Promise

時谷 創

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3話 気持ち

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昨日は「名草さんと会える!」と胸を躍らせながら、
曲がった曲がり角を今日は恐る恐る覗き込んでみると、
店が半開きの状態になっていたが、昨日とは明らかに違う点があった。

名草さんが店の前を箒で掃いていたのだ。

昔から名草さんはここら評判の美少女で、
体つきはスラリとして少しか弱いイメージもあったが、
今は手や足も伸び、女性らしく健康的な丸みを帯びており、
「大人な女性」と言うイメージだ。

「名草さん…!」

私は思わず駆け寄り、名草さんに声をかける。

考え事をしていたのか、ぼーっとした表情で名草さんは振り向き、
視線が絡み合うが、名草さんは返事もせず箒を捨てて逃げ出してしまう。

「名草さん、待ってください!」

それでも家に入ってしまうと思いきや、
名草さんは私の言葉に足を止めて、ゆっくりとこちらを振り向く。

「ただいまです、名草さん。事前連絡もせず突然会いに来てごめんなさい」
 私、ずっとずっとこの日を楽しみにしていました」

「でも、やっぱり月日が経つと気持ちって変わってしまうものですかね…」

涙が頬をつたうのを感じつつも、名草さんを困らせる事になるのは
間違いないので、私はこの場から去ろうと踵を返した。

「結愛ちゃん、違うの!」

そう言って名草さんは真剣な表情でこちらに向かって走ってきて、
いきなり強く抱きしめられた。

「名草さん!?」

「結愛ちゃんに会うの私もずっとずっと楽しみにしてた。
 だから昨日結愛ちゃんの顔を見たとき凄く嬉しかった。
 でも…」

そこで名草さんは言葉を詰まらせてしまう。

名草さんの事だからきっと事情があったんだ。

名草さんから伝わってくる鼓動や表情を見れば分かる。

私は名草さんを信じる。

だから今度は昔みたいにすぐ頼る私じゃない事を証明して、名草さんに信じてもらうんだ!

「私では力になれないかも知れません。
 けど名草さんが何かを抱えてるなら、私が話を聞きます。
 だから遠慮なく話してください!」

「結愛ちゃん…ありがとう。
 私の事を心配して一生懸命に考えてくれてる
 立派な女の子になったんだね」 

そう言って名草さんは笑顔を浮かべて体を離し、
お店の前にある椅子へと案内される。
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