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昔話
しおりを挟む「王妃様とエディたんって昔からこんなカンジだったの?」
「そうねぇ。私の方が3つ年下だけど、いつも学校の宿題を代わりにやってあげてたわね」
「へぇ~、そうなんだ。
王妃様は子供の頃からシッカリしてたんだね~。
なんか面白いエピソードとかないの?」
「うーん、そうねぇ。
ハイティーンの頃かな、その頃はまだ男性化粧品なんてシェービングローションとかオーデコロンとか、せいぜい整髪剤くらしかなかったんだけどね、男もスキンケアする時代、なんて言われ始めてたんだよね」
「あ~なんか覚えてる。でもあの頃ってまだ『男が化粧なんて』って時代だったよね」
「エドワードって見た目だけは恐ろしく良かったし、自分の容姿に自信もあれば、まあ、言ってみれば自分の価値はそれくらいしか無いって思ってたフシもあるんだけどね。
ある日二人で街を歩いてたら、『男もパックする時代』みたいなポスターが貼ってあったの。
当時の人気役者がポーズを決めてね。
するとその前に立ち止まって真剣な顔でポスターを凝視して『俺もこういうのやった方がいいかな?』とか言うわけ」
「言いそうだよね」
「で、私、あんまり考えずに反射的に
『そんなくだらないことする暇あるなら、本の一冊でも読めば?!』
って言っちゃったの」
「キッツー!!」
「もう、その後エドワードはプンプン怒っちゃってさ~。大変だった」
シャルたんは声を出してヒャーヒャー笑った。
「普段から『俺は馬鹿だからさ~』
とか馬鹿であることに逃げる傾向にあって、それがなんか腹立ってたのよね。
で、
『馬鹿を自慢するな!』
って言ったら、その時も怒ってたな~」
「うん、エディたんって優しいけど努力が足りないとこあるよね」
シャルたんが楽しそうに笑っている。
「あ、そうそう。エディたんから聞いたことあるんだけど、バレンタインデーにも大喧嘩したんでしょ?」
「・・・そんなことあったっけ?
・・・ってアレかな?
バレンタインデーってのが丁度外国から流行って来てたんだよね、その頃。
でも、そんなの関係ないじゃない?」
「いや、そこは乗っときましょうよ、若者なら」
「それで、そのバレンタインデーだったらしい日の放課後、ちょっとデートしようって誘われて普通に街歩きして、何軒かお店覗いて、お茶飲んで、じゃあまたねって帰ろうとしたらなんか様子が変なのよ」
「いつサプライズがあるのか期待してたんじゃないんですか?」
「で、『どうしたんですか?』
って聞いても『別になんでもない』とか言うし、『あ、それじゃあまた』って帰ろうとしたら『ホントに何も無いの?信じられない』
とかブツブツ言ってんのよ」
「言うよね~エディたん。ブツブツ」
「で、私もなんかイラッて来て、
『なにかあるんですか?』
ってキツめに言ったのよ。
そしたら、
『あーお前はそういうヤツだよな?!俺はいつだってお前に心を弄ばれて』
とかなんとか、正確には覚えてないけど、いかに私が非道でエドワードが傷つけられてきたか、ってことを過去の事象まで引き合いに出して罵倒し始めたわけ」
「エディたん王妃様から手作りチョコが貰えると思ってワクワクしてたんだってよ」
「そんなこと知らないし、そんな行事はそれまでなかったのよ。
それなのに急に不機嫌になって、こっちは意味わからないわけよ。
で、『俺は昨日からバレンタインデーが楽しみで楽しみで眠れなかったのに』って目に涙溜めて地団駄踏んで怒るのよ?」
「可愛いじゃん」
「いや、これが未来の王かと思うとホラーだったわよ」
「それで、たかがチョコレートでそんなに怒るのか?って頭に来たからすぐ側にあった食料品店に入って『宇宙万象チョコ』をガサッと4,5枚掴んで買って来て、まだベンチでグズグズ言ってたエドワードに投げつけて帰った」
「怖いっ!」
シャルたんはヴィクトリアに酷いといいながらも笑っている。
「アレ子供が買う安っすいヤツじゃん!流行ったんだよね。ステッカー入っててね。
シャルたんちは貧乏だったから弟達になかなか買ってあげられなかったけど」
「まあ、私もエドワードが相手だと、少々強く出ても許して貰えるって甘えがあったんでしょうね。
次の日謝ろうと思って会いにいったら、
『5個の内3個にスーパープレミアムステッカーが入ってたぞ!
すごいなヴィクトリア!!
やっぱり俺はどうやったってお前には勝てないなっ!』
ってニコニコしてんのよ」
「そういう人だよね」
温かい日差しの中で二人は笑いながら話をした。
「なんか見た目エディたんなのに中身が王妃様なの変な感じするね」
「シャルたんも他人のことより、いい加減その馬鹿みたいな喋り方止めなさいよね。何歳なのよ」
「シャルたんは永遠の14歳でっす!」
「殴るよ」
「や~ん。魔女が虐めるぅ~。だって、
『なるべく馬鹿っぽく、常識外れな可愛さ』
ってオーダーだったんだもん!」
「・・・オーダーって、シャルたんはカスタマイズされた馬鹿だったの?」
「ひっど~っ!
でも、もう2年半もシャルたんやってるから急にはやめらんないよぉ~」
「馬鹿が板について剥がせなくなった?」
「ひっど~!
でも、ホントにそんな感じ。元の自分がどんなだったか分かんない」
「変わってる人ぶっている内に本当に変な人になっちゃうみたいな?」
「いたいた!学校にいた。
『私って変わってるから~』
って極々平凡なのに変わってるアピールしてる内に本物の変人になったヤツいた!」
「じゃあ、シャルたんも本物の馬鹿になっちゃった?」
「ひっど~ぃ!でも、なんかペルソナ崩壊してきてるかも~」
春の庭園で語らう二人は傍目には仲睦まじい恋人同士のように見えただろう。
「ねえ、ホントに行っちゃうの?」
ヴィクトリアは微笑んで静かに頷く。
「ねえ、私達、もう友達だよね?
王妃様のことヴッキーたんって呼んでもいい?」
「ダメ」
「ぶーーだ」
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