91 / 233
第三章 二人の距離
・
しおりを挟む
翔さんとの面会当日。
「廉ちゃん、大丈夫だからね?ママと直人さんいるから。」
「翔はトイレのとこまでしか来ないからね。」
入口の流しの横にトイレがあるんだけど、今回はそこまでしか入らないって約束での面会になるらしい。
じゃないと俺がパニックになった時逃げ場がなくなりさらに混乱してしまうからとのことだ。
まぁそうなると思うよ、トイレまででも。
そして10時になった。
トントントンー
少しでも緊張が和らぐように音楽をかけてくれたのだが、それが聞こえなくなっているくらい俺にはノックの音が大きく聞こえた。
「失礼します。」
「おはよ、翔君」
「おはよう、翔」
「おはよ・・・。」
俺は窓の外を向いて何とか気を散らす。
「トイレの側のイスまで入って大丈夫よ。」
「うん」
少しの間、誰もしゃべらない時間になった。
「廉ちゃんね、最近はヨーグルト少し食べれるようになったのよね!」
「ヨーグルト・・・?そうなんだ、頑張ってるんだね」
『くそがき!!飯も自分で食えねぇのかよ!!』と頭の中で本当の父親が言っている映像が浮かび始めた。
「翔君は最近お仕事どう?」
「ちょっと最近は忙しいですね。またコンテストに出すもの考えたりしなくちゃで・・・」
『お前が仕事さぼってるせいで、俺の仕事が増えてんだよ!!』
あ・・・だめかもしれない・・・
「ギャー――――――――!!!!!!ハァハァハァ・・・・」
「廉ちゃん!!?大丈夫?何が怖かったかな?」
「廉くん大丈夫だよ、深呼吸しよう。」
俺の意識は今病室にはない。
出入り口に親父が立っているように見えていて、手にはカッターが見えている。
怖い・・・・。
ガクガク震える体。
「廉君ごめんね。無理させたね。」
そう言って体を直人さんが抱きしめてさすってくれていることで意識は病室へ戻り、翔さんに一度視線をやると傷ついた表情で立っていた。
「翔、今日の面会はもう終わろう。」
「・・・うん」
翔さんが部屋から出ていくのを確認し、母親に水を飲むように言われ今日はさすがにストローに口を付けた。
病室の外で翔はしゃがみ込んでいた。
あの日は冷静じゃなかったから廉がパニックになっても知らんぷりだったが、今日は冷静だ。
だからこそ自分のせいでパニックになったのだと思い知らされてしまいかなり落ちていた。
そこへ廉をなんとか落ち着かせた直人がやってきた。
「ちょっと裏で話そう。」
「うん・・・。」
院長室へ入りソファに腰をかける。
「自分がやったことの酷さを今更後悔か?」
「うん・・・・」
「正直廉くんを蹴った時俺はお前をぶん殴りたい気持ちだったよ。」
「ごめん・・・」
「廉くんにいつか言えたらいいな、その言葉。」
「うん。」
「二度と廉くんにも百々ちゃんにも手を出さないって誓えるか?」
「誓う・・・廉くんにもいつかちゃんと謝罪して許してもらえるように努力する・・・」
「くれぐれも廉くんのストレスにならないようにな。」
「うん・・・。」
「空の墓参り行って、怒られて来い。」
「わかった・・・」
おとなしく空の墓参りへと向かった翔の背中に「空、説教頼んだぞ・・・」と直人は小さくつぶやいた。
「廉ちゃん、大丈夫だからね?ママと直人さんいるから。」
「翔はトイレのとこまでしか来ないからね。」
入口の流しの横にトイレがあるんだけど、今回はそこまでしか入らないって約束での面会になるらしい。
じゃないと俺がパニックになった時逃げ場がなくなりさらに混乱してしまうからとのことだ。
まぁそうなると思うよ、トイレまででも。
そして10時になった。
トントントンー
少しでも緊張が和らぐように音楽をかけてくれたのだが、それが聞こえなくなっているくらい俺にはノックの音が大きく聞こえた。
「失礼します。」
「おはよ、翔君」
「おはよう、翔」
「おはよ・・・。」
俺は窓の外を向いて何とか気を散らす。
「トイレの側のイスまで入って大丈夫よ。」
「うん」
少しの間、誰もしゃべらない時間になった。
「廉ちゃんね、最近はヨーグルト少し食べれるようになったのよね!」
「ヨーグルト・・・?そうなんだ、頑張ってるんだね」
『くそがき!!飯も自分で食えねぇのかよ!!』と頭の中で本当の父親が言っている映像が浮かび始めた。
「翔君は最近お仕事どう?」
「ちょっと最近は忙しいですね。またコンテストに出すもの考えたりしなくちゃで・・・」
『お前が仕事さぼってるせいで、俺の仕事が増えてんだよ!!』
あ・・・だめかもしれない・・・
「ギャー――――――――!!!!!!ハァハァハァ・・・・」
「廉ちゃん!!?大丈夫?何が怖かったかな?」
「廉くん大丈夫だよ、深呼吸しよう。」
俺の意識は今病室にはない。
出入り口に親父が立っているように見えていて、手にはカッターが見えている。
怖い・・・・。
ガクガク震える体。
「廉君ごめんね。無理させたね。」
そう言って体を直人さんが抱きしめてさすってくれていることで意識は病室へ戻り、翔さんに一度視線をやると傷ついた表情で立っていた。
「翔、今日の面会はもう終わろう。」
「・・・うん」
翔さんが部屋から出ていくのを確認し、母親に水を飲むように言われ今日はさすがにストローに口を付けた。
病室の外で翔はしゃがみ込んでいた。
あの日は冷静じゃなかったから廉がパニックになっても知らんぷりだったが、今日は冷静だ。
だからこそ自分のせいでパニックになったのだと思い知らされてしまいかなり落ちていた。
そこへ廉をなんとか落ち着かせた直人がやってきた。
「ちょっと裏で話そう。」
「うん・・・。」
院長室へ入りソファに腰をかける。
「自分がやったことの酷さを今更後悔か?」
「うん・・・・」
「正直廉くんを蹴った時俺はお前をぶん殴りたい気持ちだったよ。」
「ごめん・・・」
「廉くんにいつか言えたらいいな、その言葉。」
「うん。」
「二度と廉くんにも百々ちゃんにも手を出さないって誓えるか?」
「誓う・・・廉くんにもいつかちゃんと謝罪して許してもらえるように努力する・・・」
「くれぐれも廉くんのストレスにならないようにな。」
「うん・・・。」
「空の墓参り行って、怒られて来い。」
「わかった・・・」
おとなしく空の墓参りへと向かった翔の背中に「空、説教頼んだぞ・・・」と直人は小さくつぶやいた。
11
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる