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『廃墟探検』
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BBQ 懐中電灯 エレベーター
題 廃墟探検
「――うわぁぁぁ!!」
「ちょ、ヤバいって早く帰ろう!!」
「来てる来てる!! 早く逃げて、早くっ!!」
「押すなって……きゃっ」
――五時間前。私たち四人はちょっとした田舎に遊びに来ていた。昼から川辺でバーベキューをして夕方になると年甲斐もなく手持ち花火をして遊んだ。夕方になると肝試しをするため少し移動することに、車を走らせて人通りのない畦道へ入る。
「なにあれ。うわっ廃墟じゃん」
「そ。肝試しに持って来いっしょ?」
路肩に駐車すると私たち四人は懐中電灯片手に進み始めた。スマホで録画しながらワイワイ進む。
「うっへ~、こっわ」
「写真撮ろ~ぜ、はいピース」
「床軋むんだけど」
いかにも廃墟って感じの廃墟。窓ガラスはところどころヒビが入っており割れているものもなかにはある。壁には蔦や植物が巻きついていて長年放置されていることがよく分かる。
二階へ上がろうとすると、一人がエレベーターらしきものを見つけた。
「これエレベーターだよな? なんか、怖くね?」
「確かに、というか。これだけすごい新しいというか、ここだけ新品みたいな」
床や壁、物などほとんどが埃を被り傷んでいるにもかかわらず、このエレベーターだけが埃を一切被っていないかつ傷んでもいない。おまけに、なぜかは分からないが乗ったら動き出しそうだ。
「と、とりあえずこの廃墟は三階まであるらしいしそこまで行ったら帰ろうぜ」
「そ、そうだね。早く行こう」
なぜか一人がエレベーターに足を踏み入れるた。するとおもむろに階層のボタンに手を伸ばす。
「ちょ何してんの危ないって」
「大丈夫、大丈夫。どうせ動かないから」
そう言いながら二階のボタンを押した。
カッカッカッ……ガガガ。
不気味な音ともにエレベーターのドアが閉まった。
突然のことに思考が止まる三人。正気を取り戻した一人が大声を出す。
「おい、ひろと! 大丈夫か! そっちいるよな?!」
……。
無言だけが帰って来た。
「わりぃ、俺二階上がってくる。お前らそこで待っててくれ」
「あ、うん。わかった」
「き、気を付けてね」
時刻は九時前。この季節はかなり暗いしあまり人も出歩かない時間帯だ。
「わ、私、ひろとに電話掛けてみるね」
「おっけ、流石に出るでしょ」
プルプル、プルプル。プルプル、プルプル。
……。十コール以上は鳴らしたが一向に出る気配がない。それに、そうまがひろとを探しに二階へ上がってからもう二十分が経過している。いくら何でも遅い不気味に思い、私はそうまに連絡を入れようと動画撮影を辞めようとした。その時だった。後ろからドタドタと足音が迫ってき咄嗟に振り返った。
「ってそうまじゃん。ひろと見つかった?」
私は軽口を叩くように訊いたが返ってきたのはものすごく焦ったような声だった。
「ヤバイ。ひろとどこにもいない、しかもエレベーターのドア二階も三階も開いてた」
「どうゆうこと? 二階にも三階にも行ってないって事?」
「もしかしたら、この閉まったドアの向こうにいるのかもしんない」
スマホを一旦ポケットに仕舞うと、そうまが左側を私たちが右側の扉を掴むとせーので力を入れた。
ギギギと音を立てながら少しずつ隙間が出来る。5センチほどの隙間が出来たところでそうまが懐中電灯で中を照らした。そこにはこちらを睨む人の目があった。びっくりし力が抜け開きかかっていたドアが一気にガンッと閉じた。
「……ひろとふざけないでよ、もぉ~。せっかく開きかかってたのに閉まっちゃったじゃん」
私は再び扉に手を伸ばそうとする。なぜかそうまに止めらた。首を傾げながら蒼磨を見ると顔面蒼白でカタカタと身体を揺らしている。どうしたのかと矢継ぎ早に聞いた。
「……い、今の……そうまじゃ、ない……」
「はぁ? そうまこの中に入ったじゃん。そうま以外にいないでしょ」
「……いや、そうまってさ鼻の横に目立つほくろが付いてて、さっきには…………なかった」
その言葉を聞いて思わず全身の鳥肌が立った。ぶるっと身体を震わせわなわなしながらもう一度訊く。
「ほ、本気で言ってる? 暗くてよく見えなかっただけとか……」
「あいつのほくろは鼻のすぐ横にあるんだよ。お前らも知ってるだろ、あの距離で見えないはずがないんだよ……」
「…………に、逃げよう」
「かおり? だけどまだひろとが……」
「このままここに居るほうが怖いもん、車まで戻ってひろとにメッセージだけ入れて待とうよ」
かおりの手が震えていた。本当はひろとを探したい、だけどやはりさっきのもあり怖い。
そうまを先頭にこの廃墟を後にした。外に出ると辺りはすっかり夜中で数メートル先が全く見えない状況になっている。懐中電灯無しでは歩けないほどに。車に戻りエンジンを掛けると、ハイビームで廃墟を照らした。これでひろとが出て来たときにすぐ分かる。
私は一度動画撮影を終えるとひろとに電話を掛けた。と、三コール目で出た。
『ひろと~さっきなんで出なかったのよ、早くして車で待ってるから』
『…………ぁ、が、ぁぅ……』
『なんて? もうちょっと大きな声で言ってよ』
『…………に……』
『だから、もっとおっきな声で――』
「逃げろ!!」
耳元で叫ばれた。スマホからでは無い。隣からだ。横を見るといつの間に戻ってきていたのかひろとが車の横にいた。特に何も思わずドアを開けようとする。
急発進により私の身体は大きく前へ波打った。
「ちょ、何すんのよ!」
「逃げるんだよ! ここはやばい、ガチでヤバイ」
「は? 今ひろといたじゃん。なんで乗せないのよ!」
「お前今のがひろとだって言うのか? バカ言え、あいつはさっき……ってうわぁぁぁ!!」
「何やってんの早く戻ってよ!」
目の前に人が現れた。曲がり角を曲がってすぐ現れたため急には止まれずそのまま跳ね飛ばしてしまった。だけど私はそんなことはお構いなしに早く戻れと言う。
「お、おい……今の…………ひろと」
「は?」
訳の分からないそうまの言いにますます頭がこんがらがる。
「ひろとならまだ廃墟でしょ、どうやって私たちより早く下りれるのよ」
「だから、さっきの廃墟にいたのはひろとじゃないんだって、今引き飛ばしたのはひろとなんだよ!」
その言葉を後切りに会話は途絶えた。
――数日後あるニュースが報道された。内容は、四人で肝試しに来ていたところ他の三人が失踪した、と。警察は捜索隊とともに山の中を捜索していると……
題 廃墟探検
「――うわぁぁぁ!!」
「ちょ、ヤバいって早く帰ろう!!」
「来てる来てる!! 早く逃げて、早くっ!!」
「押すなって……きゃっ」
――五時間前。私たち四人はちょっとした田舎に遊びに来ていた。昼から川辺でバーベキューをして夕方になると年甲斐もなく手持ち花火をして遊んだ。夕方になると肝試しをするため少し移動することに、車を走らせて人通りのない畦道へ入る。
「なにあれ。うわっ廃墟じゃん」
「そ。肝試しに持って来いっしょ?」
路肩に駐車すると私たち四人は懐中電灯片手に進み始めた。スマホで録画しながらワイワイ進む。
「うっへ~、こっわ」
「写真撮ろ~ぜ、はいピース」
「床軋むんだけど」
いかにも廃墟って感じの廃墟。窓ガラスはところどころヒビが入っており割れているものもなかにはある。壁には蔦や植物が巻きついていて長年放置されていることがよく分かる。
二階へ上がろうとすると、一人がエレベーターらしきものを見つけた。
「これエレベーターだよな? なんか、怖くね?」
「確かに、というか。これだけすごい新しいというか、ここだけ新品みたいな」
床や壁、物などほとんどが埃を被り傷んでいるにもかかわらず、このエレベーターだけが埃を一切被っていないかつ傷んでもいない。おまけに、なぜかは分からないが乗ったら動き出しそうだ。
「と、とりあえずこの廃墟は三階まであるらしいしそこまで行ったら帰ろうぜ」
「そ、そうだね。早く行こう」
なぜか一人がエレベーターに足を踏み入れるた。するとおもむろに階層のボタンに手を伸ばす。
「ちょ何してんの危ないって」
「大丈夫、大丈夫。どうせ動かないから」
そう言いながら二階のボタンを押した。
カッカッカッ……ガガガ。
不気味な音ともにエレベーターのドアが閉まった。
突然のことに思考が止まる三人。正気を取り戻した一人が大声を出す。
「おい、ひろと! 大丈夫か! そっちいるよな?!」
……。
無言だけが帰って来た。
「わりぃ、俺二階上がってくる。お前らそこで待っててくれ」
「あ、うん。わかった」
「き、気を付けてね」
時刻は九時前。この季節はかなり暗いしあまり人も出歩かない時間帯だ。
「わ、私、ひろとに電話掛けてみるね」
「おっけ、流石に出るでしょ」
プルプル、プルプル。プルプル、プルプル。
……。十コール以上は鳴らしたが一向に出る気配がない。それに、そうまがひろとを探しに二階へ上がってからもう二十分が経過している。いくら何でも遅い不気味に思い、私はそうまに連絡を入れようと動画撮影を辞めようとした。その時だった。後ろからドタドタと足音が迫ってき咄嗟に振り返った。
「ってそうまじゃん。ひろと見つかった?」
私は軽口を叩くように訊いたが返ってきたのはものすごく焦ったような声だった。
「ヤバイ。ひろとどこにもいない、しかもエレベーターのドア二階も三階も開いてた」
「どうゆうこと? 二階にも三階にも行ってないって事?」
「もしかしたら、この閉まったドアの向こうにいるのかもしんない」
スマホを一旦ポケットに仕舞うと、そうまが左側を私たちが右側の扉を掴むとせーので力を入れた。
ギギギと音を立てながら少しずつ隙間が出来る。5センチほどの隙間が出来たところでそうまが懐中電灯で中を照らした。そこにはこちらを睨む人の目があった。びっくりし力が抜け開きかかっていたドアが一気にガンッと閉じた。
「……ひろとふざけないでよ、もぉ~。せっかく開きかかってたのに閉まっちゃったじゃん」
私は再び扉に手を伸ばそうとする。なぜかそうまに止めらた。首を傾げながら蒼磨を見ると顔面蒼白でカタカタと身体を揺らしている。どうしたのかと矢継ぎ早に聞いた。
「……い、今の……そうまじゃ、ない……」
「はぁ? そうまこの中に入ったじゃん。そうま以外にいないでしょ」
「……いや、そうまってさ鼻の横に目立つほくろが付いてて、さっきには…………なかった」
その言葉を聞いて思わず全身の鳥肌が立った。ぶるっと身体を震わせわなわなしながらもう一度訊く。
「ほ、本気で言ってる? 暗くてよく見えなかっただけとか……」
「あいつのほくろは鼻のすぐ横にあるんだよ。お前らも知ってるだろ、あの距離で見えないはずがないんだよ……」
「…………に、逃げよう」
「かおり? だけどまだひろとが……」
「このままここに居るほうが怖いもん、車まで戻ってひろとにメッセージだけ入れて待とうよ」
かおりの手が震えていた。本当はひろとを探したい、だけどやはりさっきのもあり怖い。
そうまを先頭にこの廃墟を後にした。外に出ると辺りはすっかり夜中で数メートル先が全く見えない状況になっている。懐中電灯無しでは歩けないほどに。車に戻りエンジンを掛けると、ハイビームで廃墟を照らした。これでひろとが出て来たときにすぐ分かる。
私は一度動画撮影を終えるとひろとに電話を掛けた。と、三コール目で出た。
『ひろと~さっきなんで出なかったのよ、早くして車で待ってるから』
『…………ぁ、が、ぁぅ……』
『なんて? もうちょっと大きな声で言ってよ』
『…………に……』
『だから、もっとおっきな声で――』
「逃げろ!!」
耳元で叫ばれた。スマホからでは無い。隣からだ。横を見るといつの間に戻ってきていたのかひろとが車の横にいた。特に何も思わずドアを開けようとする。
急発進により私の身体は大きく前へ波打った。
「ちょ、何すんのよ!」
「逃げるんだよ! ここはやばい、ガチでヤバイ」
「は? 今ひろといたじゃん。なんで乗せないのよ!」
「お前今のがひろとだって言うのか? バカ言え、あいつはさっき……ってうわぁぁぁ!!」
「何やってんの早く戻ってよ!」
目の前に人が現れた。曲がり角を曲がってすぐ現れたため急には止まれずそのまま跳ね飛ばしてしまった。だけど私はそんなことはお構いなしに早く戻れと言う。
「お、おい……今の…………ひろと」
「は?」
訳の分からないそうまの言いにますます頭がこんがらがる。
「ひろとならまだ廃墟でしょ、どうやって私たちより早く下りれるのよ」
「だから、さっきの廃墟にいたのはひろとじゃないんだって、今引き飛ばしたのはひろとなんだよ!」
その言葉を後切りに会話は途絶えた。
――数日後あるニュースが報道された。内容は、四人で肝試しに来ていたところ他の三人が失踪した、と。警察は捜索隊とともに山の中を捜索していると……
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