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5.ニュイ・ドリーム
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スパ・スポールは噂話の宝庫だ。
オメガ同士は結束力が強く、僕のように口下手でも仲間として扱ってくれる。筋肉が格好いいダナとその友人で小柄なブリギッドは、僕が近くにいると必ず話しかけてくれた。
「昨日リアンくん見かけちゃった。美男子って見てるだけで目の保養になるわぁ」
「わかる……!旦那に聞いたんだけど、そろそろニュイ・ドリームに登録するらしいよ」
「うそ!?そっか十八になったのか……え、やば。番いなかったら抱いてもらえるかもってことじゃん」
「言っちゃいけないとはいえ、どんな感じだったか聞きたいね~!」
よく人々の口に乗る『リアンくん』というのは、キリトの講師で僕も一度見かけた美丈夫のアルファのことだ。父親が“異世界転移研究所”の所長で、自身も研究員として勤めている。
学校も飛び級で卒業した頭の良さと、家もお金持ちだということで、パートナーのいるオメガにとっても気になる、高嶺の花のような存在だ。
そして……“ニュイ・ドリーム”というオメガ専用施設がある。
そこは番のいない発情期のオメガが過ごす施設で、希望すれば十八歳以上の登録したアルファが割り当てられ、抱いてもらうこともできる。
もちろん利用しなくてもいいのだが、ニュイ・ドリームはスパ・スポール同様にオメガにとって過ごしやすく安全な施設となっているので人気だ。
ニュイ・ドリームでもアルファには厳しい水準が適用され、問題のある行動をすれば登録は解除となる。
希望するオメガに当てがわれるアルファは施設側がランダムに決定するが、相手が誰だったのかはお互い他人に漏らしてはいけないというルールがある。そういった面はビジネスライクだ。
しかしニュイ・ドリームでの出会いがきっかけで恋に落ち、番になるカップルもいるらしい。
鮮やかな赤髪の女性であるブリギッドは、実際そこで今の旦那さんと出会ったようだ。旦那さんは異世界転移研究所の職員だから、リアンの話にも詳しいのだろう。
「メグムは歳も近いし可能性あるよね!あ、でも彼氏いるんだっけ」
「う、うん……でも、僕はあのリアンって人、苦手かも」
「もう会ったの?結構冷たいって言われてるよね~。歯に衣着せないっていうか……」
どんな基準で選別されるのかは知らないけど、あんなにもずけずけ言う人がニュイ・ドリームに登録できるんだろうか?
それに、発情期のオメガの相手を……って、だめだ。こちらでは発情期関連の話がタブーではないとしても、他人の性事情について考えることには慣れなくて抵抗がある。
今さらだけど、発情期という動物的な現象が自分の身に起こるなんてことも……いくらオメガに優しい世界とはいえ、自分がどうなってしまうのか分からなくてけっこう怖い。
「ほらほら、困ってるじゃないですか。メグムくんにはまだ早いと思いますよ」
「ターザはやけにメグムに優しいじゃない?あー、ごめんごめん。それで迷い人の発情期って、すぐ来ないんだっけ?」
ターザはインストラクターなだけあって、迷い人に関する知識も勉強しているみたいだ。
年に一人は必ず来るという迷い人のなかでオメガはやっぱり少数になるが、その発情期の傾向はさまざまらしい。数カ月で来る者もいれば、何年も発情期が来なかった者もいるようだ。
なるべく遅いといいなぁ。これから働く場所も見つけないといけないし、心の準備がまだまだできていない。
「その前に仕事見つけたいなって……」
「まだ来たばっかりなのに偉いな~。メグムはもうボン・ワーク行った?」
「今日このあと行こうと思ってます」
“ボン・ワーク”は仕事を紹介してくれる場所で、日本のハローワークとか派遣会社みたいな感じだ。支給された生活費で数か月は生活できそうなものの、先の不安は早めに潰しておきたかった。
アルバイトしかしたことがないからかなり不安……僕でもできる仕事が見つかるといいなぁ。ボン・ワークへはキリトも誘ったけど、まだいいと言われてしまった。
こちらの世界でも学校はあって、ほとんどの人が十八歳で修了する。成人も十八歳。飛び級制度もあって、聞いた感じだと日本よりも柔軟で高度な教育を行っているように思える。
僕は十九歳だからもちろん働かなければならない。もし専門的な勉強をしたければ、そのためのお金を稼がなければならないのだ。
オメガ同士は結束力が強く、僕のように口下手でも仲間として扱ってくれる。筋肉が格好いいダナとその友人で小柄なブリギッドは、僕が近くにいると必ず話しかけてくれた。
「昨日リアンくん見かけちゃった。美男子って見てるだけで目の保養になるわぁ」
「わかる……!旦那に聞いたんだけど、そろそろニュイ・ドリームに登録するらしいよ」
「うそ!?そっか十八になったのか……え、やば。番いなかったら抱いてもらえるかもってことじゃん」
「言っちゃいけないとはいえ、どんな感じだったか聞きたいね~!」
よく人々の口に乗る『リアンくん』というのは、キリトの講師で僕も一度見かけた美丈夫のアルファのことだ。父親が“異世界転移研究所”の所長で、自身も研究員として勤めている。
学校も飛び級で卒業した頭の良さと、家もお金持ちだということで、パートナーのいるオメガにとっても気になる、高嶺の花のような存在だ。
そして……“ニュイ・ドリーム”というオメガ専用施設がある。
そこは番のいない発情期のオメガが過ごす施設で、希望すれば十八歳以上の登録したアルファが割り当てられ、抱いてもらうこともできる。
もちろん利用しなくてもいいのだが、ニュイ・ドリームはスパ・スポール同様にオメガにとって過ごしやすく安全な施設となっているので人気だ。
ニュイ・ドリームでもアルファには厳しい水準が適用され、問題のある行動をすれば登録は解除となる。
希望するオメガに当てがわれるアルファは施設側がランダムに決定するが、相手が誰だったのかはお互い他人に漏らしてはいけないというルールがある。そういった面はビジネスライクだ。
しかしニュイ・ドリームでの出会いがきっかけで恋に落ち、番になるカップルもいるらしい。
鮮やかな赤髪の女性であるブリギッドは、実際そこで今の旦那さんと出会ったようだ。旦那さんは異世界転移研究所の職員だから、リアンの話にも詳しいのだろう。
「メグムは歳も近いし可能性あるよね!あ、でも彼氏いるんだっけ」
「う、うん……でも、僕はあのリアンって人、苦手かも」
「もう会ったの?結構冷たいって言われてるよね~。歯に衣着せないっていうか……」
どんな基準で選別されるのかは知らないけど、あんなにもずけずけ言う人がニュイ・ドリームに登録できるんだろうか?
それに、発情期のオメガの相手を……って、だめだ。こちらでは発情期関連の話がタブーではないとしても、他人の性事情について考えることには慣れなくて抵抗がある。
今さらだけど、発情期という動物的な現象が自分の身に起こるなんてことも……いくらオメガに優しい世界とはいえ、自分がどうなってしまうのか分からなくてけっこう怖い。
「ほらほら、困ってるじゃないですか。メグムくんにはまだ早いと思いますよ」
「ターザはやけにメグムに優しいじゃない?あー、ごめんごめん。それで迷い人の発情期って、すぐ来ないんだっけ?」
ターザはインストラクターなだけあって、迷い人に関する知識も勉強しているみたいだ。
年に一人は必ず来るという迷い人のなかでオメガはやっぱり少数になるが、その発情期の傾向はさまざまらしい。数カ月で来る者もいれば、何年も発情期が来なかった者もいるようだ。
なるべく遅いといいなぁ。これから働く場所も見つけないといけないし、心の準備がまだまだできていない。
「その前に仕事見つけたいなって……」
「まだ来たばっかりなのに偉いな~。メグムはもうボン・ワーク行った?」
「今日このあと行こうと思ってます」
“ボン・ワーク”は仕事を紹介してくれる場所で、日本のハローワークとか派遣会社みたいな感じだ。支給された生活費で数か月は生活できそうなものの、先の不安は早めに潰しておきたかった。
アルバイトしかしたことがないからかなり不安……僕でもできる仕事が見つかるといいなぁ。ボン・ワークへはキリトも誘ったけど、まだいいと言われてしまった。
こちらの世界でも学校はあって、ほとんどの人が十八歳で修了する。成人も十八歳。飛び級制度もあって、聞いた感じだと日本よりも柔軟で高度な教育を行っているように思える。
僕は十九歳だからもちろん働かなければならない。もし専門的な勉強をしたければ、そのためのお金を稼がなければならないのだ。
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