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リバース!2
この世界のチカラ1
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昨日の夜、俺達は小悪党どもに会わなかった。
それがたまたまじゃなかったと知ったのは、今朝の新聞でだった。
……引ったくり犯逮捕。
小さい記事だが、そこには事の顛末が書かれていて。女性のバックを引ったくり、バイクで逃走した犯人がずぶ濡れで気絶していたそうだ。
(昨日の奴が魔法を使ったのか、他にも使える奴がいるのか)
テルスだと複数の属性持ちはいたが、相性の問題なのか正反対の属性を併せ持つって話は聞いたことがない。だから、全属性持ちの俺は本当に特殊なんだ。
(ただし、昨日の男が使ったのは魔法じゃない)
新聞を戻して、いただきますと手を合わせ。
朝飯を食べながら、俺は昨夜、ポモナから聞いた話を思い出していた。
「地球に転生させたのは、アンリさんだけです」
念話で話そうとしたけど前回同様「行きますから!」と言い、俺が聞き返したのを返事と理由付けてポモナは俺の部屋にやって来た。
時間帯(テルスとか、ポモナのいる場所での時間は知らないけど)のせいか、生まれ変わる時に見た白いローブ姿だった。
「そして、前に話した『事故』でテルスから地球に飛ばされた訳でもありません」
そんな彼女は、長い金髪を正座した俺のベッドに垂らしながら話を続ける。
以前、ポモナはテルスと地球は隣り合っている為、地球では事故、テルスでは魔法の暴走なんかをきっかけに互いの世界に飛ばされることがあると聞いた。
だけど俺が会った男はそのどちらでもないと、両方の世界を管理する女神は言う。
「……って、言うことは」
「はい、彼は地球人で使っているのも魔法じゃありません」
理屈は同じなんですけどね、とポモナは言葉を続けた。
「超能力って、小説や漫画で読んだことありません? テルスみたいに、誰もが持っている訳ではないですが……彼は、その力を持っていて。魔法みたいに、超能力で炎を生み出しているんです」
「それこそ、漫画みたいだな」
その説明に、思わず呟いてしまったが――考えてみたら、異世界から転生した俺も十分、漫画みたいなんだ。
「だから、無詠唱って訳か」
「ええ……だから今度は魔法を使って、こんな火傷や怪我なんてしないで下さいねっ」
成程なって思っていたら、ポモナの口調が強くなった。声同様に、キッときつく睨みつけてくる青い瞳に俺は思わず背筋を伸ばした。
「……えっと、それは」
「今回みたいに、直接受けなくても! 魔力の炎や風、水で身を守ることは出来ますよね!? 自分の身を傷つけて、戦おうとするのはやめて下さい……っ」
魔法でないのなら尚更、無傷は難しい。
そう言おうとしたが、青い瞳が見る見る潤んでいくのに俺は慌てて椅子から立ち上がった。
「ぜ、善処する!」
「政治家ですか!? あんまり無茶するなら、帰らないで一緒にいますよ!」
「それ、何て脅しだ!?」
万が一を考えて、ポモナが来てから風で部屋に結界を張ってはいたんで、俺達の会話が一階に届くことはない。
ない、んだが――それは別に、こんな言い合いを想定していた訳じゃなく。
結局、ポモナと怪我しないよう気をつけると約束をし、俺はリスかハムスターみたいに頬を膨らませたポモナに火傷を治して貰った。
二つの世界を管理しているポモナなら、俺が聞けばあの超能力者についてもっと詳しく教えてくれるだろう。
とは言え、今回も俺はそこまで聞かなかった。俺とポモナは、主人と使い魔って関係ではあるけど、やっぱりあんまりズルはいけないと思うんだよな。
だから俺は、味噌汁を飲みながら考えた。
(どうしていきなり、超能力者が現れて……俺達みたいに、小悪党退治を始めたんだろう?)
俺みたいに、超能力の訓練なのか。それとも他に、何か目的があるんだろうか?
(とりあえず、無関係ってことはないよな)
逆に無関係だったら、超能力で攻撃なんてされないだろうし、俺が魔法を使った時にもう少しは驚いた筈だ。
つまりは俺のことを知っていて、喧嘩を売る――までは言わないが、ちょっかいをかけてきたんだろう。
「ごちそうさま」
そこで考えるのを止めて、俺は空になった食器を手に立ち上がった。
これはこれで、ズルなのかもしれないが――俺一人で考えてても解らないんで、あとは椿に話して一緒に考えよう。
それがたまたまじゃなかったと知ったのは、今朝の新聞でだった。
……引ったくり犯逮捕。
小さい記事だが、そこには事の顛末が書かれていて。女性のバックを引ったくり、バイクで逃走した犯人がずぶ濡れで気絶していたそうだ。
(昨日の奴が魔法を使ったのか、他にも使える奴がいるのか)
テルスだと複数の属性持ちはいたが、相性の問題なのか正反対の属性を併せ持つって話は聞いたことがない。だから、全属性持ちの俺は本当に特殊なんだ。
(ただし、昨日の男が使ったのは魔法じゃない)
新聞を戻して、いただきますと手を合わせ。
朝飯を食べながら、俺は昨夜、ポモナから聞いた話を思い出していた。
「地球に転生させたのは、アンリさんだけです」
念話で話そうとしたけど前回同様「行きますから!」と言い、俺が聞き返したのを返事と理由付けてポモナは俺の部屋にやって来た。
時間帯(テルスとか、ポモナのいる場所での時間は知らないけど)のせいか、生まれ変わる時に見た白いローブ姿だった。
「そして、前に話した『事故』でテルスから地球に飛ばされた訳でもありません」
そんな彼女は、長い金髪を正座した俺のベッドに垂らしながら話を続ける。
以前、ポモナはテルスと地球は隣り合っている為、地球では事故、テルスでは魔法の暴走なんかをきっかけに互いの世界に飛ばされることがあると聞いた。
だけど俺が会った男はそのどちらでもないと、両方の世界を管理する女神は言う。
「……って、言うことは」
「はい、彼は地球人で使っているのも魔法じゃありません」
理屈は同じなんですけどね、とポモナは言葉を続けた。
「超能力って、小説や漫画で読んだことありません? テルスみたいに、誰もが持っている訳ではないですが……彼は、その力を持っていて。魔法みたいに、超能力で炎を生み出しているんです」
「それこそ、漫画みたいだな」
その説明に、思わず呟いてしまったが――考えてみたら、異世界から転生した俺も十分、漫画みたいなんだ。
「だから、無詠唱って訳か」
「ええ……だから今度は魔法を使って、こんな火傷や怪我なんてしないで下さいねっ」
成程なって思っていたら、ポモナの口調が強くなった。声同様に、キッときつく睨みつけてくる青い瞳に俺は思わず背筋を伸ばした。
「……えっと、それは」
「今回みたいに、直接受けなくても! 魔力の炎や風、水で身を守ることは出来ますよね!? 自分の身を傷つけて、戦おうとするのはやめて下さい……っ」
魔法でないのなら尚更、無傷は難しい。
そう言おうとしたが、青い瞳が見る見る潤んでいくのに俺は慌てて椅子から立ち上がった。
「ぜ、善処する!」
「政治家ですか!? あんまり無茶するなら、帰らないで一緒にいますよ!」
「それ、何て脅しだ!?」
万が一を考えて、ポモナが来てから風で部屋に結界を張ってはいたんで、俺達の会話が一階に届くことはない。
ない、んだが――それは別に、こんな言い合いを想定していた訳じゃなく。
結局、ポモナと怪我しないよう気をつけると約束をし、俺はリスかハムスターみたいに頬を膨らませたポモナに火傷を治して貰った。
二つの世界を管理しているポモナなら、俺が聞けばあの超能力者についてもっと詳しく教えてくれるだろう。
とは言え、今回も俺はそこまで聞かなかった。俺とポモナは、主人と使い魔って関係ではあるけど、やっぱりあんまりズルはいけないと思うんだよな。
だから俺は、味噌汁を飲みながら考えた。
(どうしていきなり、超能力者が現れて……俺達みたいに、小悪党退治を始めたんだろう?)
俺みたいに、超能力の訓練なのか。それとも他に、何か目的があるんだろうか?
(とりあえず、無関係ってことはないよな)
逆に無関係だったら、超能力で攻撃なんてされないだろうし、俺が魔法を使った時にもう少しは驚いた筈だ。
つまりは俺のことを知っていて、喧嘩を売る――までは言わないが、ちょっかいをかけてきたんだろう。
「ごちそうさま」
そこで考えるのを止めて、俺は空になった食器を手に立ち上がった。
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