ子種をちょうだい」
「それは出来ないってば」
「そうなのよねぇ」

 そう言って笑う彼女の無理をした笑顔が痛い。何かしてやりたいが俺には彼女に渡せる物が何にもない。

 エステラが言う。

「とりあえず私。宿の方に移るね。世話を掛けたわね」
「いや。うん。こっちこそ。世話になった」
「いいえ。これからはサリナちゃんと、ね」
「あぁ」

 そうだ!

「これ。今まで分の給料。宿代の足しにして」

 そう言って彼女にお金を渡す。エステラは素直に受け取った。

「正直、助かるわ。それで物は相談なんだけど……」
「うん?」
「サリナちゃんに文字の読み書きと計算の続きと、それから店の引き継ぎもしたいのよ。なので、もうちょっとだけ厄介になるね」
「あぁ。どうせその辺のことはサリナと話はついているんだろ?」
「うん」

 エステラは頷く。そして後ろに控えていた侍女のミナに指示を出し始めた。

「宿に引っ越すから荷物をまとめて」
「はい。お嬢様」

 こうしてエステラは家を出ていったのだった。





 その翌日。俺の家に男が訪ねてきた。最初に対応したのは店の事の引き継ぎをしていたエステラとサリナだ。

「ジン。お客様よ」

 そう言って男を紹介してくれた。長身の、一見すると冒険者風の男だが育ちが良さそうだ。髪なんてサラサラだ。

「えっと。どちら様でしょうか?」
「俺はジェサライムだ。君がジンか?」
「えぇ。そうですが?」

 するとジェサライム。エステラを見てニッコリ微笑む。

「君は?」
「はい? 私ですか? エステラと申します」
「ふぅん。恋人か何か?」
「いえ。違います。恋人はこっちのサリナの方です」
「ほぉ? じゃあ君は?」
「……ただの従業員です」
「ふぅん?」

 何やらエステラを口説き始めてしまった。

 なんなんだコイツは?
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