王と王妃の泥仕合

猫枕

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シャルたんの真実①

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 「じゃ、私は王の仕事に行くとするか。
 アナタはここでちゃんと書類を片付けといてね」

「おっ、おいっ!ちゃんと引き継ぎしろよ!」

 

 仕方なくヴィクトリアの仕事を片付けたエドワードはヴィクトリアの部屋に帰るしかなかった。


「ヴッキー様、大丈夫でした?」


 四人の侍女が取り囲んで次々とヴィクトリアを心配する声をかけてくる。


「大丈夫って?」

「陛下に何かされたんじゃないかと心配で」

 何かされたのは俺の方だよ。


「でも、なんか腹が立ちますわよね。
 今まで散々ヴッキー様のことないがしろにしてあの脳みそ綿あめ女とイチャイチャしていたくせに、今更ヴッキー様に接近してきてどういうつもりなんですかね」

「そうですよ。美しいヴッキー様ならいくらでも他に良い相手が見つかるんですから、さっさと解放してくださればいいのに」

「あれじゃないですか?大切にしないくせに他人に取られるのは嫌!みたいな」

「子供っぽいですもんね」

「見ました?陛下ときたら、 運動会の時、満足そうに鉛筆の束を握りしめてニヤニヤしてらしたんですよ~」


 侍女達は口々に、子供か、ガキか、とエドワードの悪口を言う。

 酷い言われようだ。


「え?え~、そうかな~?

 なんかちょっと可愛くない?」

 エドワードは頑張って笑顔を作って自分を擁護してみるが、なんだか泣きそうな気分になる。


 これから一週間自分の悪口に同意を求められるのか・・・・メンタル持つかな・・・。





 
 翌日、議会に提出されたエドワードとヴィクトリアの離婚が承認された。

 寝耳に水のエドワードが王の執務室に飛び込んできた。

「どういうことだ?!」

「どうもこうも」

 至って冷静なヴィクトリアは人払いをしてエドワードと対峙した。


「離婚って、・・・離婚って、俺は承認してないぞ」

「あら、ヴィクトリア王妃の直筆のサインと印章、それにのサインと印章が揃った正式な書類が受理されましてよ」


「・・・なんでだ?なんでだよ?
 今まで仲良くやって来たじゃないか!!
 なんで今離婚なんだよ?!」

 ヴィクトリアは何も答えない。

「・・・そんなに俺が憎いのか?
 財産分与も無しって、俺からは何も貰いたくないってことか?

 ・・・あっ、もしかして、このまま入れ替わったままなのか?

 そうなのか?そうだろう?

 お前は俺を財産も無く追い出すつもりなんだろう?!

 そこまで俺を嫌っていたのか?」

 エドワード王ヴィクトリアは鬱陶しそうな顔をして、警備兵を呼んだ。

「王妃を連れていきなさい。
 そして王妃がこの部屋に近づくことを禁じる」

 ヴィクトリアエドワードは、

「申し訳ありませんが従っていただきます」

 と頭を下げる警備兵に連れ出されて行った。

 フラフラとしながら部屋に戻ると、侍女たちが楽しそうに『祝・離婚~新しい門出に乾杯!~ティーパーティー』の準備をしていた。






 エドワード王ヴィクトリアができうる限りの仕事に道筋をつけようと奮闘していると、シャルたんがノックもせずに飛び込んできた。

「こらこら、いくらシャルたんでもダメだよ」

「エディたん!離婚って!離婚ってどういうこと?!」

 シャルたんは王の注意など聞きもしないで息せき切って詰め寄ってきた。


「ああ、あの性悪女とは縁を切ったから、これからは愛するシャルたんとずっと一緒にいられるよ」

 エドワード王ヴィクトリアはニッコリ笑った。

「今まで待たせてゴメンネ。
 素敵な結婚式を挙げよう」


 シャルたんは強張った顔で言った。



「・・・エディたんじゃ無い・・・。

 ・・・・誰?」


 戦いは場外へと持ち込まれるもよう。





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