2年死ィ組 カイモン先生

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6章 体育館

43話 沈黙

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 体育館に連れてこられて、イスに座ったときから、だいたい、5分たったというのに、生徒会長は特に何かを言うわけではなく、ただ、ボクをじっとニラ見つけたまま寡黙を続けていた。

「…………」
「ーーー」

 この沈黙はかなりキツイ。
 そして、重かった。
 ボクはこの重い沈黙に耐えきれなくなったので、恐る恐る生徒会長にたずねた。

「あ、あのー。生徒会長、ボクをこんな所に連れてきて、どうするつもりなんです?」

 ボクが聞くと生徒会長は、うっすらと笑みを浮かべた。

「どうもしないさ、ただ君にいくつか聞きたいことがあってね……」
「えぇ?」

 生徒会長が妙な事を言い出したからボクはとまどった。

「キミはあの先生とやけに親しそうに事務室に入ったね?」

「いやあ、それはボクの父がたまたま今日、学校に用事があったそうで、担任である先生が同席しただけのことですよ……」

 本当はボクの父の会社が進めている"X開発事業"の中止を企む脅迫犯が、ボクに危害を加えようとたくらんでいることや、ボクのクラスの担任である海電悶次郎ことカイモン先生がボクのボディーガードをしているという話をふせておきたかった。 

 ボクが父とカイモン先生と一緒に事務室に入ったのは、ボクの警護の相談についてのことだったのだが、そんなぶっ飛んだことを一般生徒に話しちゃったら、ボクの平穏な学園生活はたちまち存亡の危機にさらされるにちがいない。
 ボクはマトモじゃない学園生活を送りたくなかった……
 ここは何としても誤魔化して、"知らぬ存ぜぬ"を貫かなくてはいけないのだ。

「……と言うわけです」
 
「へえ、そうなんだ……」
 生徒会長はボクの言ったことにうなずいた。

「……そうですよ、それだけの話なんですよ。ボクはあの先生とは特に親しくないし、関わりがりませんよ……」 

「なるほどねー」

 生徒会長は納得した表情で相づちをうった。
 どうやら納得してくれたようだな……
 これで、(教室に帰れるぞ)とボクは安心しながら、
 
「そうなんです。ですから、もう授業がはじまっていますし、そろそろ教室に戻っていいですかね?」

 と、ボクは生徒会長にいった。
 (さて、これで、教室にもどるか)と思ってボクは椅子から立ち上がろうとしたが……生徒会長は右手でボクを抑止した。

「ふふふ、君とカイモン先生が親しくないだって?嘘はいけないな~」

「ええ?!」

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