学園モブ日記

猫枕

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男子脱毛問題

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「今どき男子のムダ毛処理はエチケットなんだぜ?」

「あー、なんか時々聞くけど皆やってんの?」

「この前女子が、

『コンビニで~、コーヒーのカップ渡してきた彼ピの指に毛が生えててぇ~、蛙化~』

 とか言ってたぞ」

「俺も体育祭の練習の時とか恥ずかしいから足は脱毛してるよ」

「え?剃ってんの?」

「クリーム。ってかオマエは処理してないの?」

「俺は毛薄いから」

 どれどれ。

「ホントだ。スベスベじゃんか」

 羨ましい~。

「スリスリすんなよー。気色悪い」

「かつては毛がモジャモジャしてたほうが男らしいって時代もあったらしいのにな」

「胸毛とか今じゃキモいって言われるみたいだよ」

「メンズ脱毛エステとかも流行ってるしな」

「VIO脱毛とかって聞くけどさ、あれってどういうこと?」

「そういうことだろ?」

「・・・さすがに若くて綺麗なお姉さんに肛門をさらすのは・・・」

「オバサンの方がいいのか?」

「緊張して屁が出たらどうすんだよ」

「将来介護される事態を想定して処理している、とかテレビでタレントが言ってたよ」

 マジか、とスマホを操作するモブ。

「2024年最新版のアンケート結果によると35%の男性がvio 脱毛してるってマジかよ」

「脱毛してる男性のうちの35%の間違いじゃなくて?」

「いや、なんかそれ『皆やってんですよ~?やらない貴方はヤバいですよ~』っていう一種の誘導なんじゃね?」

「VIO脱毛したら修学旅行でヒーローになれるかもしれんぞ」

「危険な賭けだな」

「全校中に毛無しが晒されて女子から

『アンタ、つるっつるなんだって?』

 って笑われる未来しか見えん」

「まあ、vioは置いとくとして、ヒゲは永久脱毛できたら便利だよな」

「オマエ肌荒れ凄いもんな」

「電動だと毛が巻き込まれて痛いし、カミソリだとまけるしで最悪なんよ」

「よく体験500円ポッキリとかあるじゃん」

「ああいうのは行ったら最期、高額コースを契約するまで帰らせてもらえないんだよ」

 どっかで聞いてきたようなことを言うモブ。

「俺等の場合まだ親の承諾が要るから体験自体、断られるんじゃね?」

「・・・俺、行ったことあるよ。
 お試し体験」

 えっ!?

「兄ちゃんがさ、通ってて、そんでお友達紹介的な1回無料の券もらって行った」

「どうだった?」

「・・・ヒゲ脱毛やってもらったんだけどさ、俺の場合は毛質が硬めで毛量から言っても完全に無くすには2年以上かかるって」

「2年?!」

「なんかターンオーバーってのがあって、今表に出てる毛を処理しても下に予備軍がいるから、それが出てくるんだって。
 それで2ヶ月に1回くらいの割合で照射するから2年以上はかかるかな、って言われた」

「・・・気が遠くなるな」  

「で?どうだったの?」

「・・・意識不明になった」

「「「「「!!!」」」」」

「どゆこと?」

「いや、なんか、最初、『麻酔しますか?』って言われて、『いや、いいです』って言っちゃったのよ。
 そうしたらもう、信じらんないくらい痛くて」

 モブ共の表情が恐怖に歪む。

「どう痛いの?」

「なんかね、強力なゴムを思いっきし引っ張ってバチーン!!みたいな」

 震えるモブ。

「痛っーーー!!って叫んだら、
 『麻酔しましょう』って」

「注射?」

「いや、笑気ガスみたいの吸わされて」

「で?」

「途中の記憶が無い」

 こわ~っ。

「ハッて気がついたら施術が終わりに近づいてたんだけど、ここが何処なのか自分が誰なのか分かんないんだよね」

「「「「「・・・・・・・」」」」」

「そんで、走馬灯?っての?徐々に今までの人生を思い出してきて」

 その走馬灯って逆回りなんじゃん?

「あー!なんて俺は幸せなんだ!って」

「「「「「????」」」」」

「俺はこうやって生きてて、高校生で、親がいて毎日ご飯食べれて、好きなアニメキャラのファンミーティングに行けて、優しい兄に脱毛に連れて来てもらえてる人生なんだ!って」

「「「「「・・・・・・」」」」」

「あー!!生きてる!って思えたんだ!!!」




「解脱毛じゃねぇかよ!!」
 

(つづく)
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