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「泣くなよ、メルク。お前はまだ若い。こんなおじさん相手で悔しかろうが、お前には見目の良さとこのデカい持ち物がある。すぐにでもリベンジする機会は訪れるだろうよ」

 ユピテル団長が前に屈んで僕の頭を撫でてくれる。やっぱり団長は男前だ。僕は完全に抱いてもらっている。
 でも唯一聞き流せない言葉があった。『おじさん相手で悔しかろう』? なにを勘違いしているのかは知らないが、僕は今の立場を誰かに譲るくらいなら命を張ってみせる。

「僕は、あなたを満足させられない自分が情けないんです。おじさんだなんて思ったことない。ずっと、ずっと団長に憧れていたんです。リベンジさせてください。今から」
「お~……さすがに回復が早いな」

 未だに僕の楔はぎっちりと団長に打ち込まれている。そして今や先ほどと変わらない大きさにまで完全復活していた。
 ユピテル団長のフェロモンは少し落ち着いたものの、天幕の中はキャラメルのようないい香りで満たされている。オメガのヒートに当てられたアルファが、これくらいで満足できるはずがない。
 団長は嬉しそうに腰を上げ、落とした。中の凹凸に、張り出したえらが擦られる。自分の出した精液と団長の愛液が混ざりあって動きはスムーズだった。

「わ……あっ。団長っ!」
「あ゛~~……気持ちいいよ、メルク」

 きもちよすぎる。団長が満足げな声を上げているのに、その男臭い声がまた色気にまみれていて、僕は脳天まで痺れた。
 僕の頭の横に両手をついて、ズクズクと上下運動を繰り返す体幹はさすがだ。おそるおそる支えるよう腰に手を置いたけど、どちらかというと僕がしがみついているような有り様だった。
 陰嚢がペチペチと股座に当たる。たぶん僕のペニスが大きすぎて、根本までは飲み込めないのだろう。

 団長の動きで僕のものが出し入れされるたびにジュプ、ジュプ、と水音が響いていた。
 ポタ、と顔に水滴が落ちてくる。団長のこめかみに汗が伝っている。腹の筋肉が動く。前腕と脚には剣でついた古傷があった。
 それらをうっとりと見つめる。なにをしていても、身体の隅から隅までこの人はきれいで輝いている。
 僕の熱すぎる視線に気づいたのか、団長が目を細めた。

「メルク、お前も動いていいんだぞ? 少しは余裕が出てきただろ」
「いえ! もう胸がいっぱいで……も、もちろん団長が動けというならば動きます」
「いや、それはもうセックスじゃないだろ」

 せっくす……ユピテル団長がそんな俗な言葉を使うとは思わなかった。けれどお互いの身体や心までもを丸裸にしてしまうこの行為は、確かにその言葉がぴったりだ。
 天幕に入るまでの僕なら、団長の肌に触れるなんて身の程知らずだと思っただろう。しかし今は触れたくて仕方がなかった。強がっているけど、本音は団長を押し倒して自ら欲望を叩きつけたい。
 自分がこんなにも欲にまみれているなんて、団長とセックスをするまで知らなかった。

 これがアルファの本能なのか? いや違う。ユピテル団長相手じゃなければ、決してこんな気持ちにならないと分かる。
 僕はずっと前から、団長に身も心も捧げているのだ。それはもう、憧れだけではなくなってしまった。こんなの、知ってしまったら後戻りはできない。
 番がいるのならその人と幸せになって欲しいと、本気で思っていたが今はもう無理だ。
 ユピテル団長のこんな……妖艶すぎる姿、誰にも見せたくないし他のアルファに触れさせるのだって許せない。

 僕は生まれて初めて独占欲を知った。

「ユピテル団長。僕はあなたを愛しています。もう、憧れだけには戻れません……責任取ってください!」

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