幼虫の育て方

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ナセリの話

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「担当幼虫に嫌われてる?」

 監視室。椅子へ腰を下ろし、フィンに相談した。彼はひとつ結びにした淡い金髪を揺らしながらこちらへ振り返る。「コーヒーはいれたほうがいいかな?」と問われ、首を横に振った。
 フィンは僕より数年先輩の研究者である。確か、ミツバチを担当していたはずだ。彼はどの幼虫達とも関係が良く、いつも楽しそうに仕事をしている。そんな姿を見て、常々羨ましく思っていた。
 彼が向かいに腰を下ろし、手に持っていたマグカップに口を付ける。

「それは、どうしてそう思うの?」
「……セルジュが……あ、セルジュは今の担当幼虫の名前、です」

 吃る僕に苛立つことなく、フィンは柔らかい目元を細めながら聞いてくれていた。
 手遊びしていた指先を止め、唇を舐める。

「セルジュが、一向に僕に挿入しようと、しないん、です……」
「なんだ、その相談!?」

 モニターの前で目薬を差していたカイデンが、心底びっくりした声音で叫んだ。フィンが困ったように微笑み「カイデンは口出ししないで」と穏やかに制止した。

「それで、嫌われてるかもって?」
「はい……僕って、魅力ないのかも、しれないです……」

 「今までの幼虫達は、きちんと挿入してくれたんです……でも、彼は……」。そう言って黙り込むと、フィンが唸る。

「確かに、僕たちは彼らの性欲処理もしなきゃいけないからねぇ。それができないとなると、確かに不安になるよね」

 うーん、と腕を組み、首を傾げるフィン。彼がセルジュを担当していたら、どうなっていただろうか。ちゃんと挿入し、中で射精を────そこまで考え、フィンに申し訳なくなってしまい、首を振った。

「でも、触れてくるんだよね?」

 そう言われ、頷く。セルジュは僕の声が枯れるまで触れてくる。許してと懇願しても、離さないほどだ。

「じゃあ、大丈夫じゃないかな? 嫌いだったら最初から接触をしてこないだろうし」

 「もしかしたら……」。フィンがひとりごち、黙り込む。続きを待っていると、彼が首を傾げた。

「君のことが好きすぎて、意地悪しているのかもね」
「え!?」

 僕のことが好き? そんなこと、考えたこともなかった。固まっている僕に、フィンが微笑む。

「意外と彼らは人間みたいに感情豊かだよ。好きじゃない相手には触れないし、悦ばせようとは思わない。僕らだってそうでしょ?」

 確かに、彼らは個性があり、感情豊かだ。だからこそ、セルジュは僕のことを嫌っていたのかと思った。しかし、それはいわゆる「好きな子ほど虐めたくなる」という感情なのかもしれない。

「……でも、本当にそうかな……僕は単純に嫌われているだけのような気がします……」
「大丈夫、大丈夫。自信を持って。ね?」

 フィンがコーヒーを啜る。口角をあげる彼に促され、僕は首を縦に振った。
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