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「・・・・という訳なんですよ」

 わたしが話し終わっても女将さんは黙ったままだった。

 こりゃ完全に引かれたかな。

「で、それでですね」

 女将さんが何も言わないので続けて話す。

「まあ、もしかしたら、ていうかその可能性の方が高いとは思うんですけど、私が完全に屋敷から姿を消しても誰も探さないんじゃないかなぁ~なんて。やっぱ、マズイかなあ」

 またも黙る女将さん。

「あとはバレるとしたら洗濯ですよね。
 洗濯も自分でやるからってことにして、月曜日に食材受け取るときにわざとらしく元気な顔見せて労いの言葉でもかけてやれば、日曜日の早朝に屋敷に戻って洗濯とか掃除やって、月曜日の朝に抜け出してくる。
 一週間不在でもバレないんじゃない?」

 あれー?女将さん涙出てる?

「・・・・で、夜遅くに帰るのも怖いし疲れるから、裏の休憩室で寝泊まりしてもいいですか?」

 女将さんが涙をぬぐい鼻をかんだ。

「私のアパートで暮らせばいいよ。
このすぐ近くだからさ。
 お貴族様のお屋敷のようにはいかないだろうがさ、必要な物は揃ってるし風呂は無いけどシャワーは浴びれるしね
 洗濯は自分でやるのが面倒だったら通りの先に洗濯屋があるから、あそこで頼めばいいよ」

女将さんがお茶を淹れ替えてくれて一服する。

「おかしいな、とは思ってたんだよ。 

あんたが毎週持ってくる食材。

その辺じゃ手に入らない高級品ばかりだろ。

 チーズもバターもベーコンも。
それにワインにお菓子だろ。

どっかから盗んで来てるんじゃなくて良かったよ」

 女将さん、私をなんだと思ってたんですか?!

「いくらバイト代払うって言っても受けとらないし。

 ああ、今度は仕事としてやるんだから、ちゃんと給料受けとるんだよ」




 
 こうして私はレインボーの雇われ女将となった。



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