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番外編 御厨夫人になりまして(温泉旅行編)
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「痛い。な、なにをするんですか!」
声を上げた瞬間に、部屋のふすまが開く。樹が来てくれたのか、と泉川に押し倒されたまま、そっちに視線を送ると、さっきの記者らしき男がカメラを構えて部屋に入ってくる。途端にいくつものフラッシュがたかれた。
「なっ……」
意味が分からなくて咄嗟に自分を押し倒している男を見上げると、彼はくつくつと笑いながら、男に声を掛けた。
「何枚か写真は撮ったんだろ? じゃあ先にこの子の手を縛ってくれる? もうちょっと口止めになりそうな写真撮っておきたいしさ……」
「ヤバくないのか? こんなことして……」
「まあ、調子に乗っている樹に、脅しになる写真、俺も欲しいしね。一度撮っておけば長い事有効に使えそうだし。例の噂話と一緒に莉乃亜ちゃんが淫乱って話も使えるしさ。ああ、内鍵閉めておいて。念のため邪魔が入らないように」
その話を聞いて、二人がグルだったことに気づき、怒りと不安の感情がカッとこみ上げてくる。
「冗談やめてください。樹さんはそんなくだらない噂話信じませんし、こんなことしたって貴方の言うことを素直に聞く人じゃないですからっ」
「さあ、それはどうかなあ。君もどこまでそうやっていきがっていられるかな。ほら、さっさとコイツの手を縛れよ」
無表情になってしまった岩崎に、泉川は莉乃亜の手を縛るように促した。男は慌てて莉乃亜の手を縛ろうとする。
「やだ、やめて。貴方もこんなことしたら、後でどうなるか知りませんよ?」
散々文句を言って睨み付けても男二人に抑え込まれて、手を縛られて、逃げ出すことは叶わない。動けないように体を抑え込まれた状態で、泉川は莉乃亜のブラウスのボタンをはずしはじる。危機感を感じて、莉乃亜は必死に足をばたつかせた。
「うるさいなあ。とりあえず抑え込んでおくから、この格好で写真撮っておけよ」
体を抑え込まれ、胸元は完全にブラウスのボタンが外されて、大きく肌蹴られて、ブラ一枚のような状態になっている。カシャカシャと男は無言のまま、泉川に言われたまま、写真を撮り始めた。
「ってか、意外と胸あるね。肌が白くて触り心地もいいし、男を落すにはいい武器かもね」
つぅっと指先で胸元を撫でられて、怖気が走る。
人の自由を奪っておきながら、相手の気持ちを一切考えず、目じりをだらしなく下げて、にやつく男が許しがたい。あの顔をひっぱたいて、綺麗に整えられた髪もぐちゃぐちゃにして、「こいつは変態です」って紙を貼りつけて写真を撮って全世界に公表してやりたい、怒りの感情で頭がおかしくなりそうだった。
「せっかくだから、まずはバストトップまで全部露出させて写真撮って置こうか。正真正銘、外に出せない奴ね。まあ後で、下も剥いて、もっとまずい写真もばっちり撮って欲しいんだけどさ」
くくっと笑って、ブラに手を伸ばしてずらそうとする。それをよけようと必死で体を左右に捩じって逃げようとする。
「変態、いい加減にしなさいよっ」
さらに動ける範囲で足を蹴り上げて抵抗した。
「大人しくしてたらいい思いさせてあげるって言っているのにねえ。手間を余計に掛けさせる、というのなら、手っ取り早く黙らせようか……」
泉川が手を上げて、ニヤニヤ笑いを張り付けたまま、平手を振り上げる。顔を叩かれる、と思って莉乃亜が身構えたその時。
カチャリ、という鍵のまわる音がして、泉川がはっと顔を上げる。それと同時に、扉が開いた。
「莉乃亜! 大丈夫か!!」
そこに立っていたのは、今度こそ莉乃亜が望んでいた通り樹で、周りにいたガタイの良い男たちが駆け込み、即座に莉乃亜に覆いかぶさっていた泉川と、カメラを構えていた岩崎を確保する。どうやらそろいの和服を着ているところを見ると、店の人間らしい。
「樹……さん。良かった来てくれて……」
瞬間張り詰めていた気持ちが溶けて、よくわからない感情がこみ上げてきて、涙が盛り上がってくる。
「莉乃亜……すまない。怪我は?」
樹は布団に駆け寄ると、痛々しい恰好になっている莉乃亜を咄嗟に抱きかかえると、自分のジャケットを脱いで彼女の肌を隠して抱き寄せた。莉乃亜は彼の胸に顔を押し付けて、顔を左右に振って、小さく「大丈夫です」と答える。彼の香りのする腕の中で、ぽろぽろと零れ落ちる涙が止まることがなくて。
「なんで……ここにいるとわかったんだ?」
真っ青になって辺りを見渡す泉川に、樹は低く冷たい声を発する。
「本当にお前は愚かだな。前回のことは泉川の伯父、伯母のために無難に収めたつもりだったんだが……。今回のことはさすがに寛恕できない。今度こそ……覚悟するんだな」
莉乃亜は樹の声を聞いているうちに、ようやく危機から脱したことを実感し、ほっとするあまり力が抜けて樹にしがみつく。代りに涙は徐々に収まり、彼に抱きしめられながら、震える指でなんとか胸元のボタンを直し、スカートの裾を整えて、身なりを整えると、深くため息を吐いた。
声を上げた瞬間に、部屋のふすまが開く。樹が来てくれたのか、と泉川に押し倒されたまま、そっちに視線を送ると、さっきの記者らしき男がカメラを構えて部屋に入ってくる。途端にいくつものフラッシュがたかれた。
「なっ……」
意味が分からなくて咄嗟に自分を押し倒している男を見上げると、彼はくつくつと笑いながら、男に声を掛けた。
「何枚か写真は撮ったんだろ? じゃあ先にこの子の手を縛ってくれる? もうちょっと口止めになりそうな写真撮っておきたいしさ……」
「ヤバくないのか? こんなことして……」
「まあ、調子に乗っている樹に、脅しになる写真、俺も欲しいしね。一度撮っておけば長い事有効に使えそうだし。例の噂話と一緒に莉乃亜ちゃんが淫乱って話も使えるしさ。ああ、内鍵閉めておいて。念のため邪魔が入らないように」
その話を聞いて、二人がグルだったことに気づき、怒りと不安の感情がカッとこみ上げてくる。
「冗談やめてください。樹さんはそんなくだらない噂話信じませんし、こんなことしたって貴方の言うことを素直に聞く人じゃないですからっ」
「さあ、それはどうかなあ。君もどこまでそうやっていきがっていられるかな。ほら、さっさとコイツの手を縛れよ」
無表情になってしまった岩崎に、泉川は莉乃亜の手を縛るように促した。男は慌てて莉乃亜の手を縛ろうとする。
「やだ、やめて。貴方もこんなことしたら、後でどうなるか知りませんよ?」
散々文句を言って睨み付けても男二人に抑え込まれて、手を縛られて、逃げ出すことは叶わない。動けないように体を抑え込まれた状態で、泉川は莉乃亜のブラウスのボタンをはずしはじる。危機感を感じて、莉乃亜は必死に足をばたつかせた。
「うるさいなあ。とりあえず抑え込んでおくから、この格好で写真撮っておけよ」
体を抑え込まれ、胸元は完全にブラウスのボタンが外されて、大きく肌蹴られて、ブラ一枚のような状態になっている。カシャカシャと男は無言のまま、泉川に言われたまま、写真を撮り始めた。
「ってか、意外と胸あるね。肌が白くて触り心地もいいし、男を落すにはいい武器かもね」
つぅっと指先で胸元を撫でられて、怖気が走る。
人の自由を奪っておきながら、相手の気持ちを一切考えず、目じりをだらしなく下げて、にやつく男が許しがたい。あの顔をひっぱたいて、綺麗に整えられた髪もぐちゃぐちゃにして、「こいつは変態です」って紙を貼りつけて写真を撮って全世界に公表してやりたい、怒りの感情で頭がおかしくなりそうだった。
「せっかくだから、まずはバストトップまで全部露出させて写真撮って置こうか。正真正銘、外に出せない奴ね。まあ後で、下も剥いて、もっとまずい写真もばっちり撮って欲しいんだけどさ」
くくっと笑って、ブラに手を伸ばしてずらそうとする。それをよけようと必死で体を左右に捩じって逃げようとする。
「変態、いい加減にしなさいよっ」
さらに動ける範囲で足を蹴り上げて抵抗した。
「大人しくしてたらいい思いさせてあげるって言っているのにねえ。手間を余計に掛けさせる、というのなら、手っ取り早く黙らせようか……」
泉川が手を上げて、ニヤニヤ笑いを張り付けたまま、平手を振り上げる。顔を叩かれる、と思って莉乃亜が身構えたその時。
カチャリ、という鍵のまわる音がして、泉川がはっと顔を上げる。それと同時に、扉が開いた。
「莉乃亜! 大丈夫か!!」
そこに立っていたのは、今度こそ莉乃亜が望んでいた通り樹で、周りにいたガタイの良い男たちが駆け込み、即座に莉乃亜に覆いかぶさっていた泉川と、カメラを構えていた岩崎を確保する。どうやらそろいの和服を着ているところを見ると、店の人間らしい。
「樹……さん。良かった来てくれて……」
瞬間張り詰めていた気持ちが溶けて、よくわからない感情がこみ上げてきて、涙が盛り上がってくる。
「莉乃亜……すまない。怪我は?」
樹は布団に駆け寄ると、痛々しい恰好になっている莉乃亜を咄嗟に抱きかかえると、自分のジャケットを脱いで彼女の肌を隠して抱き寄せた。莉乃亜は彼の胸に顔を押し付けて、顔を左右に振って、小さく「大丈夫です」と答える。彼の香りのする腕の中で、ぽろぽろと零れ落ちる涙が止まることがなくて。
「なんで……ここにいるとわかったんだ?」
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「本当にお前は愚かだな。前回のことは泉川の伯父、伯母のために無難に収めたつもりだったんだが……。今回のことはさすがに寛恕できない。今度こそ……覚悟するんだな」
莉乃亜は樹の声を聞いているうちに、ようやく危機から脱したことを実感し、ほっとするあまり力が抜けて樹にしがみつく。代りに涙は徐々に収まり、彼に抱きしめられながら、震える指でなんとか胸元のボタンを直し、スカートの裾を整えて、身なりを整えると、深くため息を吐いた。
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