14 / 16
13.リヒテンシュタイン家
しおりを挟む
翌朝リタが目を覚ますと、アルフレッドはすでに布団を畳み、顔を洗って身支度を整えていた。管理人のおじいさんに朝食を招かれたそうで、リタも慌てて顔を洗うと、旅支度を整えた。
昨夜の結論をふまえ、リタは王城へ戻る前に、リヒテンシュタイン家に寄ることを決めていた。秘湯へは一週間ほど滞在していく予定だったが、すでに完治した以上ここにいる理由はない。
アルフレッドとはここでお別れだと考えていた。アルフレッドとカールのどちらが王位を継承するのか、先のことは分からないが、もうどちらでも良いとリタは思った。アルフレッドは、国王陛下に相応しい器の持ち主だ。彼がどんな道を選ぶとも、郊外から応援し続ける。
おじいさんによれば、ここから少し離れたところに宿場町があるそうで、昨日の御者はそこへ泊っているということだった。伝書鳩で連絡すれば昼前には迎えに来られるというので、リタはアルフレッドに確認した。
「アルは馬車で帰る?」
「いや、御者にはそのまま王城へ帰ってもらおう。リタの実家へ行くなら、紋章入りの籠は少し目立ちすぎる」
「一緒に来てくれるの」
「もちろん。僕も王城に帰る前に、一度リタのご両親にご挨拶したいし」
妙な言い回しに動悸が高鳴ったが、「カール本人に王城へ来てもらうよう説得しないと」と言葉を続けられ、胸をなでおろした。そういうことか。リタとしても、もう少し一緒にいられるのならば、その言葉に甘えたかった。おじいさんに一宿一飯の礼を言い、町の共同厩舎で二頭借りると、リタとアルフレッドは馬の腹を優しく蹴って、王都郊外へ出発した。
道中リタは、いま隣にいる彼のことを目に焼き付けようと思った。王城に足を踏み入れた日からおよそ三ヶ月間、色々なことがあった。いつもの王子様然とした紳士的なアルフレッドも、城下で平民に扮して年相応に振る舞う彼も、湖でずぶぬれになり色気をはらんだ彼も、リタが女であると知り王城から去るよう言い放った彼も、剣闘大会出場を心配した彼も、そして昨夜の風呂上りの無防備な彼も。どれもまだ鮮明で、リタはアルフレッドを知る度に、彼のことを好きになっていったのだと思う。
本音ではまだ全然足りなかった。けれどもうすぐこの時間は終わってしまうから、後悔しないように、会いたくなったときにこの一瞬一瞬をいつでも思い出せるように、リタは隣で馬を駆けるアルフレッドの横顔を見つめ続けた。
休憩を挟みながら、リヒテンシュタイン家についたのは、日が少し傾きかけた午後のことだった。来客に気づいたウォルターが門まで出迎えにきて、リタとアルフレッドを認めると、珍しく驚いたような表情を見せた。両親とカールに話がある旨を伝えると、心得たように頷いた。
大広間までやってくると、ここから始まったんだなと、リタはあの日を振り返った。赤に金の刺繍がほどこされた絨毯は、三ヶ月前と同じようそこにあって、ひどく懐かしく感じられた。
「リタ、……アルフレッド第一王子」
「ただいま戻りました」
リタは、あのときと同じように挨拶しようとして、まだ男装のままだったことに気がついた。男女どちらの挨拶をしようか迷ったものの、横にいるアルフレッドの瞳に後押しされるように、見えないスカートの裾をもちあげ、女性用の挨拶でお辞儀した。
「お父様、お母様、カール、大切なお話があります」
カールの同席を望んだ時点で、おそらくどういう類の話であるか、想像できていたのだろう。リタの両親は、陛下に対して不誠実であったことを謝罪し、謀るようなつもりはなかったことと、リタを屋敷へ戻し、今度こそカールを王城で生活させることを約束した。
「カールはそれでいいのか」
以前リタを訪ねてきた頃より髪を短くし、男らしさを増したカールに対して、アルフレッドは尋ねた。
「はい、陛下が今もそれを望んでいてくださるのであれば、王城へ同行させてください」
カールによれば、リタと離れていた三ヶ月間ほとんど体調を崩すこともなく、医師のドクターストップもなくなったという。先日リタと居室で会ったとき、成人したらカール本人が王城で生活するようになることを了承した。それが数ヶ月早まったところで、異存はないとのことだった。
話し合いが紛糾することはなかったが、屋敷から王城へは半日かかる。両親の勧めで、アルフレッドはリヒテンシュタイン家に一泊し、翌日カールと一緒に王城へ戻ることとなった。
両親は、甥にあたるアルフレッド王子と会話したくてうずうずしていたようで、ウォルターに給仕を頼むと、アルフレッドをつかまえてソファに座らせ、左右から挟んで質問攻めにしていた。目で助けようかと尋ねても、大丈夫だという笑みが返ってきたので、リタは懐かしの自室に戻り、ベッドに体を預けた。
自室は実家の香りがした。リタがいない間も、きちんと手入れしてくれていたことの分かる、陽光を浴びたシーツの感触が気持ちよい。
ノックが聞こえ、カールが扉の向こうから顔を覗かせる。
「入っていい?」
「どうぞ。…最近会ったばかりなのに、なんだかとても久しぶりな気がする」
「剣闘大会引き分けおめでとう。無茶したって聞いたけど、元気そうでよかった」
カールは恥ずかしそうに笑いながら、大会二日目にリタに会い、ウォルターと一緒に屋敷へ戻ってきたあと、最初に髪を切ったのだと教えてくれた。リタが逞しくなっていたから、男として負けたくないと感じたらしい。喜んでいいのか、悲しむべきなのか、咄嗟に判断できず、苦笑した。
その晩は、ずっとカールと他愛もない話をしていた。もともと一年程度のつもりだったリタと違い、カールはこれから半永久的に王城で暮らすのだ。戻ってくるのは、陛下が崩御し、アルフレッドが即位したときだけだろう。
現代日本にいた頃から好きだったカール。こちらの世界で目覚めてからは、姉としての親愛の情へ変わっていったが、それでも好きな気持ちに嘘はないし、ブラコンと呼ばれようと、カールにはいつも格好よくいてほしい。
メイドのアンネ、料理長のロイ、師団長のエドワードの話をとりとめなくして、彼らへの手紙を託すと、カールは神妙な顔で受け取った。
「僕も手紙を書くよ」
「ありがとう、待っているわ」
やがて夜の帳が訪れて、リタは三ヶ月ぶりに女性ものの寝間着に着替え、深い眠りについたのだった。
朝日が上ると、別れのときがやってきた。
一番綺麗な自分を覚えていてほしくて、リタはお気に入りのドレスに袖を通し、客間へ下りた。そこにはすでに両親とカール、アルフレッドが待っていて、互いに抱擁を交わしていた。この日が来るとずっと分かっていたのに、改めて現実として目の当たりにすると、どうしようもなく切ない気持ちが溢れた。「おはよう」という自分の声が震えている。隠すために、頬の筋肉を持ち上げ、全力で笑った。
ウォルターが、馬の準備ができたことを伝えに来る。カールは母とリタの頬にキスを落として、「行ってきます」と手を振った。覚悟を決めた弟の背中は大きく、とても頼もしく見えた。
リタは門前までついていって、カールの馬に荷物を積むのを手伝ったあと、前方にいる馬の胴に同じように荷物を括っている男に声をかけた。
「アル、今までお世話になりました」
まだ静かな日ざしの下で、アルフレッドは振り返り、眩しそうにリタを見た。
「何から何まで、アルがいなければ王城で生活なんかできなかったかもしれない。心から感謝いたします」
「僕は何も」
「ううん、本当にありがとう」
リタは少しだけ躊躇してから、ええいという気持ちで瞼を閉じ、アルフレッドの頬に口づけした。友人に対する別れの挨拶だと誤解されたままでいい。彼の前途が、どうか幸せに満ちたものとなりますように。
アルフレッドは驚いたような表情を見せたが、すぐにいつもの王子様らしい笑顔になって、「こちらこそありがとう」と白い歯を見せた。
カールが馬にのって近づいてきたのを合図に、アルフレッドも弾みをつけて馬にまたがった。
「じゃあ皆、元気で」
カールの言葉に母が涙をこぼしたのが視界の端に映ったが、リタは我慢したまま見送った。最後まで彼の姿を記憶に刻みたかったからだ。姿が見えなくなったあと、しばらくして、堰を切ったように喪失感が涙となって頬を伝った。
昨夜の結論をふまえ、リタは王城へ戻る前に、リヒテンシュタイン家に寄ることを決めていた。秘湯へは一週間ほど滞在していく予定だったが、すでに完治した以上ここにいる理由はない。
アルフレッドとはここでお別れだと考えていた。アルフレッドとカールのどちらが王位を継承するのか、先のことは分からないが、もうどちらでも良いとリタは思った。アルフレッドは、国王陛下に相応しい器の持ち主だ。彼がどんな道を選ぶとも、郊外から応援し続ける。
おじいさんによれば、ここから少し離れたところに宿場町があるそうで、昨日の御者はそこへ泊っているということだった。伝書鳩で連絡すれば昼前には迎えに来られるというので、リタはアルフレッドに確認した。
「アルは馬車で帰る?」
「いや、御者にはそのまま王城へ帰ってもらおう。リタの実家へ行くなら、紋章入りの籠は少し目立ちすぎる」
「一緒に来てくれるの」
「もちろん。僕も王城に帰る前に、一度リタのご両親にご挨拶したいし」
妙な言い回しに動悸が高鳴ったが、「カール本人に王城へ来てもらうよう説得しないと」と言葉を続けられ、胸をなでおろした。そういうことか。リタとしても、もう少し一緒にいられるのならば、その言葉に甘えたかった。おじいさんに一宿一飯の礼を言い、町の共同厩舎で二頭借りると、リタとアルフレッドは馬の腹を優しく蹴って、王都郊外へ出発した。
道中リタは、いま隣にいる彼のことを目に焼き付けようと思った。王城に足を踏み入れた日からおよそ三ヶ月間、色々なことがあった。いつもの王子様然とした紳士的なアルフレッドも、城下で平民に扮して年相応に振る舞う彼も、湖でずぶぬれになり色気をはらんだ彼も、リタが女であると知り王城から去るよう言い放った彼も、剣闘大会出場を心配した彼も、そして昨夜の風呂上りの無防備な彼も。どれもまだ鮮明で、リタはアルフレッドを知る度に、彼のことを好きになっていったのだと思う。
本音ではまだ全然足りなかった。けれどもうすぐこの時間は終わってしまうから、後悔しないように、会いたくなったときにこの一瞬一瞬をいつでも思い出せるように、リタは隣で馬を駆けるアルフレッドの横顔を見つめ続けた。
休憩を挟みながら、リヒテンシュタイン家についたのは、日が少し傾きかけた午後のことだった。来客に気づいたウォルターが門まで出迎えにきて、リタとアルフレッドを認めると、珍しく驚いたような表情を見せた。両親とカールに話がある旨を伝えると、心得たように頷いた。
大広間までやってくると、ここから始まったんだなと、リタはあの日を振り返った。赤に金の刺繍がほどこされた絨毯は、三ヶ月前と同じようそこにあって、ひどく懐かしく感じられた。
「リタ、……アルフレッド第一王子」
「ただいま戻りました」
リタは、あのときと同じように挨拶しようとして、まだ男装のままだったことに気がついた。男女どちらの挨拶をしようか迷ったものの、横にいるアルフレッドの瞳に後押しされるように、見えないスカートの裾をもちあげ、女性用の挨拶でお辞儀した。
「お父様、お母様、カール、大切なお話があります」
カールの同席を望んだ時点で、おそらくどういう類の話であるか、想像できていたのだろう。リタの両親は、陛下に対して不誠実であったことを謝罪し、謀るようなつもりはなかったことと、リタを屋敷へ戻し、今度こそカールを王城で生活させることを約束した。
「カールはそれでいいのか」
以前リタを訪ねてきた頃より髪を短くし、男らしさを増したカールに対して、アルフレッドは尋ねた。
「はい、陛下が今もそれを望んでいてくださるのであれば、王城へ同行させてください」
カールによれば、リタと離れていた三ヶ月間ほとんど体調を崩すこともなく、医師のドクターストップもなくなったという。先日リタと居室で会ったとき、成人したらカール本人が王城で生活するようになることを了承した。それが数ヶ月早まったところで、異存はないとのことだった。
話し合いが紛糾することはなかったが、屋敷から王城へは半日かかる。両親の勧めで、アルフレッドはリヒテンシュタイン家に一泊し、翌日カールと一緒に王城へ戻ることとなった。
両親は、甥にあたるアルフレッド王子と会話したくてうずうずしていたようで、ウォルターに給仕を頼むと、アルフレッドをつかまえてソファに座らせ、左右から挟んで質問攻めにしていた。目で助けようかと尋ねても、大丈夫だという笑みが返ってきたので、リタは懐かしの自室に戻り、ベッドに体を預けた。
自室は実家の香りがした。リタがいない間も、きちんと手入れしてくれていたことの分かる、陽光を浴びたシーツの感触が気持ちよい。
ノックが聞こえ、カールが扉の向こうから顔を覗かせる。
「入っていい?」
「どうぞ。…最近会ったばかりなのに、なんだかとても久しぶりな気がする」
「剣闘大会引き分けおめでとう。無茶したって聞いたけど、元気そうでよかった」
カールは恥ずかしそうに笑いながら、大会二日目にリタに会い、ウォルターと一緒に屋敷へ戻ってきたあと、最初に髪を切ったのだと教えてくれた。リタが逞しくなっていたから、男として負けたくないと感じたらしい。喜んでいいのか、悲しむべきなのか、咄嗟に判断できず、苦笑した。
その晩は、ずっとカールと他愛もない話をしていた。もともと一年程度のつもりだったリタと違い、カールはこれから半永久的に王城で暮らすのだ。戻ってくるのは、陛下が崩御し、アルフレッドが即位したときだけだろう。
現代日本にいた頃から好きだったカール。こちらの世界で目覚めてからは、姉としての親愛の情へ変わっていったが、それでも好きな気持ちに嘘はないし、ブラコンと呼ばれようと、カールにはいつも格好よくいてほしい。
メイドのアンネ、料理長のロイ、師団長のエドワードの話をとりとめなくして、彼らへの手紙を託すと、カールは神妙な顔で受け取った。
「僕も手紙を書くよ」
「ありがとう、待っているわ」
やがて夜の帳が訪れて、リタは三ヶ月ぶりに女性ものの寝間着に着替え、深い眠りについたのだった。
朝日が上ると、別れのときがやってきた。
一番綺麗な自分を覚えていてほしくて、リタはお気に入りのドレスに袖を通し、客間へ下りた。そこにはすでに両親とカール、アルフレッドが待っていて、互いに抱擁を交わしていた。この日が来るとずっと分かっていたのに、改めて現実として目の当たりにすると、どうしようもなく切ない気持ちが溢れた。「おはよう」という自分の声が震えている。隠すために、頬の筋肉を持ち上げ、全力で笑った。
ウォルターが、馬の準備ができたことを伝えに来る。カールは母とリタの頬にキスを落として、「行ってきます」と手を振った。覚悟を決めた弟の背中は大きく、とても頼もしく見えた。
リタは門前までついていって、カールの馬に荷物を積むのを手伝ったあと、前方にいる馬の胴に同じように荷物を括っている男に声をかけた。
「アル、今までお世話になりました」
まだ静かな日ざしの下で、アルフレッドは振り返り、眩しそうにリタを見た。
「何から何まで、アルがいなければ王城で生活なんかできなかったかもしれない。心から感謝いたします」
「僕は何も」
「ううん、本当にありがとう」
リタは少しだけ躊躇してから、ええいという気持ちで瞼を閉じ、アルフレッドの頬に口づけした。友人に対する別れの挨拶だと誤解されたままでいい。彼の前途が、どうか幸せに満ちたものとなりますように。
アルフレッドは驚いたような表情を見せたが、すぐにいつもの王子様らしい笑顔になって、「こちらこそありがとう」と白い歯を見せた。
カールが馬にのって近づいてきたのを合図に、アルフレッドも弾みをつけて馬にまたがった。
「じゃあ皆、元気で」
カールの言葉に母が涙をこぼしたのが視界の端に映ったが、リタは我慢したまま見送った。最後まで彼の姿を記憶に刻みたかったからだ。姿が見えなくなったあと、しばらくして、堰を切ったように喪失感が涙となって頬を伝った。
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます
ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。
そして前世の私は…
ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。
サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。
貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。
そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい?
あんまり内容覚えてないけど…
悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった!
さぁ、お嬢様。
私のゴットハンドを堪能してくださいませ?
********************
初投稿です。
転生侍女シリーズ第一弾。
短編全4話で、投稿予約済みです。
転生した悪役令嬢は破滅エンドを避けるため、魔法を極めたらなぜか攻略対象から溺愛されました
平山和人
恋愛
悪役令嬢のクロエは八歳の誕生日の時、ここが前世でプレイしていた乙女ゲーム『聖魔と乙女のレガリア』の世界であることを知る。
クロエに割り振られたのは、主人公を虐め、攻略対象から断罪され、破滅を迎える悪役令嬢としての人生だった。
そんな結末は絶対嫌だとクロエは敵を作らないように立ち回り、魔法を極めて断罪フラグと破滅エンドを回避しようとする。
そうしていると、なぜかクロエは家族を始め、周りの人間から溺愛されるのであった。しかも本来ならば主人公と結ばれるはずの攻略対象からも
深く愛されるクロエ。果たしてクロエの破滅エンドは回避できるのか。
家庭の事情で歪んだ悪役令嬢に転生しましたが、溺愛されすぎて歪むはずがありません。
木山楽斗
恋愛
公爵令嬢であるエルミナ・サディードは、両親や兄弟から虐げられて育ってきた。
その結果、彼女の性格は最悪なものとなり、主人公であるメリーナを虐め抜くような悪役令嬢となったのである。
そんなエルミナに生まれ変わった私は困惑していた。
なぜなら、ゲームの中で明かされた彼女の過去とは異なり、両親も兄弟も私のことを溺愛していたからである。
私は、確かに彼女と同じ姿をしていた。
しかも、人生の中で出会う人々もゲームの中と同じだ。
それなのに、私の扱いだけはまったく違う。
どうやら、私が転生したこの世界は、ゲームと少しだけずれているようだ。
当然のことながら、そんな環境で歪むはずはなく、私はただの公爵令嬢として育つのだった。
悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない
亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ
社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。
エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも……
「エマ、可愛い」
いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
悪役令嬢と攻略対象(推し)の娘に転生しました。~前世の記憶で夫婦円満に導きたいと思います~
木山楽斗
恋愛
頭を打った私は、自分がかつてプレイした乙女ゲームの悪役令嬢であるアルティリアと攻略対象の一人で私の推しだったファルクスの子供に転生したことを理解した。
少し驚いたが、私は自分の境遇を受け入れた。例え前世の記憶が蘇っても、お父様とお母様のことが大好きだったからだ。
二人は、娘である私のことを愛してくれている。それを改めて理解しながらも、私はとある問題を考えることになった。
お父様とお母様の関係は、良好とは言い難い。政略結婚だった二人は、どこかぎこちない関係を築いていたのである。
仕方ない部分もあるとは思ったが、それでも私は二人に笑い合って欲しいと思った。
それは私のわがままだ。でも、私になら許されると思っている。だって、私は二人の娘なのだから。
こうして、私は二人になんとか仲良くなってもらうことを決意した。
幸いにも私には前世の記憶がある。乙女ゲームで描かれた二人の知識はきっと私を助けてくれるはずだ。
※2022/10/18 改題しました。(旧題:乙女ゲームの推しと悪役令嬢の娘に転生しました。)
※2022/10/20 改題しました。(旧題:悪役令嬢と推しの娘に転生しました。)
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
深窓の悪役令嬢~死にたくないので仮病を使って逃げ切ります~
白金ひよこ
恋愛
熱で魘された私が夢で見たのは前世の記憶。そこで思い出した。私がトワール侯爵家の令嬢として生まれる前は平凡なOLだったことを。そして気づいた。この世界が乙女ゲームの世界で、私がそのゲームの悪役令嬢であることを!
しかもシンディ・トワールはどのルートであっても死ぬ運命! そんなのあんまりだ! もうこうなったらこのまま病弱になって学校も行けないような深窓の令嬢になるしかない!
物語の全てを放棄し逃げ切ることだけに全力を注いだ、悪役令嬢の全力逃走ストーリー! え? シナリオ? そんなの知ったこっちゃありませんけど?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる