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しおりを挟む「もうすぐ卒業じゃない?」
編集のカイルがミリアムの原稿にOKを出した後、世間話ついでにそう言った。
「そうなんですよ。卒業したら 今まで断っていた仕事も始めようかと思ってるんですけど」
「いいね、期待してるよ。
ところで卒業って言えば卒業パーティーじゃない?誰と行くの?」
「パーティーは欠席しようと思って。
卒業式だけ出ればいいかなって」
「え?一生に一度の青春の思い出よ?」
「・・・パートナーいないし。
友達は皆 婚約者いるんですけど、私はいないし」
「ぶん殴っちゃったもんね」
「父は張り切って自分がエスコートするつもりなんですけど、卒業パーティーに父親と出るって何の罰ゲームですかって」
「ロイド伯爵イケオジじゃん」
「・・・イヤですよ。父の美しさと比べられて陰口叩かれるだけだから」
「じゃ、オレがエスコートしてやろうか?」
「・・・結構です」
卒業パーティーで好きな人とダンスを踊る。
この国の女の子なら誰だって憧れる青春の一頁だ。
夜会で踊る機会はその後もあるだろうが、卒業パーティーのダンスは人生に一度きり。
ミリアムを誘ってくれるような男の子はいない。
かといって元婚約者に罵倒されながらパーティーに参加している自分を想像すると我ながらあの婚約破棄はナイスだったと思わずにはいられない。
卒業を目前にして学校では皆浮き足立っていて、女の子たちの話題の中心は卒業パーティーで着るドレスやアクセサリーのことだ。
この時ばかりはエアーズの面々も楽しそうに盛り上がっている。
ミリアムのドレスはどんなの?という友達の質問を愛想笑いでかわしながら、つくづく華やかな場所に居場所の無い自分に溜め息が出る。
そんな友人たちの輪を一人離れたミリアムは図書館に向かう。
卒業したら もう入れなくなる。
お気に入りの画集の見納めをするつもりだ。
一人廊下を歩いていると、ふいに呼び止められる。
ロベルト・プラント侯爵令息だ。
文学青年らしく華奢で神経質そうな見た目だが、古代の神々の彫刻のように整った顔に少し伸びた金の前髪がかかる。
シャープな顎のラインが羨ましい。
「?」
「あの・・・・君は卒業パーティーのパートナーは決まっているだろうか?」
「パーティーには行かないつもりなので」
「どうして?」
「・・・華やかな場所は苦手なんです」
「・・・・もし良かったら私にエスコートさせてもらえないだろうか?」
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