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モブだって恋したい
しおりを挟む「恋ってどこから来るのでしょうか」
「は?」
「いや、だから恋ってどんな風に訪れるのかな・・・って」
「なんだよ訪れるって。俺、日常会話で訪れるなんて発音したこと無いわ」
「だってさぁ。カップルとか結構いるじゃん」
「いるねぇ」
「あの人達はどうやってカップルになったわけ?そしてどうして俺はカップルになれないわけ?」
「そりゃまあ色々だけどさ、告ったり告られたり、が一番多いんじゃね?」
「そこんところが解せねぇんだよ」
「なにが?」
「例えばさ、俺が女子Aを好きになるとするよね」
「うん」
「でも、同時に女子Aも俺に好意を持ってくれる確率ってかなり低いと思うんだよ」
「まあ、部活とか委員会が一緒だったりしてさ、よく喋ってて、お互い良いな~なんて思ってて、なんてのなら有りかもだけど」
「一目惚れだったりしたら、好きどころか俺の存在すら知らなかったりするだろ?」
「オマエ一目惚れしたの?」
「たとえ話だよ」
「で、どうやって恋が始まるんだ?」
「俺に聞かれてもなあ」
「皆、『私も丁度アナタのこと好きかもって思ってたの』『じゃあ付き合おう!』『そうしましょう!』ってなるの?
それにしちゃ偶然同時期にお互いを好きになる人多すぎじゃない?」
「いやあ、まあ、実際は告られた時に付き合ってる人がいなかったら『とりあえず付き合ってみるか』的にokするってパターン多数な気がする」
「じゃ、何?特に好きでもないけどとりあえず付き合うってこと?」
「まあ、そこら辺のハードルは人それぞれだろうけどさ。絶対ムリって相手じゃなきゃとりあえずokって人もいるんじゃ?」
「逆に『あの人じゃなきゃダメ』って人とさ、2つに大別できるんじゃ?」
「あとは全く恋愛に興味無い、もしくは面倒くさいとかむしろ嫌悪してるとか、他に目標があって恋愛どころじゃない、とかじゃない?断るパターンは」
「じゃあ、なに?大まかなセーフゾーンに入ってれば俺にも彼女をこさえることができるってこと?」
「こさえるとか言うなよ」
「なに?こさえるって」
「拵える、の方言だろ?昔ばなしで婆さんがおむすび作る時とかに言うじゃん」
「オマエ物知りだな」
「おむすびってオニギリとどう違うの?」
「知らんけどさ、昔ばなしは『おむすび』の方がしっくりこねぇ?」
「確かにー。『オニギリころりん』とは言わないよな」
「おむすび+すっとんとん、は絶妙な音感を醸してるけどさー」
「オニギリは、すっとんとん、じゃねぇよなー」
「じゃ、何?」
「うーん。ゴーロゴロ・・・とか?」
「そもそもオニギリは『ころりん』じゃねぇ気がする」
「オニギリの話はもういいって!」
「あーハイハイ。オニギリくらい手軽に彼女をこさえたいって話ね?」
「そんなことは言ってないだろう」
若干険悪なムードになったモブ達の所へ救世主ムカシがボォーっと現れて、
「コレ、よかったら」
とハイチュウの袋を置いて行った。
俺グレープ、俺はイチゴ味、青リンゴは入ってないの?などとムカシのお陰で場が和んだところで、
「逆の立場で考えてみろよ」
「何が?」
「オマエが女子に告白されたとする。
別に今まで何の意識もしてなかった相手だ。
どう思う?」
「・・・どう・・・って、相手によるかな」
「極々普通の」
「俺等を女子にしたみたいな?」
「悲しぃー」
「・・・まあ、告白されたことは嬉しいかな・・・」
「だろ?」
「OKするかどうかは置いといて」
「置かれるのかよ」
「好意を示されれば、よっぽど嫌いな相手じゃなきゃ嬉しいのよ。普通の人間は」
「そうかもー」
「で、オマエならどうする?なんてことない普通の女子から『付き合ってください』って言われたら」
「・・・とりあえず友達になろう、て言うかな」
「ほら!ほらほらほら!」
「え?」
「『君のこと良く知らないから付き合うとかムリ!』とか言わないだろ?」
「ま、まあな」
「なんで?」
「だって、・・・可哀想じゃん。勇気出して告白したのにさ」
「ねっ?」
「告白するのも勇気要るけど、断るってのもなかなかハードル高いわけよ」
「確かにー」
「で、なんでオマエさっき『友達』とか言っちゃったわけ?」
「まあ、友達として仲良くしてみて、好きだと思えたら付き合うのも有りかなーなんて」
「な?オマエは既に少女Aを好きになり始めている」
「え?そうなのっ??」
「今まで何とも思っていなかった相手が自分に好意を寄せていると知った瞬間、なんとなく自分もその人が好きなような気がしてくる」
「・・・そんな気する」
「わかる気がするわ」
「さ、催眠術みたいだな」
「そうよ。催眠術よ」
「で、なるべく断るのに罪悪感を持つような気の優しい相手を選んで告ればいいってわけですね?師匠」
「おーよ」
「・・・オマエ数年後にはトップセールスマンとかなってそうだな」
「怪しい宗教の教祖になって逮捕されてそうだな」
「・・・中島さんとか?」
「中島?」
「あの人、よく役員とか押し付けられてるじゃん。断れないタイプなんじゃ?」
「見た目も成績も、性格とかは分かんないけど、だいたい中道行ってるじゃん」
「そうだよ、オマエ中島に告白しろ」
「えっ?なんで?」
「彼女優しいからきっと断れないよ」
「い、いやぁ、そんな理由で彼女になってもらうとか・・・」
「なぁ」
そこで催眠術師モブが彼女欲しいモブの肩に手を置いた。
「素直な気持ちで自分の心に聞いてみるんだ」
「?」
「オマエの心には既に中島さんが存在しているはずだ」
「??」
「ついさっきまでは考えもしなかった彼女の姿がオマエの脳内に像を結んでいるだろう?」
「・・・そうかも・・・」
「意識するまいと思えば思うほど、彼女のことが気になって仕方なくなるだろう?」
「・・・そうかも・・・」
「それが恋だ」
「・・・これが、・・・・恋?」
1週間後、放課後の廊下で。
恋がしたいモブに中島さんが近づいて来た。
「あのさ」
モブに話掛けてきた中島さんの眉間に若干縦じわが寄っている。
「アンタ達さ、陰で私のこと
『おむすび』
って呼んでんでしょ?
なんのつもりか知らないけど、バカにするのいい加減にしてくれない?
ホンっと不快なんだけど!」
中島さんはモブに弁解の機会を与えることなくプリプリしながら去って行った。
果たしてモブに恋は訪れるのだろうか。
(つづく・・・のか?)
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