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グチュ、という音と共に歩が腰を揺らした。「はッ」と息が漏れて、その瞬間後孔を貫く熱杭の存在を思い出す。まだそれは硬く、熱く、おれの中で存在を主張していた。
挿入してから時間が経ったことに加え、おれが一度達したことで腔内は蕩け、侵入者に甘く絡みついている。
熱杭は角度や深さを確認するように、おれの中を出入りし始めた。
「ぁっ。まって……ん、んぅっ。あ、あ…………ぁあん!」
「ふーん、ここがいいの?」
上からおれの反応をつぶさに確認していた歩は、やがて確信を得たようにズクズクと動きだす。前立腺を先端で押しつぶすように何度も何度も突かれると、脳天を貫くような快感に目の前にちかちかと星が飛んだ。
歩は緩急をつけてストロークを変化させる。
今度は奥のひだに雁首を引っ掛けるようにして捏ねられると、腰から下が溶けてしまいそうな悦楽にずぶずぶと溺れていく。
……頭がおかしくなりそうだ。上から押さえつけられ、もう快感を逃がす場所がない。
あゆ、あゆ……うわごとのように名前を呼ぶ。髪を振り乱し縋るように見つめると、歩は目を細めてしあわせそうに笑っている。
「うん。俺も気持ちいいよ」
ぐっと身体を倒し歩がおれの唇を舐める。掠れた嬌声を漏らしながら、無意識にその舌を追いかけた。
舌だけが空中で絡み合い、その濡れた生々しい感覚に思考まで蕩けてしまう。
「あっ、あゆ……もっと。もっとちょーだい!」
それはさっきの気持ちいいキスをねだる言葉だったものの、歩はチッと舌打ちをして抽挿の動きを強めた。すでに支配されている身体は、どんどんと高まっていく。
おれが両腕を伸ばすと今度こそ歩は斜めに顔を寄せ、深く唇を重ね合わせてくれた。頭ごと抱え、素直に口を開き、歩の舌に明け渡す。
それはまるで、おれの中がぜんぶ歩のものになってしまったような感覚だった。
自分の身体を他人にゆだねる、少しの不安と背徳感。それを圧倒的に上回る、安心感と幸福感。これを味わうために人は肌を重ね合わせるのかもしれない。
自分の意志とは関係なく、おれの身体はぴくぴくと跳ねはじめた。歩の肩に抱えられた脚先がピンと伸びる。
それと同時に内壁が蠕動し、歩のペニスから子種を欲しがるみたいにぎゅうぎゅう締め付けた。
「あゆっ、あゆ……だめ、イッちゃう!……あ゛~~~~~!!」
「俺も……ぐッ……」
遠のきそうな意識の中で確かに、どくどくと拍動する陰茎の動きを自分の内部に感じた。歩はとろとろと勢いなく射精する俺を見ながら、最後までグ、グッと腰を押し込んでくる。敏感になった雄膣への刺激で、飛びそうになった意識が強制的に戻された。
す……すごかった。身体はまだ甘い余韻に痺れ、全く力が入らない。
経験がないから予想でしかないけど、歩はすごくセックスが上手いんじゃ?
しかも男相手は初めてのはずなのに、おれなんて初体験だったのに、的確に高められてしまったことにも驚きを隠せない。
勉強よりもスポーツ!という感じだった歩の、隠れた才能を垣間見てしまった気がした。
歩がコンドームの根本を抑えながら腰を引く。長時間入っていたペニスが抜けたあとは、妙な喪失感があった。後孔が寂しげにくぱくぱする様子を見た歩が、エッロと呟いた。
おれはハッとしたように上半身だけ起き上がり、歩に詰め寄った。
「ど……どうだった?」
「どうって……こっちはなんでコウがここにいるのか聞きたいんだけど」
「あゆが好きだからって、言っただろ!結婚してくれる?」
「いやいやそーゆー意味じゃ、てか結婚て…………あ。コウってお前……まさか、あの小さい女の子か!?」
「……うん。別にもともと、男だけど。倖大だし」
やっと思い出してくれた。まじか、と驚きながらも歩は楽しそうに笑う。
今日は歩の笑顔がたくさん見られて幸せだ。つられておれも笑顔になると、じぃっと見つめられた。
「よく見ればコウの面影あるな。すっげー可愛い」
「ちゃんと、お姫様になれてた?」
「あー!あの格好!金髪!そういうことね……うわ、最高じゃん。なんなの?一途すぎない?だめだ。キューンと来た」
歩はおおげさに胸を抑えて悶えていた。ひとしきりそうしたあと、おれの腕を引いて立ち上がらせようとする。シャワーしに行くみたいだ。
確かにローションが残っているのが気になるし、汗で身体中べたべたする。
しかし素直について行こうと立ち上がった瞬間、力が抜けてぺたんとその場に座り込んでしまった。
「あれ……」
「あー。悪い。大丈夫か?」
脚にも腰にも上手く力が入らない。慌てた歩に抱き起こされ、おれは生まれたばかりの子鹿のように支えられながら風呂場へと向かった。
なんなの、セックスってこんな身体が不自由なことになんの?毎回介護のようになったらいたたまれない。
歩にそう尋ねると、にやにやしながら「慣れれば大丈夫だ、多分」と若干不安な回答をされた。まぁ確かに、本来ならば受け入れる場所でないところを使ってるんだ。
自慰ではそこまで感じなかったけど、いまはずっと違和感が残っている。擦れすぎた入口付近はヒリヒリするくらいだ。
ローションは途中でつぎ足す工夫が必要なのかも……そんなことを冷静に分析しているあいだに、歩は座らせたおれの身体を洗い、タオルで拭き、歩のTシャツだが服を着せてくれた。
その頃にはさすがに自分で立って歩けるようになった。
「この見た目で彼シャツたまんねぇ……」
「じゃ、おれ帰るわ」
「は?帰るって、隣の部屋に?」
「うん」
「まじか。ちょっと……座れ」
歩はおれをベッドに座らせたあと、向かい側に立っておれの肩に両手を置く。そして言い聞かせるように、恋人の心得なんてものを教えてくれた。
挿入してから時間が経ったことに加え、おれが一度達したことで腔内は蕩け、侵入者に甘く絡みついている。
熱杭は角度や深さを確認するように、おれの中を出入りし始めた。
「ぁっ。まって……ん、んぅっ。あ、あ…………ぁあん!」
「ふーん、ここがいいの?」
上からおれの反応をつぶさに確認していた歩は、やがて確信を得たようにズクズクと動きだす。前立腺を先端で押しつぶすように何度も何度も突かれると、脳天を貫くような快感に目の前にちかちかと星が飛んだ。
歩は緩急をつけてストロークを変化させる。
今度は奥のひだに雁首を引っ掛けるようにして捏ねられると、腰から下が溶けてしまいそうな悦楽にずぶずぶと溺れていく。
……頭がおかしくなりそうだ。上から押さえつけられ、もう快感を逃がす場所がない。
あゆ、あゆ……うわごとのように名前を呼ぶ。髪を振り乱し縋るように見つめると、歩は目を細めてしあわせそうに笑っている。
「うん。俺も気持ちいいよ」
ぐっと身体を倒し歩がおれの唇を舐める。掠れた嬌声を漏らしながら、無意識にその舌を追いかけた。
舌だけが空中で絡み合い、その濡れた生々しい感覚に思考まで蕩けてしまう。
「あっ、あゆ……もっと。もっとちょーだい!」
それはさっきの気持ちいいキスをねだる言葉だったものの、歩はチッと舌打ちをして抽挿の動きを強めた。すでに支配されている身体は、どんどんと高まっていく。
おれが両腕を伸ばすと今度こそ歩は斜めに顔を寄せ、深く唇を重ね合わせてくれた。頭ごと抱え、素直に口を開き、歩の舌に明け渡す。
それはまるで、おれの中がぜんぶ歩のものになってしまったような感覚だった。
自分の身体を他人にゆだねる、少しの不安と背徳感。それを圧倒的に上回る、安心感と幸福感。これを味わうために人は肌を重ね合わせるのかもしれない。
自分の意志とは関係なく、おれの身体はぴくぴくと跳ねはじめた。歩の肩に抱えられた脚先がピンと伸びる。
それと同時に内壁が蠕動し、歩のペニスから子種を欲しがるみたいにぎゅうぎゅう締め付けた。
「あゆっ、あゆ……だめ、イッちゃう!……あ゛~~~~~!!」
「俺も……ぐッ……」
遠のきそうな意識の中で確かに、どくどくと拍動する陰茎の動きを自分の内部に感じた。歩はとろとろと勢いなく射精する俺を見ながら、最後までグ、グッと腰を押し込んでくる。敏感になった雄膣への刺激で、飛びそうになった意識が強制的に戻された。
す……すごかった。身体はまだ甘い余韻に痺れ、全く力が入らない。
経験がないから予想でしかないけど、歩はすごくセックスが上手いんじゃ?
しかも男相手は初めてのはずなのに、おれなんて初体験だったのに、的確に高められてしまったことにも驚きを隠せない。
勉強よりもスポーツ!という感じだった歩の、隠れた才能を垣間見てしまった気がした。
歩がコンドームの根本を抑えながら腰を引く。長時間入っていたペニスが抜けたあとは、妙な喪失感があった。後孔が寂しげにくぱくぱする様子を見た歩が、エッロと呟いた。
おれはハッとしたように上半身だけ起き上がり、歩に詰め寄った。
「ど……どうだった?」
「どうって……こっちはなんでコウがここにいるのか聞きたいんだけど」
「あゆが好きだからって、言っただろ!結婚してくれる?」
「いやいやそーゆー意味じゃ、てか結婚て…………あ。コウってお前……まさか、あの小さい女の子か!?」
「……うん。別にもともと、男だけど。倖大だし」
やっと思い出してくれた。まじか、と驚きながらも歩は楽しそうに笑う。
今日は歩の笑顔がたくさん見られて幸せだ。つられておれも笑顔になると、じぃっと見つめられた。
「よく見ればコウの面影あるな。すっげー可愛い」
「ちゃんと、お姫様になれてた?」
「あー!あの格好!金髪!そういうことね……うわ、最高じゃん。なんなの?一途すぎない?だめだ。キューンと来た」
歩はおおげさに胸を抑えて悶えていた。ひとしきりそうしたあと、おれの腕を引いて立ち上がらせようとする。シャワーしに行くみたいだ。
確かにローションが残っているのが気になるし、汗で身体中べたべたする。
しかし素直について行こうと立ち上がった瞬間、力が抜けてぺたんとその場に座り込んでしまった。
「あれ……」
「あー。悪い。大丈夫か?」
脚にも腰にも上手く力が入らない。慌てた歩に抱き起こされ、おれは生まれたばかりの子鹿のように支えられながら風呂場へと向かった。
なんなの、セックスってこんな身体が不自由なことになんの?毎回介護のようになったらいたたまれない。
歩にそう尋ねると、にやにやしながら「慣れれば大丈夫だ、多分」と若干不安な回答をされた。まぁ確かに、本来ならば受け入れる場所でないところを使ってるんだ。
自慰ではそこまで感じなかったけど、いまはずっと違和感が残っている。擦れすぎた入口付近はヒリヒリするくらいだ。
ローションは途中でつぎ足す工夫が必要なのかも……そんなことを冷静に分析しているあいだに、歩は座らせたおれの身体を洗い、タオルで拭き、歩のTシャツだが服を着せてくれた。
その頃にはさすがに自分で立って歩けるようになった。
「この見た目で彼シャツたまんねぇ……」
「じゃ、おれ帰るわ」
「は?帰るって、隣の部屋に?」
「うん」
「まじか。ちょっと……座れ」
歩はおれをベッドに座らせたあと、向かい側に立っておれの肩に両手を置く。そして言い聞かせるように、恋人の心得なんてものを教えてくれた。
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