2年死ィ組 カイモン先生

６章 体育館

４９話 ３人の男たち

「逃げちゃいけないなー。君と先生は無関係じゃないはずだ」
　
「うっ」

　生徒会長に止められたボクは一歩も動くことができなくなった。
　続いて、ミコトが心の内に押さえつけられた怒りを吐き出すような口調で、こう切り出した。

「……言ってくれますね。先生みたいなブサイクな男にフラれちゃって正直ショックです。本当は喜んでくれると思ってましたから……実は先生以外にもＳＮＳでお呼びした人達がいるんですよ……」
　
　とミコトが言うと、さっき、ミコトと一緒に体育館の保管庫から出てきた３人の男たちが、カイモン先生の前に揃い踏みした。

「なんだコイツらは？」

「この人達は私のＳＮＳ仲間です。皆さん自己紹介してくださるかしら？」

　とミコトが男達に言うと、まず、身長１８５センチくらい体重１００キロくらいありそうな小太りのジャージを着た男が、

「俺は厚大の相撲部やってるクマボーだ。昨日ＳＮＳでミコトちゃんからあんたを痛めつけるために、俺たちは呼ばれた」

　というと、クマボーさんは右足を天高く上げると、床に転がっているバレーボールに四股を踏んで"グシャ"とペシャンコにしてしまったぞ。

(あの体重で踏み潰されたら死んじゃうよ……)

　踏み潰されたバレーボールを見てボクは顔を青ざめた。

　今度は身長１７５センチくらい、体重６６キロくらいの革ジャケットを着た痩せ型の男が、

「うぃす、おれ、厚原駅でチーマーやってるエーミンすぅ。俺、ＳＮＳでミコトちゃんと知り合ってさ、昨日、担任になった奴がキモくてムカつくから、痛めつけて追い出したら、俺と付き合ってあげるの考えてもいいって持ちかけられてさ……そういうわけだからアンタ殺すわ……」

　とエーミンさんは言と、革ジャケットの裏ポケットから鎖を取り出すと、バスケットのゴールをめがけて、鎖を振り回した。すると"バキィイン！"とバスケットゴールが外れて床に転げ落ちてしまった。

(なんて破壊力のある鎖なんだよ～)

　破壊されたバスケットゴールの輪っかを見て、ボクはボーぜんとした。

　最後に身長１８０センチくらい、体重９０キロくらいのジーパンをはいたゴツい男が、

「おれは、ＳＮＳじゃＴと名乗ってる。去年まで傭兵やってた。俺らはよ、ミコトちゃんから日給５万円で雇われたからよ。半端な仕事はしねえぞ？」

　そういうとＴさんはサバイバル・ナイフを取りだし、窓際にあるカーテンをナイフで切り刻んで細切れにしてしまった。Ｔさんの手さばきはとても早くてボクには一振りしたように見えたが、実際は何回かにわけてナイフを振ったみたいだった。

(ええ～、こんなスピードで切られたら、人間のからだはどうなっちゃうんだよ～！！)

　長さ３メートル、幅５メールもあるでかいカーテンが数秒で１センチの細切れになったのを見てボクは戦慄した。

　ミコトが紹介した男たちは３人ともトンでもない使い手で、全員が相手を痛めつけるプロみたいな連中だった。

　ミコトはＳＮＳでこんな人達と交流してたんだな。

　しかも、付き合あう約束したり、日給５万円だしたり……

　一人のあたり、５万円だから、３人で１５万円だ。一介の女子生徒がこんな大きい金額払うところ、ミコトはマジでこの人達を使ってカイモン先生を痛めつけるつもりだ。