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ラーメン憩い 四日目前半

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四日目。

「おい美幸」

「はい?」

デスクに座ってパソコンで仕事をしていた美幸の元へ瀬田がやって来た。

「おはようございます」

「お前どう言うつもりだ?」

「何がです?」

「昨日は良くも逃げてくれたなぁ?」

そんなのは当たり前。こんな最低な男の相手をしてる暇はない。

「当たり前じゃないですか。何を言って」

「お前生意気だよな?男も居なきゃ一人暮らしの寂しい女だよな?」

その言い方にカチンとキレた彼女はガタン!と立ち上がるなり、椅子が倒れ、注目を浴びる。

「女を!性欲を満たすだけの道具としてしか見てない瀬田さんに!私の悪口を言われる筋合い何かありません!」

反抗した。歯向かった。自分の意見は正しいから。女性を泣かせて来たこの男に、ガツンと言ってやった。

「!!!!!!!!!!!?」

それには彼も驚愕してしまい、言い返せなかった。口を紡いだまま、何も言わずに去って行った。

「はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ」

言ってやった。

ザマァ見ろ。

仕事が終わり、直ぐ様ラーメン憩いへやって来た。

「こんばんは~♪」

「こんばんはいらっしゃい!」

「いらっしゃ~い♪」

「毎度ありがとうございます」

「いらっしゃいませ!」

「いらっしゃい」

今日も揃っている。夫婦はもちろん。バイトも。

「今日は何するの~?」

いつもの指定席とも言える奥のカウンター席に座った美幸に夢は聞くなり、ガラガラと引き戸が引かれた。黒髪にソバージュが掛かった、目付きのキツい紫色の口紅にゴスロリワンピースを身に付けた女性、奈良和美嘉と、ベースカバーを肩に掛けて入って来たのは栗色のボブカットに黄色い口紅。あどけない愛らしい顔をした赤と黒のゴスロリワンピースを身に付けた大原芽依。そして、ギターカバーを肩に掛けて水色の口紅をした黄色が掛かった黒髪にピンクのゴスロリワンピースを身に付けた女性、安藤雪が入って来たのだ。

「!!!!!!!!!?」

癖が強い女性方だが、どこかで見た事が。

「よぉ!ラズ!メヴィ!ビガ!元気だったか?」

「えっ!?ラズメヴィビガって!ドロールNA⭐︎GAReの!?」

それを聞いて目を見張り、驚愕してしまう。ドロールNA⭐︎GAReとは、ガールズバンドの3人組であり、『ロック』と『黒』のコンセプトを大切にしている。ヴォーカル謙ドラムは『ラズ』事、『奈良和美嘉』。ベースは『ビガ』事『芽依芽依』。そして、ギターは『メヴィ』事『安藤雪』。

「どうも!ドロールNA⭐︎GAReです」

カウンター席に3人で座り、ラーメン憩いでまさかガールズバンドのドロールNA⭐︎GAReに出会うとは思っても無かった。

「最近来ないと思ってたら何してたのよぉ?」

雪の隣で頬杖を付いて聞く夢は、メモ帳とボールペンを持っている。

「私らニューヨーク行ってたんですよ」

ガールズバンドが自分よりも年下の子に敬語を使っている。

「うええぇ~!?ニューヨークゥ~!?」

それ聞いて尊は驚き、純也も話しを聞く。

「ツアーで。それで三日前に帰って来て、ラーメン憩いが恋しくなって、来たんですよ」

どうやらツアーから帰って来たばかりのようで、彼女たちもラーメン憩いの虜のようだ。

「お疲れ!」

「へ~すごいねラズちゃんたち。お疲れ様」

すると純也は、冷えたコップを3人の前に置き、ラムネの瓶を置いた。

「これは?」

「ラーメン憩いからの、サービス♪」

にこやかな笑みを浮かべて言い、その場から居なくなるなり、背を向けて食器を洗う鈴の後ろから抱き着こうとするなり、ゴッ!ゴツッ!

「何どさくさに紛れて妻に手出そうとしてんだこのエロガキ!」

「触らないで下さい変態バイト!」

白目を剥いて拳を握り締める白鳥夫妻。脳天にはコブが。

「あはは!甲斐田は相変わらずだな?」

紫色の口紅がとても似合う。この会話ややり取りも、ラーメン憩いの独特の家族感溢れた会話。

「ナガレ様♡私はいつでもナガレ様を愛しております♡私の愛はお忘れじゃありませんよね?」

その時、美嘉の隣に座る芽依はそう聞くなり、鈴はキッと睨み付けた。

「ははは!悪いなビガ」

その時、隣にいた妻の華奢なか細い二の腕を掴んで引き寄せるなり、ギュッと抱き締めた。

「俺はいつだって妻一筋何だよ」

ニィッと笑って言い、彼女もこう口にした。

「残念でしたね?」

「ナガレ様~!」

その隣で雪は引いてしまう。

「あれ?もしかして」

その時美幸は、何かに気付いて人気のガールズバンドに聞く。

「ドロールNA⭐︎GAReって。ナガレさんのNA⭐︎GAReですか?」

確かにこのバンド名はドロールNA⭐︎GARe。そこで、彼女はピンと来た。ラーメン憩いの虜であり、その店主が白鳥ナガレ。するとラズ事美嘉は、美幸に答えた。

「はい。実は、バンドを組む前、16の時にこのラーメン屋に通ってたんです。ビガとメヴィは同級生で、仲が良かったんです」

それは7年前の事。

『ご出産おめでとうございます!』

その当時、鈴はおんぶ紐で生後2ヶ月の自分の子を背負っており、ナガレもその当時は若かった。

『ありがとうございます』

『ありがとう!』

鈴は、16の頃に彼と結婚をして子供を儲けた。ラーメン屋で、おんぶ紐をして子供を背負って働いてる所何て見た事ない。

『ナガレ様の子供を産むのは私だと思ってたのに~!』

芽依はカウンター席に座って泣きながらそう口にした。

『残念ですね。私がナガレの子を産みました』

『うえええぇ~ん!』

歳が1つしか変わらないのに、ラーメン憩いに通っていればナガレを自分のものに出来ると思っていたのだが、その時には既婚者だったので手は出さなかったが、ちょっとした、期待はあった。

『おい泣かすな』

『そう言えばナガレさん。話し聞いて下さい』

すると雪は、泣いてる彼女を無視して話しを進める。

『どぅーした?』

『夢があって、私たち。バンドを組みたいと思ってるんです』

『バンド?』

『そうそう!私らバンド組みたいって話しをしてて』

『良いじゃんガールズバンド。カッコ良いじゃんか』

ナガレは、カウンターに頬杖を付いて話しを聞く。

『どう言う系なら売れると思いますか?』

常に夢を持っている。ガールズバンドとしての羽根を羽ばたかせたいと言う大きな夢が。

『どうだろうなぁ?分かんないけど。人それぞれだよな?好きなタイプのバンドって。キラキラ系なのか、黒系なのか』

キラキラ系や黒系。バンドは沢山の系統があるので、人が歌を聴いて『このバンド好き!』となるのは、人それぞれの価値観なので、そう言われても答えられなかった。

『ナガレさんはどう言う系が好きですか?』

『俺?俺はロックかな?どちらかと言うと黒系が好きだ。黒い羽根を羽撃かせて歌うガールズバンド。カッコ良いなぁ!』

美幸は、何も言わずに聞いていた。ただ、話しを聞いていた。このラーメン屋で、まさに同じ席に座ってナガレの好みのバンドを聞き、それでコンセプトを黒とゴスロリでロックを目指して、黒い羽根を羽撃かせた。そして今、彼女たちは日本から出て、海外にまで引っ張り蛸に。

「カッコ良いです!ありがとうございます!そんな、エピソードが隠れていたとは知りませんでした」

ガールズバンドが結成されるまでの会話が聞ける何て。こんな機会、滅多に無い。

「本当にでもカッコ良いよね?ラズちゃんたち」

純也はにこやかに笑みを浮かべて頬杖を付く。

「あれ?甲斐田、歳いくつになった?」

すると美嘉はふと気になり、そう聞いた。

「俺26」

「えぇ!?26!?」

「うっそぉ~!あの時、19だったよね?」

それを聞いて雪は目を見張り驚愕してしまう。

「それから結構経ってるから、歳は取るよ~!ふふふ」

この人は変わらない。いくつになっても甲斐田純也のまま。だが、もっと変わらないのがここにいる。

「伊村は?」

尊だ。童顔なので10代に間違われる事が多いが、実の所…。

「うえっ?俺?俺28」

まさかの28。

「えええええええぇ~!?」

それには夢も驚愕して声が大きくなり

「えぇ!?」

美幸も驚愕し、口を両手で塞ぐ。

「何その驚き!?良い方向!?悪い方向!?どっち!?うえぇ!?」

「純也の年上!?」

「年上だよ!知らなかったの?」

「中学生がバイトしてると思ってた」

「んな訳あるかあぁ~!」

あの時。彼女たちは彼を中学生だと思っていたようだ。

「あっはっはっはっはっはっ!いくらアットホーム感あるラーメン屋でも中学生は雇わないよ!あっはっはっはっはっはっ!」

この人が、彼女たちを導かなければ、ガールズバンドとして売れなかった。まさにここのラーメン屋は色んな人との『憩い』の場。

「夢の事は知ってるんだっけ?」

ふと、ガールズバンドたちは顔を向けた。

「いや。知りません」

「だよね?この子、バイトの子で朧月夢ちゃん。16歳だ」

「よろしく」

その割にはガールズバンドたちと普通に話してた。ここのラーメン屋でバイトをしてしまうと、色んな人と会話をするのでアットホーム感が出てしまうのかもしれない。

「若いね」

「あの頃の私たちと同じ歳だ」

16の頃、ラーメン憩いと出会った。あの時から彼女たちは憩いの虜。ここでバイトをする人たちも、この憩いで働く夫婦のアットホーム感が好きで、バイトをしているのかもしれない。

「ナガレさん。あの頃頼んだ憩いスペシャル。やってますか?」

話してるだけでラーメンを食べないと言う訳はない。だが、メニューには無い憩いスペシャルと言う言葉を聞いて、美幸は反応した。

「憩いスペシャル?」

「ここのスペシャルは挑戦何です!」

「この挑戦に勝って!私たちはガールズバンドとして売れたんです!」

挑戦。一体どんな料理なのだろうか。それがラーメンなのか、おつまみなのかも分からない。非常に気になる。するとナガレは笑みを浮かべ、こう口にした。

「3~21」

それは何を意味するのか分からないが、何て中途半端な数字。

「9!」

雪は、その中から数字を口にした。

「6で」

敢えて低い数字を口にした芽衣は、弱気だ。

「ラズは?」

そして、彼女はカウンターに手を付いて、数字を出した。

「19」

「良いねぇ!さすがはガールズバンドのリーダーだ!やっぱり、大物だな?」

腕を組み、彼はニヤッとした。

「いや、20!」

「20ね?」

ナガレは、まだニヤけている。

「ラズダメだ!その上を行ったらいけない!」

「死んじゃうよ!?」

どんな料理なのだろうか。その数字からしてもしかすると…。

「………………………………………」

彼女は、額から一筋の汗を流し

「私が仲間を引っ張る。マックスで」

大きく出た。さすがはリーダーだ。度胸がある。

「よぉし!その粋だ!」

そして白鳥夫妻と純也は作り出す。

「さすがはガールズバンドのリーダーだね?やっぱすごいね?」

彼はにこやかな笑みを浮かべて言い、美嘉は座り『ふぅ』と、心を整える為に息を吹いた。

「ラズ大丈夫?」

「平気。ドロールNA⭐︎GAReのヴォーカルとして、リーダーとして挑戦する!」

「無理しないでね!」

「………………………………………」

一体何が出ようとしているのだろうか。すると美幸はそれに感化され

「私も挑戦して、18にします!」

「!!!!!!!!!!?」

「うえええぇ~!」

「ええええぇ~!!」

それを聞いてガールズバンドは目を見張って顔を向け、尊と夢は驚愕して大きな声を発す。

「止めといた方が良いよ~!」

「明日仕事行けなくなるぞ!」

「明日休みだから大丈夫です。それに、私も挑戦したいんです!」

話しを聞いていたらこっちもやる気が出たようで、スーツの上着を脱ぎ、ワイシャツの袖を捲り、やる気満々だ。

「あっはっはっはっはっ!今のうちに言っておくよ。後悔するけど頑張って!」

「頑張ります!」

ナガレからも後押しされたら、引き下がれない。

さぁ!

何でも来なさい!

かかって来なさい!

その挑戦に勝ってやろうじゃない!

「はい!売れっ子ガールズバンドたちお待ち!」

どんぶりをドン!と出されて3人の前に置かれた時、美幸は立ち上がって美嘉のを見た際に

「!!!!!!!!!!!?」

その後悔は、遅かった。
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