15 / 18
15.
しおりを挟む既に湯は張られている。アクアの服を脱がそうとすると、彼は「え?なんでお風呂?」と疑問符を飛ばした。
「他の男の匂いが付いているのが耐えられないんだ……」
「っ!そうだ!!」
やっとさっきの男に首筋を舐められたことを思い出したのか、アクアはブルッと身震いしたのちポンポンと自分で服を脱ぎはじめた。そして下履き一枚になったところで手を止め、恥ずかしそうに見上げてくる。
「あの、旦那さま?身体を洗うので……」
「私が洗おう」
スピネルがいたら白い目で見られそうな発言であるが、ブラッドは片時もアクアから離れるつもりはなかった。基本的に反論しない彼はもじもじと後ろを向き、下履きの紐を解く。目の前に現れた小さくて丸い尻。……眼福すぎてつらい。
ブラッドがなんとなく鼻根を抑えている間にちゃぽん、と水音が聞こえアクアは湯に浸かっていた。少しぬるくなった湯を感じ、気持ちよさそうに緩んだ表情でふーっと息を吐いている。なんだこの生き物は……可愛い。
思考をお世話モードに切り替え、スポンジに石鹸を泡立てる。湯で顔を洗っていたアクアが意図に気づき、自分の手で髪をまとめて「お願いします」と顎を上げた。
叫び出したいのをこらえながら、ブラッドは泡を首に乗せ優しくスポンジで擦る。オメガはその項を守るため頑丈なネックガードを付けることもあるが、奴隷のようだとこの国ではあまり好まれていない。
しかしこの首筋を、項を守れるものをなにか付けたいと強く願ってしまう。あんな、海賊なんかに触れられるなんて……。悔しさに手が震える。
「んっ……だ、旦那さま」
「!!」
色っぽい声にハッとする。潤んだ瞳に見つめられて、自然と赤い唇に吸い寄せられた。ふわ、と重なったキスは甘い。小さく柔らかい唇を堪能しながら、スポンジを滑らせた。首から、鎖骨、肩、湯の中へ……
「あぁ……だめ。こんなところで……ね、ブラッドさまぁっ」
「かわいい。アクア、私のことだけ考えて」
シャツの袖が濡れるのも構わずアクアの下肢に手を伸ばすと、ペニスはもう立ち上がっていた。手を優しく添え上下に擦れば、バスルームに高い嬌声が響いた。両手を伸ばされ、濡れた腕が首の後ろに絡まる。
一瞬で人を死に追いやる腕にキスを求めて捕まえられることに、ぞくぞくとした愉悦を感じてしまう自分も大概だ。
今度は顔を傾けて深く舌を絡ませ合う。はじめての時は戸惑うだけだった舌が、ブラッドの舌を求めて伸ばされること。言わずとも混ざった唾液をコクン、と飲み込んでくれることに胸が熱くなる。
アクアの舌を強めに吸った瞬間、彼は全身を震わせて達した。
「はぁっ、はぁ……もうっ。おれだけ、こんな……」
「ごめん、疲れさせてしまったね。さぁ、連れて行ってあげるから今度は島を楽しもう」
恨みがましく見られても、その瞳は潤んでいて匂い立つほど魅惑的だ。アクアを前にしてきたアルファたちの夢見た姿が、目の前にある。だが船はもうとっくに止まっているし、ブラッドは我慢のできる男だった。
アクアの身体を拭き、新しい服を着せてから抱き上げる。別に歩けるのに……と口を尖らせる彼の泣きぼくろに軽いキスを落として、船を下りた。
172
お気に入りに追加
297
あなたにおすすめの小説
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。
アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。
捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!!
承諾してしまった真名に
「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢の選んだ末路〜嫌われ妻は愛する夫に復讐を果たします〜
ノルジャン
恋愛
モアーナは夫のオセローに嫌われていた。夫には白い結婚を続け、お互いに愛人をつくろうと言われたのだった。それでも彼女はオセローを愛していた。だが自尊心の強いモアーナはやはり結婚生活に耐えられず、愛してくれない夫に復讐を果たす。その復讐とは……?
※残酷な描写あり
⭐︎6話からマリー、9話目からオセロー視点で完結。
ムーンライトノベルズ からの転載です。
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる