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番外編

初夜って、いまさら 中

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 顔を起こしてやっと状況を把握した。例の夜着を身につけた僕は膝を立て大きく開脚していて、その間にセレスがいる。そして……僕の股間に顔をうずめていた。
 にゅくにゅくとぬめったものが後孔から入り込み、入り口を広げ、濡らす。捲りあげられたドレスで隠れてよく見えないけど、きっとこれは、セレスの……舌だ。
 
「だめ、ねぇっ、せ、せれす……ひゃぁん!」
 
 そんなとこ、たとえ浄化してたって舐める場所じゃない。しかし弱い否定の言葉は無視され、セレスの長い舌が僕を拓いていく。はち切れんばかりになっている陰茎を片手で握りこまれ、上下に扱かれる。
 
 ただでさえ気持ちいいのに、その倒錯的な光景にくらりと目眩がした。スカートが上がっているせいで、よく見えるのだ。透けるストッキングと、それを留めるガーターベルトが。
 女物じゃないかと思うほど小さな下穿きは、膝辺りに引っかかっている。女装趣味はないはずなのに、興奮して、身体が高まっていく。

「あっ、だめ。いく……いっちゃう~~~っっ!」
 
 射精の快感が身体を走り抜け、舌をきゅうっと締めつける。精液はきっと、夜着にかかってしまった。
 はぁはぁ、荒い息をつきながら放心していると、やっとセレスが起き上がった。
 
 こっちはこんな格好なのに、セレスは黒いシルクのパジャマ姿だ。まだ乱れてもいないのが悔しい。やっぱり黒が似合うなぁ……じゃなくて。不公平だ!
 理不尽な文句を頭に浮かべていた僕は、視線を合わせてきたセレスが幸せそうに目を細めて放った一言に撃沈した。

「ウェスタ……かわいい。俺の奥さん」
「っ…………好き」

 お気に召したってこと? セレスに可愛いと言ってもらえるなら、ふわふわもスケスケも、僕は何度だって着てしまうだろう。くそぅ。
 抱き起こしてもらって間近で見つめ合う。ランプの光を反射して、アメシストが優しく煌めいた。手を繋いで、ゆっくりと……唇を重ねる。そのまま、いつも通りに……なんてさせるはずがない。

 夫夫ふうふ生活を円満に保つ秘訣のひとつは、夜の営みを飽きさせないことだ。と、酔っ払ったクリュメさんに今日教えてもらった。ほんとあの人、涼しげな見た目に反してお酒を飲んだときのキャラが違いすぎない?
 僕は反省した。いつもこんな風に序盤からふにゃふにゃに蕩かされて、セレスのされるがままになってしまう。僕だってセレスのを舐めたりするけど、それはごくごく短時間で、我慢のできなくなったセレスに形勢逆転されるのだ。

 あの日を思い出すんだ! 僕の流れるようなリードに翻弄されていたセレス。すぐ達してしまいそうになるのを我慢していて可愛かった。
 
 キスをしながら、セレスの硬くなったペニスを取り出して軽く扱いた。にちゅにちゅ、先端からあふれる先走りを塗り込める。
 「んっ、」と聞こえる声に勇気をもらって、僕は向かい合わせに座った状態からセレスの肩に手を置き腰を上げた。
 
 膝まで下りてきたドレスに隠れてしまったけど、サイズだけは可愛くない屹立の先端に、僕の蕾がキスをした。香油は使ってないものの、セレスの唾液でそこはしとどに濡れている。お互いのぬめりを利用して、僕は腰をゆっくりと落としていった。

「セレス、僕の旦那さん……あっ」

 夫夫に奥さんも旦那さんもないと思うのだが、その響きが甘くてどきどきする。挿れてもらうのと自ら挿れるのとでは何かが違って、セレスを見下ろしながら、僕は少しだけ優位な気持ちになる。……ねぇ、いつもより大きくない?
 先端が孔を通り抜けるときに感じる、ぞわぞわとする快感と少しの苦しさ。腰が引けそうになるのを我慢しつつ飲み込んでいく。

「くぅッ。ウェスタ……」
「あっ、あ、んん~っ……はぁっ。せれす、きもちいね……」

 なんとか行けるところまで飲み込んで、息をつく。自分の中にセレスの一部が納まっていることが、こんなにも嬉しくて愛おしいなんて、初めて肌を合わせたときには知らなかった感情だ。
 一度達したおかげで僕のほうが余裕もあるはず。そう自分に言い聞かせて、上下に律動を開始した。

 香油じゃないぶん摩擦がいつもより大きくて、動きはちょっと鈍い。けれどお互いの体液だけで繋がっているというのは……なんか……滾った。お腹の中がいつも以上に熱い。
 だんだん、気持ちよさに頭がぼうっとしてくる。自分の良いところにセレスの昂ぶりを擦りつけて、力を抜くだけで奥まで突かれるのがたまらなかった。

 僕がキスをねだると、胸元で揺れるペンダントを見ていたセレスが応えてくれる。舌を甘く吸われた瞬間、夜着の上から乳首をキュッとつままれた。

「んひゃッ、あぁ! ~~~~~!!」

 内腔が震え、快感が背筋をつたって脳天まで突き抜ける。脚が脱力したことで奥にドン! と亀頭が叩きつけられ、もう一度全身が震えた。
 射精はしていない。けれど甘く達した身体はさらに敏感になり、キュンキュンと中の雄を締めつけて刺激を求めている。ふわふわのギャザーに包まれた薄い胸をやわく揉まれて、高い嬌声が寝室に響く。
 息をつく間も与えられず、セレスが下から突き上げ始めた。

「あっ、まって……あ! っはぁ! ぁあん!」
「むり、待たない」
 
 押し出されるように大きな声がでてしまって、こんなの屋敷中に響いてるんじゃないかという考えが一瞬頭をよぎる。けれど声にして出さないと、この身体中に渦巻く快感が溢れてどうにかなりそうだ。
 腰の動きに合わせて、お尻が跳ねる。大きな手で胸を覆われて、乳嘴がシルクに擦れる。セレスの首に必死でしがみついた。そうじゃないと、どこかへ飛んでいってしまいそう。

 きもちよすぎて涙が零れる。セレスが動きを止めて低いうめき声を出したとき、お腹の奥にじわっと熱が広がった。それを塗り込めるように何度かゆさゆさと揺らされ、素直な媚肉は子種を絞りとるように収縮した。
 やっとのことで息を整えたとき、僕は思った。初夜って……こんな感じだっけ?




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