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しおりを挟む卒業式で最優秀学生賞にミリアムが輝くことはなかった。
続く5人に与えられる優秀学生賞ももらえなかった。
ミリアムは総合で7位だった。
つくづく自分らしいとミリアムは苦笑いした。
両親は7位だなんて素晴らしいじゃないかと喜んでいる。
ミリアムも小説を書きながらの7位なんだから、と言い訳してみる。
まあ、いつだってこんなもんだ。
卒業式から遡ること数日前、ロベルトから贈られたドレスを前にしてミリアムは口あんぐりだった。
それは地味女ミリアムにとってはハードルの高い代物だった。
上質で光沢のあるロイヤルブルーの生地は良いとしよう。問題はフォルムだ。
袖の無いタイプでコンプレックスの肩が完全に出る。
更にそれどころじゃないのが、スレンダーラインのドレスに腿まで見える深いスリットが入っている。
普段の、といっても良くは知らないロベルトのイメージと結びつかないドレスの形状に困惑するミリアムだった。
やっぱり当日は腹痛を起こして欠席にしよう、そう思っていたところに母親が入って来た。
「あらステキじゃない!・・・この子
ミリアムのこと良く分かってるじゃないの」
そして箱に同封されていたロベルトからの髪型やメイク、アクセサリーに至るまで細かい指示が書かれた指南書をホウホウなるほどと言いながら面白そうに読んでいた。
そしてパーティー当日、朝からミリアムを磨き上げたのは家のメイドではなく、母がコネを使って調達してきたプロのエステティシャンとヘア&メイクアップアーティストだった。
ミリアムの顔は時間をかけて入念に下地づくりから行われた。
一切の飾りをつけてはいけないとロベルトからお達しのあった髪は、普段から艶やかで美しいのだが、特別なシャンプー・トリートメントを施されコテでこれ以上なく真っ直ぐに整えられ仕上げのオイルで眩しいくらいに輝いていた。
髪に飾りがなくドレスもシンプルな形状のためネックレスは派手で豪華なものとなった。
これもロベルトの指示で、適当なものが無い場合はプラント家で用意すると書かれていたが、母ナタリーが父ナサニエルに昔プレゼントされたものを借りることにした。
かつてナサニエルはナタリーの気を引く為に古王国時代の遺跡から発掘された女王の首飾りのレプリカを作らせたのだが、
「こんなの どこに着けていくのよ」
の一言と共に永遠に箪笥の迷宮に埋没させられていたのが、このほど日の目を見ることとなった次第である。
かくして古王国時代の女王よろしく ただでさえハッキリしたミリアムのちょっと吊り気味の目にしっかりと黒いアイラインが入れられ、大きめの薄い唇に真っ赤な口紅が引かれた丁度その頃ロベルトが花束を持って迎えに来た。
一瞬言葉を失くしてミリアムを見つめたロベルトは、
「・・・思った通りだ・・・・」
と言った。
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