8 / 38
8 テレンスがおかしい
しおりを挟む
すぐにまた返事が来た。
メグはよく読みもしないで、
「返事よろしく」
と渡してきた。
~僕達が固定観念とか既存の価値観なんかに縛られてるのは否めないよね。
「子供は自由」なんてこと言う人がいるけどさ、僕はそうとも思わないんだ。
子供の方がよっぽど凝り固まって融通が効かないって面もあるんじゃないかな?
もっともその融通の効かなさってのは大人たちから刷り込まれた常識とか慣習によるものが大半なんだろうけどね。
僕は子供の頃に規則を破ったり、他人と違うことをして皆から非難される、なんてことがよくあったから逆恨みみたいなとこもあるんだけどね~
『?そんなことあったかしら?』
~すごく天気の良い日に青空に浮かぶ雲を見ていたら『外で弁当食べたら旨いだろうな~』って思ってさ、学校抜け出して一人ピクニックしたことがあるんだ。
そしたら学校じゃ僕が行方不明だって大騒ぎになってさ。
まあ、今考えれば迷惑かけたって思うけど、当時の僕は
『こんな良い日に教室で勉強してるヤツは馬鹿だろう』
って気分でさ、だけどクラスの奴らに極悪人みたいにメチャクチャ責められてさ。
一人くらい
『僕も誘えよ』
って言ってくれるヤツがいたっていいと思わない?
「ちゃんとサボらず学校で机に向かってるのが正しい」
って、それはそうなんだろうけど、全員が全員同じ考えてってのもなんかちょっとな・・・って。
まあ、悪いのは僕なんだけど~
『そんなことあった?
・・・聞いたこともないけど。
・・・あー、あれか。女の子に悪ぶりたいとか、いわゆる武勇伝的な・・それにしちゃちょっと悪ぶり方が・・・ウケる』
~なんかくだらないこと書いちゃったね。
文化財保護のことに関しては僕もちょっと思うところがあるんだ。
というのも先日うちの学校に転校生が来たんだ。
すごく優秀なヤツなんだけど、彼はヴェートス民族の血統なんだ。
君も知っているだろうけど、僕たちの祖先は先住民族のヴェートス族を征服・服従させて今の国家を樹立した歴史があるよね。
その後彼らに対する二級市民扱いは法律で禁止されて表面上は平等ってことになったけど、今なお根強いヴェートス民族への差別がある。
だから僕らの学校の中にはヴェートスが入って来ることに不快感を持ってるヤツもいて、陰湿な嫌がらせをするのもいるんだ。
僕らの学校の名前はリバティなのにさ、看板に偽り有りだよ~
『えー?率先してイジメそうなのに、テレンス』
~それでさ、一方ではヴェートスの残した遺跡やら墳墓の副葬品なんかを文化遺産として保護して、国立博物館なんかに陳列しておいてさ、そのくせ差別は放置しているって現状に僕は憤りを感じるわけ。
君はどう思う?
こんな手紙、つまんないかもしれないけど良かったら是非また返事をください。
それから、できればこれからは改まった書き方じゃなくて、もっと友達に話すみたいに書いてくれると嬉しいな~
『???テレンス?』
「え~?私はヴェートス民族となんか仲良くしたくないわ」
テレンスの手紙の内容についてかいつまんで報告すると、メグは顔を顰めて言った。
「どうして?」
「どうしてって、私達とは違う種類の人達でしょ?」
「そうかな?」
「そうよ。だってあの人たち多神教徒なんだよ?
太陽とか蛇が神様とかどうかしてる。
そのうち電気の神様とかガスの神様まで作るんじゃない?」
「信教の自由は法律で保障されてるわよ」
「バカね。神が私達を創り給うたの!神様作ってどうすんのよ?」
『その私達の神様も人間が作ったんだと思うけどな』
「・・・自分と違う考え方とか生き方とかしてる人の話とか聞いてみたいと思わない?」
「興味無~い」
「・・・アンタが好きなドングリ餅って元はヴェートスの伝統食だよ」
「・・・それは、我が国の菓子職人が洗練されたお菓子に完成させたんだから、全然別物よ!」
「・・・じゃあ、テリー様のお手紙には全く興味が持てません、って返事していいの?」
「ダメにきまってるでしょう?」
メグは適当に良い感じに返事しといてと無責任なことを言う。
「ねぇメグ。テリー様からの今までの手紙、もう一度見せてくれる?」
「なんで?」
「・・・今までの流れを忘れちゃったから整合性をとるために」
フーン、といってメグは翌日手紙を持ってきて、
「ちゃんと返してよね」
と渡してきた。
ラナは一通目から並べて凝視したが、途中で筆跡が変わっているということはなかったし、誰かが筆跡を真似たようなぎこちなさもなかった。
ラナはこれが全てテレンス本人が書いたものだと認めざるを得なかったが、益々わけが分からなくなった。
メグはよく読みもしないで、
「返事よろしく」
と渡してきた。
~僕達が固定観念とか既存の価値観なんかに縛られてるのは否めないよね。
「子供は自由」なんてこと言う人がいるけどさ、僕はそうとも思わないんだ。
子供の方がよっぽど凝り固まって融通が効かないって面もあるんじゃないかな?
もっともその融通の効かなさってのは大人たちから刷り込まれた常識とか慣習によるものが大半なんだろうけどね。
僕は子供の頃に規則を破ったり、他人と違うことをして皆から非難される、なんてことがよくあったから逆恨みみたいなとこもあるんだけどね~
『?そんなことあったかしら?』
~すごく天気の良い日に青空に浮かぶ雲を見ていたら『外で弁当食べたら旨いだろうな~』って思ってさ、学校抜け出して一人ピクニックしたことがあるんだ。
そしたら学校じゃ僕が行方不明だって大騒ぎになってさ。
まあ、今考えれば迷惑かけたって思うけど、当時の僕は
『こんな良い日に教室で勉強してるヤツは馬鹿だろう』
って気分でさ、だけどクラスの奴らに極悪人みたいにメチャクチャ責められてさ。
一人くらい
『僕も誘えよ』
って言ってくれるヤツがいたっていいと思わない?
「ちゃんとサボらず学校で机に向かってるのが正しい」
って、それはそうなんだろうけど、全員が全員同じ考えてってのもなんかちょっとな・・・って。
まあ、悪いのは僕なんだけど~
『そんなことあった?
・・・聞いたこともないけど。
・・・あー、あれか。女の子に悪ぶりたいとか、いわゆる武勇伝的な・・それにしちゃちょっと悪ぶり方が・・・ウケる』
~なんかくだらないこと書いちゃったね。
文化財保護のことに関しては僕もちょっと思うところがあるんだ。
というのも先日うちの学校に転校生が来たんだ。
すごく優秀なヤツなんだけど、彼はヴェートス民族の血統なんだ。
君も知っているだろうけど、僕たちの祖先は先住民族のヴェートス族を征服・服従させて今の国家を樹立した歴史があるよね。
その後彼らに対する二級市民扱いは法律で禁止されて表面上は平等ってことになったけど、今なお根強いヴェートス民族への差別がある。
だから僕らの学校の中にはヴェートスが入って来ることに不快感を持ってるヤツもいて、陰湿な嫌がらせをするのもいるんだ。
僕らの学校の名前はリバティなのにさ、看板に偽り有りだよ~
『えー?率先してイジメそうなのに、テレンス』
~それでさ、一方ではヴェートスの残した遺跡やら墳墓の副葬品なんかを文化遺産として保護して、国立博物館なんかに陳列しておいてさ、そのくせ差別は放置しているって現状に僕は憤りを感じるわけ。
君はどう思う?
こんな手紙、つまんないかもしれないけど良かったら是非また返事をください。
それから、できればこれからは改まった書き方じゃなくて、もっと友達に話すみたいに書いてくれると嬉しいな~
『???テレンス?』
「え~?私はヴェートス民族となんか仲良くしたくないわ」
テレンスの手紙の内容についてかいつまんで報告すると、メグは顔を顰めて言った。
「どうして?」
「どうしてって、私達とは違う種類の人達でしょ?」
「そうかな?」
「そうよ。だってあの人たち多神教徒なんだよ?
太陽とか蛇が神様とかどうかしてる。
そのうち電気の神様とかガスの神様まで作るんじゃない?」
「信教の自由は法律で保障されてるわよ」
「バカね。神が私達を創り給うたの!神様作ってどうすんのよ?」
『その私達の神様も人間が作ったんだと思うけどな』
「・・・自分と違う考え方とか生き方とかしてる人の話とか聞いてみたいと思わない?」
「興味無~い」
「・・・アンタが好きなドングリ餅って元はヴェートスの伝統食だよ」
「・・・それは、我が国の菓子職人が洗練されたお菓子に完成させたんだから、全然別物よ!」
「・・・じゃあ、テリー様のお手紙には全く興味が持てません、って返事していいの?」
「ダメにきまってるでしょう?」
メグは適当に良い感じに返事しといてと無責任なことを言う。
「ねぇメグ。テリー様からの今までの手紙、もう一度見せてくれる?」
「なんで?」
「・・・今までの流れを忘れちゃったから整合性をとるために」
フーン、といってメグは翌日手紙を持ってきて、
「ちゃんと返してよね」
と渡してきた。
ラナは一通目から並べて凝視したが、途中で筆跡が変わっているということはなかったし、誰かが筆跡を真似たようなぎこちなさもなかった。
ラナはこれが全てテレンス本人が書いたものだと認めざるを得なかったが、益々わけが分からなくなった。
20
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
変装して本を読んでいたら、婚約者さまにナンパされました。髪を染めただけなのに気がつかない浮気男からは、がっつり慰謝料をせしめてやりますわ!
石河 翠
恋愛
完璧な婚約者となかなか仲良くなれないパメラ。機嫌が悪い、怒っていると誤解されがちだが、それもすべて慣れない淑女教育のせい。
ストレス解消のために下町に出かけた彼女は、そこでなぜかいないはずの婚約者に出会い、あまつさえナンパされてしまう。まさか、相手が自分の婚約者だと気づいていない?
それならばと、パメラは定期的に婚約者と下町でデートをしてやろうと企む。相手の浮気による有責で婚約を破棄し、がっぽり違約金をもらって独身生活を謳歌するために。
パメラの婚約者はパメラのことを疑うどころか、会うたびに愛をささやいてきて……。
堅苦しいことは苦手な元気いっぱいのヒロインと、ヒロインのことが大好きなちょっと腹黒なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(作品ID261939)をお借りしています。
最悪なお見合いと、執念の再会
当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。
しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。
それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。
相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。
最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。
王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。
みゅー
恋愛
王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。
いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。
聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。
王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。
ちょっと切ないお話です。
【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる