上 下
34 / 58

34.

しおりを挟む
 その夜、珍しくリアンはディムルドを伴って帰ってきた。

「メグムくんこんばんはー!ちょっと相談があって来たんだけど、時間いい?」
「ディムルドさん!僕も相談したいことがあって……」
「……なんで」

 リアンは不服そうだったが構わずに、ディムルドと一旦外に出る。彼が切り出した話は僕が想像もしていなかったものだった。

「メグムくん、リアンの誕生日知ってる?」
「えっ……知らないです」
「だよね~!実は来週なんだけどさ……」

 聞いたところによると、この国では誕生日を仲間内で盛大に祝うのが一般的らしい。自分でパーティーを開催する人もいるし、リアンのような人は周りが勝手にパーティーを催すそうだ。
 ディムルドは今年、リアンの学生時代の友人や研究所で仲のいい人を集めたパーティーを計画しているみたいで、それに僕も参加してほしいとのことだった。

「もちろん参加させてください。パーティーとか初めてですけど……僕にできることがあれば準備もやります!」
「ありがとう!あ、ちなみにパーティーは誕生日当日じゃないから、よかったら当日は二人きりでお祝いしてあげて?」

 その顔はブリギッドから聞いてるよ、という表情だった。恥ずかしいけど、ありがたい情報だ。これを口実にリアンを誘ってみよう。

「あの、僕からの相談なんですが……リアン、僕を家まで送るために、仕事を持ち帰って遅くまで仕事をしているみたいなんです。なんとか無理しないよう説得したいんですが、なにかアドバイスありませんか?」
「それなら簡単だよ!メグムくんがリアンの家に住めばいい!」

 住む!?と瞠目してしまったが、ディムルドの説明を聞いて納得した。僕が仕事の日はリアンの家に泊まれば、リアンは慌てて帰ってこなくていいし、僕が翌日の朝に帰れば夜ほどの危険もない。家まで送るという手間も発生しないだろう。
 ディムルドは以前、嫁入り前のオメガがアルファの家に外泊なんて!と冗談交じりに言っていたが、僕の発情期を経てその考えは変わったらしい。

 それならリアンと一緒にいられる時間が増えるし、仕事のあとに二回も一緒に食事をできる可能性がある。
 まさに目から鱗のアドバイスに、僕はひたすら感謝した。

 さっそく提案してみようと一旦家の中に戻ると、玄関で待っていたらしいリアンが僕の腕を掴んできた。

「わっ。ど、どうしたのリアン?」
「嫉妬は見苦しいぞ~。じゃ、俺は帰るから!メグムくん、例の件よろしくね~」

 ディムルドが帰ったあと、リアンは僕の腕を引いたままリビングへ行きソファに座らせた。ここに二人で座るのは初めてで、広いのにちょっと距離が近い気がして緊張する。

「……今朝は助かった。ありがとう」
「そんなそんな。だって、リアンが仕事持ち帰ってるのって……僕のせいですよね?」
「いや……単純にいまは忙しいんだ」
「うーん、それもあるんだろうけど。ここでリアンに提案があります。今度から僕、ここに泊まっていっていいですか?」
「えっ……?」
「……だめですか?」

 リアンが完全に予想外という顔をするものだから、つい不安そうな声を出してしまった。前に泊まればいいって、言ってくれてたはずなんだけどな。
 これは決して自分の私欲のためではなくて、リアンのためなんだからと自分を奮い立たせる。それでも眉は落ち、おずおずと隣を見上げながら僕は続けた。

「毎回送ってもらうのが申し訳ないんです。僕が泊まれば、リアンはちゃんと仕事を終わらせて帰ってこれるんじゃないかと思って……それに」
「いいから!もちろんいい!」
「本当ですか!」
「ぐ……気を遣わせて悪いな。空いてる部屋は好きに使ってもらって構わないから」

 食い気味な返事にほっとして、ぱあっと明るい気持ちになる。
 どの部屋も綺麗にはしてあるし、来客用のベッドがある部屋をそのまま使わせてもらえば明後日から泊まれるだろう。

 リアンに家まで送ってもらう間も僕はやっと先の見通しが立ったことにルンルンで、たまにリアンが周囲を気にしてキョロキョロと見回していたけど、虫がいたのかな?くらいに思っていた。
 最近は寒さが厳しくなってきて、外を飛ぶ虫もあまりいないけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 ハッピーエンド保証! 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります) 11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。 ※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。 自衛お願いします。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

成り行き番の溺愛生活

アオ
BL
タイトルそのままです 成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です 始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください オメガバースで独自の設定があるかもです 27歳×16歳のカップルです この小説の世界では法律上大丈夫です  オメガバの世界だからね それでもよければ読んでくださるとうれしいです

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...