学園モブ日記

座右の銘について考える

「アレ書いた？『座右の銘を書いて提出しろ』ってやつ」

「やってない」

「なんなんあれ？」

「今学期の目標、的なヤツだろ？」

「あれか、短冊みたいのに書かせて教室の後ろの壁にでも貼るのか？高校にもなって」

「小学生みたいだな」

「座右の銘って何？」

「人生の目標的なヤツだろ？」

「四字熟語なの？好きな四字熟語書けばいいの？」

「好きな四字熟語なんて別にないけどな」

「超特価、とか好きだな」

「四字熟語じゃないじゃん」

「泰然自若、とかそんなヤツ？」

「なんか爺さんみたいだな」

「逆にキライなのなら思いつく」

「何？」

「『連帯責任』」

「俺もそれ嫌い！」

「俺らモブは一度や二度ならず、これの餌食にされてきたんじゃない？」

「全国のモブが禿同するよ」

「問題起こした当の本人はシレッとしてんだよな」

「この前もさ、メル◯リに彼女のウ◯コ出品して停学になった奴いたじゃん？
　なんで何もしてない俺らが極寒の体育館に集められて長時間説教されなきゃなんないの？」

「やった本人は学校来てないのにな」

「通学のバスの中で騒ぐ奴らのせいで学校に文句来て、怒られるのも何故か俺等だし」

「自転車通学だっつーの」

「先生も言い易い相手選んでるよな？」

「じゃ、どういうのなら良いの？座右の銘」

「『有言実行』とかじゃ？無難なとこだと」

「ヤバいって！『有言実行』なんて本気でやったら俺今までに何人も殺してるよ」

「だよな～。虐げられたモブはブツブツと聞こえないように「殺してやる」とか言いながら理不尽に耐えるんだもんな～」

「『初心忘るべからず』とか？」

「『光陰矢の如し』とか？」

「それって格言じゃないの？」

　ここでお得意の検索。

「『就活に役立つ座右の銘』就活で座右の銘聞かれんだ」

「どれどれ、受けが良いのは企業方針に合った座右の銘。
　『雨垂れ石を穿つ』などが好まれる。
　絶対ヤダ！」

「ちょ、それおかしくない？」

「自分の生き方の指針なんよね？それを企業カラーに合わせるの？」

「向こうだってそんなの真剣に聞いてないだろ？」

「じゃ、なんで聞くのさ？」

「コイツがどれだけうちの会社に入りたがっているか、コイツを入れたらどれくらい言う事聞くか探ってんだろ？」

「じゃ、そこで『我が道を行く』です。とか言ったら？」

「落ちるね。速攻落ちる」

「俺が面接官だったら、『石の上にも三年でっす！！』とか言うヤツは間違いなく落とすわ。一緒に働ける気がしないもん」

「結果出すのを悠長に三年も待ってらんないんですわ～ってか？パワハラ～！」

「僕は『座右の銘は？』なんて馬鹿なこと聞く会社には入りたくないな」

「就職は置いといて、座右の銘、何書けばいいの？」

「『自己中心』とか」

「『我田引水』とか」

「『外題学問』とか」

「それは流石に教師は怒るだろう」

　結局学校に楯突く勇気も無いモブ共は、『一期一会』とか『初志貫徹』とか『継続は力なり』とか、無難な言葉を書いて提出した。

　それがモブ達の座右の銘なのかと言われれば決してそうではないのだけれど。


　1週間後、帰りのHRで担任は機嫌が悪かった。

「お前ら、座右の銘、まだ提出してない者がクラスの半分以上だ！！

　今から数学のプリントを配る！

　全員がプリントと座右の銘を提出する迄居残りだ。

　帰らせねぇぞ。


　これは連帯責任だ！！」