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狐と鳥と聖夜を……
【20】
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暁月は神社の周りで物の怪の姿のままうろつくのを嫌う。だから、慈英は真夜中でも戻ってくるときは人の姿になる。
男に意趣返ししてやった事がよかったのか。
綺麗に成仏したあの姑獲鳥の姿を瞳に焼き付けて、それで納得すべきだったのか、とも思う。
ただ、あの時の自分の気持ちは、どうしてもその男に意趣返しをしなければ、報われないような気がしていた。
でも、きっとそれは自分だけの自己満足に他ならなかったのだ。
どうしようもない虚しさに、酷く落ち込んだ気持ちで、慈英は家に戻ってきた。
「……何で起きてるん?」
玄関を抜けると、何故か和室で暁月がこたつにあたっている。
普段は、夜の9時過ぎには寝てしまって、朝5時には起きる暁月が、こんな真夜中に起きているのは、年越しの時ぐらいだけだ。
しかも、なにやら机の上に広げてそれを食べている。
「なんや、帰ってきたんかい……」
暁月は、振り向きもせずにお茶を啜る。
なんとなく、その背中に誘われるように、慈英は向かい合わせにこたつに足を突っ込んだ。
「……何、食べてるの?」
こたつの机の上には、紙で作られた大きなブーツと、そこからあふれるように零れ落ちる、子供が喜びそうな菓子がある。
「……慈英も食べよし……」
寝るときの寝巻に綿入り袢纏を羽織っている暁月から、慈英の広げた掌にチョコとアメが落とされる。
「クリスマスのお菓子? どうしたの、これ」
「……氏子さんにもろた……」
──お供えしてくれって、もう何がなんだかようわからんな。他所様の神様のお祝いのお菓子を、神社にお供えせぇっていうんやから……。
そう言いながら笑う暁月の顔はどこか楽しげだ。
「……で。気ぃすんだんか?」
ポツリとつぶやかれた言葉に、なにも言わずに慈英は菓子を噛みしめる。答える代わりに零れた言葉は。
「……元々八百万の神の国だった癖に、まるごと仏教を受け入れてしまって、八百万の神様までそこにそのまま組み込んだ国だからね。まあ何でもありなんじゃない? 必要があればキリスト教でも、イスラム教でも、ヒンズー教でも、それなりに受け入れて食い散らかすんだよ、この国は」
そう言いながら、言葉通り目の前の菓子を食い散らかしていく。
「それでも俺みたいなのはこの国にいるし、あんたみたいなのも居るんだよ……」
くすりとどこかおかしそうに慈英は笑って、
「何が正しいとか、何が間違っているとか、そんなん千年生きたってわからへんけどね」
そう言うと慈英は宙を見つめる仕草をする。
男に意趣返ししてやった事がよかったのか。
綺麗に成仏したあの姑獲鳥の姿を瞳に焼き付けて、それで納得すべきだったのか、とも思う。
ただ、あの時の自分の気持ちは、どうしてもその男に意趣返しをしなければ、報われないような気がしていた。
でも、きっとそれは自分だけの自己満足に他ならなかったのだ。
どうしようもない虚しさに、酷く落ち込んだ気持ちで、慈英は家に戻ってきた。
「……何で起きてるん?」
玄関を抜けると、何故か和室で暁月がこたつにあたっている。
普段は、夜の9時過ぎには寝てしまって、朝5時には起きる暁月が、こんな真夜中に起きているのは、年越しの時ぐらいだけだ。
しかも、なにやら机の上に広げてそれを食べている。
「なんや、帰ってきたんかい……」
暁月は、振り向きもせずにお茶を啜る。
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「……何、食べてるの?」
こたつの机の上には、紙で作られた大きなブーツと、そこからあふれるように零れ落ちる、子供が喜びそうな菓子がある。
「……慈英も食べよし……」
寝るときの寝巻に綿入り袢纏を羽織っている暁月から、慈英の広げた掌にチョコとアメが落とされる。
「クリスマスのお菓子? どうしたの、これ」
「……氏子さんにもろた……」
──お供えしてくれって、もう何がなんだかようわからんな。他所様の神様のお祝いのお菓子を、神社にお供えせぇっていうんやから……。
そう言いながら笑う暁月の顔はどこか楽しげだ。
「……で。気ぃすんだんか?」
ポツリとつぶやかれた言葉に、なにも言わずに慈英は菓子を噛みしめる。答える代わりに零れた言葉は。
「……元々八百万の神の国だった癖に、まるごと仏教を受け入れてしまって、八百万の神様までそこにそのまま組み込んだ国だからね。まあ何でもありなんじゃない? 必要があればキリスト教でも、イスラム教でも、ヒンズー教でも、それなりに受け入れて食い散らかすんだよ、この国は」
そう言いながら、言葉通り目の前の菓子を食い散らかしていく。
「それでも俺みたいなのはこの国にいるし、あんたみたいなのも居るんだよ……」
くすりとどこかおかしそうに慈英は笑って、
「何が正しいとか、何が間違っているとか、そんなん千年生きたってわからへんけどね」
そう言うと慈英は宙を見つめる仕草をする。
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