16 / 35
みずいらず
7
しおりを挟む
◇
兄と致すときはいつも初夜のような気持ちにさせられる。何度抱いても彼は穢れを知らない子供のように体を強張らせる。潤んだ瞳でおずおずとこちらを見上げ、次に与えられるふれあいに身構えるのだ。
そんな兄がたまらなく愛おしい。そして、自分自身の汚さに嫌悪する。
「無口くん」
薄暗がりの部屋の中、月明かりが差し込むベッドの上に兄は寝転がっていた。湯上がりの体が火照っていて、俺の奥底にある熱を燻る。先程身につけたばかりの寝巻きへ手を伸ばす。ゆるい生地のそれは脱がせやすくて、ほくそ笑んだ。
そのまま胸元へ近づき、晒された突起を舐める。唾液の多い舌で甚振ると、兄が甲高い声を上げた。赤子のように吸い付くと、シーツを握る手に力が籠る。
「はっ、はっ、あぅ、……んっ、ぅ……!」
顔を真っ赤にしている彼が可愛くて、わざと音を立てて吸う。その度に背中が反り、汗ばんだ。
「だめ、っ、やだ、へんになっちゃう」
口の端から唾液を垂らしながら、俺の肩を掴み剥がそうとする兄。嫌じゃないくせに、と意地悪な言葉を吐きたかったが、口を噤む。宥めるようにキスをすると、彼は大人しく従った。手のひらで頬を包み込み、角度を変え何度も触れる。薄く開いた唇の間に舌を入れ込むと、兄が震える舌を伸ばす。触れ合ったそこが妙に熱くて、無我夢中で舌に吸い付いた。彼がゴクリと俺の唾液を嚥下する。その音が耳に届き、脳の奥がぼんやりとした。
────兄が俺の体液を飲み下している。
唾液が彼の体内に入り込み、胃へ収まるという事実に背筋がゾクゾクとした。
兄の全てを侵食したい。食い尽くして、貪って。その骨さえも噛み砕いてしまいたいとさえ思う。
そんな暴力的な思考が、兄の小さな喘ぎによって揉み消された。唇を離し、カルベルを見つめる。虚ろとした、焦点の合わない瞳が俺を見つめていた。
「くるしいよ」
舌足らずな口調でそう言われ、もう一度口づけをした。舌を奥深くまで捩じ込み、柔らかい部分を撫でる。瞬間、彼の体が地上へあげられた魚のように跳ねた。同時に、醜い音が喉から漏れる。俺はそんな小さな体を押さえつけ、舌を伸ばした。
もっと深く。彼を探りたい。下半身の張り詰めた熱を擦り合わせながら、必死に抵抗する兄の振動を味わう。
兄を大切にしたいという気持ちと、相反して激しく嬲りたいという気持ちが鬩ぎ合った。
「ん゛、ぐ、……! ん、ん゛ッ」
苦しさのあまり顔を背けようとした彼を逃さないように、頬を掴んでいた手に力を込める。柔い肉が歪み、それさえも興奮を招いた。
不意に、熱い何かが手に触れる。それが兄の涙だと知り、咄嗟に体を離した。
彼は顔を真っ赤にし、肩で呼吸を繰り返しながら涙を流している。
「はっ、はぁっ、む、むくちくん、こわいよ」
嗚咽を漏らしながら泣く彼に、申し訳なさと情欲が擽られた。
兄と致すときはいつも初夜のような気持ちにさせられる。何度抱いても彼は穢れを知らない子供のように体を強張らせる。潤んだ瞳でおずおずとこちらを見上げ、次に与えられるふれあいに身構えるのだ。
そんな兄がたまらなく愛おしい。そして、自分自身の汚さに嫌悪する。
「無口くん」
薄暗がりの部屋の中、月明かりが差し込むベッドの上に兄は寝転がっていた。湯上がりの体が火照っていて、俺の奥底にある熱を燻る。先程身につけたばかりの寝巻きへ手を伸ばす。ゆるい生地のそれは脱がせやすくて、ほくそ笑んだ。
そのまま胸元へ近づき、晒された突起を舐める。唾液の多い舌で甚振ると、兄が甲高い声を上げた。赤子のように吸い付くと、シーツを握る手に力が籠る。
「はっ、はっ、あぅ、……んっ、ぅ……!」
顔を真っ赤にしている彼が可愛くて、わざと音を立てて吸う。その度に背中が反り、汗ばんだ。
「だめ、っ、やだ、へんになっちゃう」
口の端から唾液を垂らしながら、俺の肩を掴み剥がそうとする兄。嫌じゃないくせに、と意地悪な言葉を吐きたかったが、口を噤む。宥めるようにキスをすると、彼は大人しく従った。手のひらで頬を包み込み、角度を変え何度も触れる。薄く開いた唇の間に舌を入れ込むと、兄が震える舌を伸ばす。触れ合ったそこが妙に熱くて、無我夢中で舌に吸い付いた。彼がゴクリと俺の唾液を嚥下する。その音が耳に届き、脳の奥がぼんやりとした。
────兄が俺の体液を飲み下している。
唾液が彼の体内に入り込み、胃へ収まるという事実に背筋がゾクゾクとした。
兄の全てを侵食したい。食い尽くして、貪って。その骨さえも噛み砕いてしまいたいとさえ思う。
そんな暴力的な思考が、兄の小さな喘ぎによって揉み消された。唇を離し、カルベルを見つめる。虚ろとした、焦点の合わない瞳が俺を見つめていた。
「くるしいよ」
舌足らずな口調でそう言われ、もう一度口づけをした。舌を奥深くまで捩じ込み、柔らかい部分を撫でる。瞬間、彼の体が地上へあげられた魚のように跳ねた。同時に、醜い音が喉から漏れる。俺はそんな小さな体を押さえつけ、舌を伸ばした。
もっと深く。彼を探りたい。下半身の張り詰めた熱を擦り合わせながら、必死に抵抗する兄の振動を味わう。
兄を大切にしたいという気持ちと、相反して激しく嬲りたいという気持ちが鬩ぎ合った。
「ん゛、ぐ、……! ん、ん゛ッ」
苦しさのあまり顔を背けようとした彼を逃さないように、頬を掴んでいた手に力を込める。柔い肉が歪み、それさえも興奮を招いた。
不意に、熱い何かが手に触れる。それが兄の涙だと知り、咄嗟に体を離した。
彼は顔を真っ赤にし、肩で呼吸を繰り返しながら涙を流している。
「はっ、はぁっ、む、むくちくん、こわいよ」
嗚咽を漏らしながら泣く彼に、申し訳なさと情欲が擽られた。
10
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
ある日、人気俳優の弟になりました。2
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
完結・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に味見されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!
灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。
何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。
仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。
思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。
みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。
※完結しました!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる