14 / 70
悪役令嬢が魔法少女?と思ったら何故かコロシアムに転送されて魔法少女同士でロワイアル?
14.蛇と蛙と蛞蝓と
しおりを挟む「あんた、謀ったわねっ!!」
レベッカの怒号が控室に響き渡った。その声に、先にいた2人がビクッと肩を震わせ、驚きの表情を浮かべている。
「謀ったも何も、決められていた通りのことでしてよ。ワタクシの手が入る余地はありませんわ」
「嘘をつけッ! 絶対こうなることをわかっていてってことよッ!」
「ああ。そのことならそうね。だってワタクシ、王立聖家ですし。それに、第5ピリオドの『華』担当ですもの」
すべてがすべて、マグライトの手の上で踊らされていた。ここに至るまでの道程の出来事すべてが、マグライトによって誘導させられていたということに憤りを感じていた。
「――相変わらず、性悪ね。わたしにも同じようなことをしていたもの、言い訳は聞かないわよ」
「二人して心外ですわ。サプライズのほうが驚くと思っていただけなのに」
遅れて扉を開けて入ってきたのは、――王立聖家5位のセル=M=シシカーダであった。大振りの剣を携えた麗人が、苛立った表情を浮かべながらマグライトを睨みつける。
「あなたがレベッカね。この女に目をつけられたなんて災難ね」
「まったくだわっ!」
アリーナに出れば、確実に敵対するはずのレベッカとセルが視線を交わす。お互いが、マグライトに出し抜かれたということだけで、謎の結束を交わそうとしていた。
「――うるさい。入口側で仲良しごっこしてるんじゃないわよ」
セルに続けて、最後の一人が入ってくる。その少女の顔を見て、
「げっ、なんであなたが!?」
マグライトが驚愕の声を上げた。
「彼女も緊急通達をもらっていたそうよ、マグライト。よかったじゃない、親戚同士仲良くしたらいいわ」
「冗談じゃない。こんな女狐と仲良くだなって反吐が出るわ」
マグライトに対して悪態をつきながら入室してきたのは、――メーガス家筆頭分家であるメリー=バックハイド=アーバンデーセツ。
黒を貴重としたドレスで、所々に白いフリルをあしらった、愛玩メイドのような出で立ちをしているが、マグライトの従姉妹にして、彼女が最も戦いたくない相手である。
「女狐とは仲良くしたくないけど、国王には感謝しているわ。まさか、公式でぶっ殺していいだなんて、まさに『マキナの神』の祝福だわ」
「い、イヤだわメリーちゃん。過ぎたことなのに、まだ根に持っているなんて」
「なんなら今殺してあげましょうか!?」
怒りの表情でメリーがマグライトの胸ぐらをつかむ。明らかに怨讐の念を抱えてことをレベッカが認識できるほどの態度に、
「ちょちょちょちょっと、流石に今はまずいでしょ」
思わず間に割って入る。
「『今』じゃなくてもよろしくなくってよ!」
「引っ込んでなさいクソ田舎娘! あたしにはこのチャンスしか無いのよ! 邪魔するなら貴様から殺すわよ!」
「まあ待ちなさい、メリー。レベッカの言う通り、今はダメよ。国王がこのカードを作った意味を考えれば、明らかに意図的だわ。わざわざこの三人を揃えるってことを考えなさい」
セルがメリーの肩を掴み、マグライトを掴んでいた腕を離させる。舌打ちをし、マグライトを睨みつけながら控室の奥へと歩みを進めた。
「やれやれ。まさかメリーまで組み込むだなんて、やはり国王は気が触れているのね」
「そこまでにしなさい、マグライト。わたしがメリーを止めたのは、わたしにもあなたを殴る権利があるからよ。勘違いしないことね」
「ナンて娘なの!? 裏切り者め!」
「あんたに裏切り者呼ばわりされる筋合いは無いわよ!」
三者の絶妙な関係性が浮き彫りになったところで、レベッカを含めたその他三人が置いてけぼりの空気になっていた。第5ピリオドが始まる前から、すでに精神をすり減らされ続けている。
――しばらくして、第4ピリオドの終焉を告げるラッパの音が鳴り響いた。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~
イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」
どごおおおぉっ!!
5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略)
ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。
…だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。
それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。
泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ…
旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは?
更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!?
ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか?
困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語!
※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください…
※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください…
※小説家になろう様でも掲載しております
※イラストは湶リク様に描いていただきました
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
そして乙女ゲームは始まらなかった
お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。
一体私は何をしたらいいのでしょうか?
【完結】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
殿下から婚約破棄されたけど痛くも痒くもなかった令嬢の話
ルジェ*
ファンタジー
婚約者である第二王子レオナルドの卒業記念パーティーで突然婚約破棄を突きつけられたレティシア・デ・シルエラ。同様に婚約破棄を告げられるレオナルドの側近達の婚約者達。皆唖然とする中、レオナルドは彼の隣に立つ平民ながらも稀有な魔法属性を持つセシリア・ビオレータにその場でプロポーズしてしまうが───
「は?ふざけんなよ。」
これは不運な彼女達が、レオナルド達に逆転勝利するお話。
********
「冒険がしたいので殿下とは結婚しません!」の元になった物です。メモの中で眠っていたのを見つけたのでこれも投稿します。R15は保険です。プロトタイプなので深掘りとか全くなくゆるゆる設定で雑に進んで行きます。ほぼ書きたいところだけ書いたような状態です。細かいことは気にしない方は宜しければ覗いてみてやってください!
*2023/11/22 ファンタジー1位…⁉︎皆様ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる