三題噺(ホラー)

転香 李夢琉

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『安眠と言う名の凶器』

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お題 枕 剣 キーボード

 ……俺は今勝負を挑んだ。勝てるかは分からない……なぜなら
「えいっ!」
 ボフッ!!
「ぐへぇ……」
 俺は後ろに倒された。今俺に当たったのは……『枕』だ。
 この枕ちょー痛ぇんだよ! これほんとに枕なの?! て、思うくらい
 そしてその枕を投げた張本人がまた枕を持って、布団の上に倒れている俺の足下に仁王立ちになっている。
「おい? それ痛ぇんだよ? また投げる気なの?」
 俺は極めて優しい(怯えた)口調で制止を促した――がダメだったようだ。勢いよく枕を振り下ろされた。その直後俺は目を覚ました。
「……夢かぁー、マジで死んだかと思ったー」
 先程までのは夢だったようだ。安堵からか、後ろに倒れようとした――がそうはいかなかった。なにせ後ろには背もたれがあるからだ。俺はそのまま背伸びをして目の前の俺専用のゲーミングPCを見た。
 キーボードがカラフルに輝いている。同じくマウスも、赤、黄、緑、青……と。PCはスリープ状態に入っているので、部屋の光源はキーボードとマウスだけだ。それも少量のごく僅かな光。
 俺は自然と手を伸ばし、キーボードとマウスに手をあてた。するとPC画面に光が灯った。俺が寝る前(寝落ち前)にしていたゲームだ。案の定、モンスターに殺されてリスポーン位置に居た。俺は急いで持ち物を回収しに行くと大型のモンスターが何体か居た。俺はそこで逃げるはずもなく勇敢に立ち向かっていった。
「うぉぉぉ!! 俺の荷物返せぇぇぇ!!」
 そして見事に……返り討ちにされた。俺は一旦ゲームをセーブして、意識を現実世界へと戻す。部屋の電気をリモコンで点けると、パソコンの暗くなった画面に反射して後ろに何かの影があるのが見えた。俺は恐る恐る後ろを振り返ろうとしたその時、頭に強い衝撃が迸った。俺は反応できるはずもなく、椅子から転げ落ち地面へと倒れた。
 ガンッ!
 甲高い音と共に鈍い音も一瞬だが聞こえた。頬に冷たい床の感覚が伝わってくる中、段々と暖かくなってくる。液体のような物が頬を熱くさせ、感覚を狂わせていく。「グサッ!」となにかが刺さる音がしたが、俺はそれには気付かなかった。だが、視界に一瞬だけ、コンマ1秒だけそのなにかを捉えることが出来た。それで俺は悟った。
 あぁ、俺の頭に振り下ろされたのは「剣」のように硬く、切れ味のある「枕」だった……――
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