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第一章

寄り添い部屋の拡大

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本日二話更新します。



 殿下が来てから、更に半年程経っていた。季節は、すっかり秋である。
 私はクロエ様やアントワーヌ様達に相談して、寄り添い部屋の人数と場所を増やした――修道院にではなく、王国内にある教会に。
 何しろ、悩みや愚痴を責めたり自分の意見を押しつけず、寄り添うことがこの世界では初の試みだ。それ故、教育期間がかかる可能性も考えて、相談自体は半年前にしていた。

「元々、修道院は修行の場で、信徒と接するのは教会ですよね? だからこそ、教会は街中に複数ありますので……教会でも寄り添いを始めれば、修道院ここに来るより通いやすい方もいると思うんです」
「それは、一理あるわね」
「とは言え、修道院が良いという方もいると思うので……希望者がいれば交代しながら、続けていきたいと思います。あと初めての試みなので、希望者の方々には寄り添い部屋に来る方を想定して対応の練習をしたり、私の寄り添いを聞いて頂いたり。実際の対応をする時は慣れるまで、私や寄り添いを学んだ者が付き添うつもりです」

 提案した内容は、コールセンターの新人研修でやる『ロールプレイング』と『モニタリング』と『OJT』だ。『ロールプレイング』は、業務上の様々な受け答えを疑似体験すること。『モニタリング』は、どんな応対をしているかを聞いて貰うこと。そして『OJT』は、先輩が後輩の横について対応に詰まったりしたらフォローすることである。

(基本、聞き役だけど……前世の職場では、新人がテンパってNGワードを口走ったこともあるから。最初のうちは、気をつけないと)

 愚痴や悩みを言いに来て、悪気が無くてもきついことなどを言われたら大事故になってしまう。
 心の中で呟いて、私が頷いていると――不意に、ビアンカ様が手を上げて口を開いた。

「希望者って、私でも良い?」
「え、ええ、勿論」
「良かったぁ。なかなか次の再婚相手が見つからないから、手に職つけようと思ったの」

 そう言って笑うビアンカ様は、今日も可愛く色っぽい。結婚相手が見つからないのは、単に再婚について実家に任せていて、自分は修道院から出ないからだと思う。学園に行くという選択肢も取れるのに、だ。

(本心として、結婚したいのかどうかは解らないけど……寄り添いをすることで、出会いはあるかも)

 最初は女性が多かったが、少しずつ男性も来ている。顔を見ての対応ではないが、声でのやり取りで付き合い出す場合もある。
 そんな風に思い、他希望者と共に寄り添いの研修を受けて貰ったが――結果、本当に寄り添いデビューをしてすぐ再婚が決まり、私は驚くことになる。
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