Promise

時谷 創

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4話 声

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「2ヶ月くらい前からね。
 お店に来てくれる子供達の声が突然聞こえなくなったの」

「お店の子供達の声が?」

「うん。話かけられても何も聞こえなくて、凄くショックだった。
 それで病院に行って検査をしたんだけど異常なし。
 先生は精神面からくる症状じゃないかって言う事だったんだけど…」

「何か思い当たる事はあるんですか?」

「特に何かあった訳では無いけど、子供達の気持ちに応えたい。
 そしておばあちゃんの店を続けて、結愛ちゃんをこの店で迎えたいって
 言う強い想いはあったかもしれない」

「そう言う気持ちを背負いすぎてしまったのかもしれないですね」

名草さんが私の事を想ってくれていた事が嬉しい。

私は自然と名草さんの手を握りしめていた。

「昨日はほんとごめんね。結愛ちゃんの姿を見つけて凄く嬉しく、
 温かい気持ちが沸いてきた」

「けど同時に結愛ちゃんはこのように立派な女の子だけど、
 もし声が聞こえなくなっていたらどうしようと思って、
 その場から逃げ出してしまったの」

「そう言う事だったんですね。私達は今こうして話ができていますし、
 それは心配しなくてもいいと思います」

「そうね、私も安心した。
 結愛ちゃんは勇気を出して2度も会いに来てくれた。
 次は私もこの困難に立ち向かわなきゃいけないわね」

「名草さん?」

名草さんは私の手を握ったまま立ち上がり、
半開きになっている店の方に目を向けてると、
紙芝居の道具がある場所を指さす。

「聞こえないなら文字でやり取りをすれば応えてあげられるんだ」

「言われて見ればそうですね! 
 話すだけがコミュニケーションって訳じゃないですしね!
 後は名草さんが1人で背負い込む事無くお店ができれば……」

「……そっか。私ずっと1人で店を守らないといけないとばかり
 思っていたけど、誰かに手伝ってもらうのも1つの方法か」

「お店を手伝う、それ良いと思います!
 それ是非私にやらせてください!」 

私は満面の笑顔でそう言って半開きのお店の中に入り、カウンターの前に行く。
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