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第一章

理解と和解

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 そう、気持ちは理解出来る。
 漫画や小説を読んでいて、好きになりその幸福を応援したいキャラクターが出来る。ヒーローヒロインなら安心だが、キャラクターによっては報われない場合もあるので、二次創作に走る(自作したり、読み漁ったりする)場合もある。
 ……話が、逸れてしまった。
 とにかく、気持ちは本当に理解出来るのだが――ここで、間違えてはいけないことがある。

「自分の望む結末を、推しキャラに押しつけてはいけないわ。ここは、あなたの言うゲームの世界かもしれない。けれど、私達は生きていて……何より、イザベルには望みがあるの」
「望み……?」
「ええ、イザベルはここにいたいの。自分を顧みない父親のいるところでも、今まで全く関わっていない王宮や貴族社会でもない。彼女の頑張りを認めてくれる、この修道院にいたいの」

 そこで一旦、言葉を切ると俯いたまま、膝の上に置いた自分の手を握って言葉を続けた。

「そんなイザベルに、殿下の婚約者になれって言うのは……自分の勝手な解釈の押しつけだし、絶対に受け入れられない地雷だわ」
「……っ!?」

 下を向いているので顔は見えなかったが、隣に腰かけているエマがハッと息を呑んだのが解った。
 それから、私達の間に沈黙が落ちて――それを破ったのは、聞こえてきた嗚咽だった。

「っく……そ、そんな……ふぇ……」

 ギョッとして私が顔を上げると、エマはボロボロと大粒の涙を流していた。そして私と目が合うと、エマは勢いよく頭を下げて、再びガバッと音のしそうな勢いで泣き顔を上げた。ほとんどヘッドバンキングである。

「ごめんなさいっ! 知らなかったとは言え、わたし、イザベル様に何てことを……ごっ、ごめんなさい、イザベル様、ごめんなさい……うぇえ……っ」
「…………」
「でも……ユリウス様が、傷つくのも嫌ぁ……イザベル様には無理、っく、言いませんから……どうかわたしも、修道院に入れて下さいぃ……」

 美幼女は、いくらギャン泣きしようが可愛い。いや、こうなると「馬鹿な子ほど可愛い」なのかもしれない。

(……カナさん、私、大丈夫よ?)
(イザベル……)
(ちょっと驚いたけど……意地悪じゃなく、私のことを思ってくれたみたいだから)

 それは現世の私イザベルも同意見らしく、前世の私加奈に言ってくる。
 本当に、現世の私イザベルは天使だ――そう思いながら、私はハンカチを取り出してそっとエマへと差し出した。
 ……驚きに一瞬、涙が止まったけれど。
 今度は感激からか、エマは再び滂沱の涙を流したので、落ち着いて話が出来るようになるまでしばらくかかった。
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