悪役令嬢が魔法少女?

まきえ

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悪役令嬢が魔法少女?と思ったら何故かコロシアムに転送されて魔法少女同士でロワイアル?

14.蛇と蛙と蛞蝓と

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「あんた、はかったわねっ!!」

 レベッカの怒号が控室に響き渡った。その声に、先にいた2人がビクッと肩を震わせ、驚きの表情を浮かべている。

「謀ったも何も、決められていた通りのことでしてよ。ワタクシの手が入る余地はありませんわ」
「嘘をつけッ! 絶対こうなることをわかっていてってことよッ!」

「ああ。そのことならそうね。だってワタクシ、王立聖家ですし。それに、第5ピリオドの『華』担当ですもの」

 すべてがすべて、マグライトの手の上で踊らされていた。ここに至るまでの道程の出来事すべてが、マグライトによって誘導させられていたということに憤りを感じていた。

「――相変わらず、性悪ね。わたしにも同じようなことをしていたもの、言い訳は聞かないわよ」

「二人して心外ですわ。サプライズのほうが驚くと思っていただけなのに」

 遅れて扉を開けて入ってきたのは、――王立聖家5位のセル=M=シシカーダであった。大振りの剣を携えた麗人が、苛立った表情を浮かべながらマグライトを睨みつける。

「あなたがレベッカね。この女に目をつけられたなんて災難ね」
「まったくだわっ!」

 アリーナに出れば、確実に敵対するはずのレベッカとセルが視線を交わす。お互いが、マグライトに出し抜かれたということだけで、謎の結束を交わそうとしていた。

「――うるさい。入口側で仲良しごっこしてるんじゃないわよ」

 セルに続けて、最後の一人が入ってくる。その少女の顔を見て、

「げっ、なんでが!?」

 マグライトが驚愕の声を上げた。

「彼女も緊急通達をもらっていたそうよ、マグライト。よかったじゃない、親戚同士仲良くしたらいいわ」
「冗談じゃない。こんな女狐と仲良くだなって反吐が出るわ」

 マグライトに対して悪態をつきながら入室してきたのは、――メーガス家筆頭分家であるメリー=バックハイド=アーバンデーセツ。

 黒を貴重としたドレスで、所々に白いフリルをあしらった、愛玩メイドのような出で立ちをしているが、マグライトの従姉妹にして、彼女が最も戦いたくない相手である。

「女狐とは仲良くしたくないけど、国王には感謝しているわ。まさか、公式でぶっ殺していいだなんて、まさに『マキナの神』の祝福だわ」
「い、イヤだわメリーちゃん。過ぎたことなのに、まだ根に持っているなんて」

「なんなら今殺してあげましょうか!?」

 怒りの表情でメリーがマグライトの胸ぐらをつかむ。明らかに怨讐の念を抱えてことをレベッカが認識できるほどの態度に、

「ちょちょちょちょっと、流石に今はまずいでしょ」

 思わず間に割って入る。

「『今』じゃなくてもよろしくなくってよ!」
「引っ込んでなさいクソ田舎娘! あたしにはこのチャンスしか無いのよ! 邪魔するなら貴様から殺すわよ!」
「まあ待ちなさい、メリー。レベッカの言う通り、今はダメよ。国王がこのカードを作った意味を考えれば、明らかに意図的だわ。わざわざこの三人を揃えるってことを考えなさい」

 セルがメリーの肩を掴み、マグライトを掴んでいた腕を離させる。舌打ちをし、マグライトを睨みつけながら控室の奥へと歩みを進めた。

「やれやれ。まさかメリーまで組み込むだなんて、やはり国王は気が触れているのね」
「そこまでにしなさい、マグライト。わたしがメリーを止めたのは、わたしにもがあるからよ。勘違いしないことね」
「ナンて娘なの!? 裏切り者め!」
「あんたに裏切り者呼ばわりされる筋合いは無いわよ!」

 三者の絶妙な関係性が浮き彫りになったところで、レベッカを含めたその他三人が置いてけぼりの空気になっていた。第5ピリオドが始まる前から、すでに精神をすり減らされ続けている。

 ――しばらくして、第4ピリオドの終焉を告げるラッパの音が鳴り響いた。
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